アイスと雨音
劇場公開日:2018年3月3日
解説
「私たちのハァハァ」「アズミ・ハルコは行方不明」などを手がけてきた松居大悟監督が、現実と虚構、映画と演劇の狭間でもがきながら生きる若者たちの姿を、74分ワンカットで描いた意欲作。ある小さな町で舞台が上演されることになり、オーディションで選ばれた6人の少年少女が初舞台に向けて稽古に励んでいた。しかし突然、舞台の中止が告げられてしまう。キャストは、「笑う招き猫」「ソロモンの偽証」などに出演した森田想、映画「るろうに剣心」で知られる田中偉登ら、すでに映画や舞台で活躍している者から演技未経験者まで、演技経験不問のオーディションで選出された。音楽をアコースティックギターのUKとMCのアフロから成る2人組ヒップホップバンド「MOROHA」が担当。
2017年製作/74分/日本
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
スタッフ・キャスト
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2021年9月17日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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稽古に励んでいた舞台公演が中止になってしまった…ガラガラの客席…とコロナ禍の状況とかぶってしまい、切ない気持ちになった。
しかし、ドアを蹴破って劇場に侵入するシーンは「鍵弱すぎ。」という点も含めどうかと思うし、サービスカットのように若い女優の着替えシーンがあるのもどうかと思った。なんというか、全体的に年寄りの「若者ってこういう感じでしょ。」という妄想がちりばめられている感じが少し気持ち悪い。若さへの憧れか…皆でタップダンスみたいなダンスをするシーンは憧れ満載。わかるけど。わかるだけに…きつい。
それでも青木柚の存在感は素晴らしかった。撮影中に17歳の誕生日を迎えたらしいが、まさに濃い緑の「青き柚」みたいで美しく、本名らしいこの名前をつけた(かもしれない)親御さんに感謝しかない…とか気持ち悪い年寄り発言をする。
なんにしても早く気軽に舞台観賞したいな。
2021年7月22日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
圧倒されるような熱量と、それに応えられなかったこちら側の感情の綻び。それすら悪くなかったと思える意欲作。
森田想のポテンシャルがとにかく高い。『タイトル、拒絶』でも思っていたけど、ここまで上手いとは。しかもワンカットで1ヶ月を描くわけで、スイッチの切り替え方に乱れぬ息遣い…全てが彼女のスイッチで回る。間違いなく本物の女優だし、もっと彼女を重宝しないと行けない気さえする。
その他にも『きれいのくに』などで話題に上がっている青木柚や『ジオラマボーイ・パノラマガール』の主要キャストの一人であった若杉実森(現・若杉凩)など、キャストも重層的。ただ、作中演劇同様に無名な人ばかりだったと思うと、改めてその選球眼と演技力に驚かされる。
舞台の中止に対しての悔しさは1番松居大悟監督が知っている。畑がそっちということもあって、温度やカラクリを生かした、ワンカットならではのトランスフォームも魅力的。そして、そこに漂う温度があまりにも詰まっていて辛かった。どれだけの準備をして、稽古をして、公演に立つのか…それを知っているからこその若者讃歌。しかもそれをMOROHAが代弁する。ちゃんと聴いたことはなかったが、優しい語りから転調しサビに入ると強い歌へと入る。スッと染み入る言葉に殴られて涙を流しながら、行き場のない若者たちのもがきを見ていた。ワンカットならではのラスト、大いに痺れてほしい。
ワンカット故に演劇パートを挟みながら1ヶ月を過ごすので、少々粗く物語として掴みにくいところはあるものの、魂がぶつかり合う刹那は見逃せない。泥臭くて真っ直ぐな、シモキタ舞台の若者讃歌。
2020年6月9日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
ワンカットチャレンジはもちろん、MOROHAの歌がその場に同居する演出など、終始とても演劇的。最後のカーテンコールまでこだわり抜いて、新しい演劇映画というジャンルを確立させた気がする。
監督が思い描くステージは分からないが、次もさらなるトライを繰り返してくれそうで楽しみだ。
並行してつくっていく舞台作品にも注目したいところ。
2020年6月7日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
WE ARE ONE: A Global Film Festivalと言う企画でYouTubeで鑑賞。
映画の中で演劇を作っていく過程や挫折の物語を1カットで撮影するという変則的な作品。
すべてに繋がりを持たせることで、映画と演劇二つの物語、現実と虚構が有機的に絡み合い、かつ、ある種ドキュメンタリー的な生々しさや緊張感までが映像から伝わってくる演出は、1カットという技法にちゃんと意味を持たせている。
普通の映画より手間が掛かるだろうし、演じる役者さんたちも大変だったと思うけど、それだけの価値がこの映画にはあったと思う。