「星めぐりの町」エグゼクティブプロデューサーが語る、震災と向き合う覚悟
2018年1月18日 18:00
[映画.com ニュース] 「家族はつらいよ」シリーズや「不能犯」(2月1日公開)の小林稔侍と、壇蜜が親子役を演じた「星めぐりの町」のトークイベントが、1月17日に都内で開催。本作のエグゼクティブプロデューサーを務めた岩城レイ子と、震災遺児の支援も行っているNPO団体「あしなが育英会」の東北事務所所長・西田正弘氏が登壇した。
「蝉しぐれ」で知られる黒土三男監督が、愛知県豊田市を舞台にしたヒューマンドラマ。妻を早くに亡くし、娘の志保(壇蜜)と2人で暮らす豆腐職人・島田勇作(小林)のもとに、東日本大震災で家族を失った少年・政美(荒井陽太)が引っ越してくる。深く傷ついていた政美だったが、勇作とふれあううち、次第に心を開いていく。
「この映画は、震災で家族を失ってしまった子ども、そして、その子がどうやって生きていくかということを考えていただくことが大きなポイントであり、テーマです」と語る岩城は、「最近は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)や実際にその震災を体験された方への配慮として、“恐ろしい津波”のような映像が使われなくなってきました。しかし、本作はあえて使用しています。“被害を忘れないこと”“体験した子どもがどうやってそのあと生きる道を取り戻していったのか”ということが大きなテーマとしてあったからです」と本作に込めた思いを熱く語った。
西田氏は「『見ない』ということではなく、今後どのようにあの映像や記憶と向き合っていくか。その距離感というか、選択肢を考える、ということがとても重要だと思っています」と同調。自身の経験を踏まえ、「大人たちは、自分の経験値でその子に接してアドバイスをする、というのではなく、その子どもが今見ている風景を一緒に見てあげてほしい」と呼びかけ、「映画を見ていて思ったのは、主人公の小林稔侍さんは『この子はどんな風景を見ているのかな? どんな気持ちなの?』と、自分の考えを押し付けず一緒に見てあげている気がしました」と考察した。
岩城氏は最後に、「今回、特にこだわったのは音です。地元の音に徹底的にこだわっていて、豊田市を流れる川のせせらぎの音、風が吹く音、ウグイスの鳴く声などすべて実際に豊田市で録音し、それをきちんと整えて映像にのせました。そういう自然の中でこつこつと同じものを作り続け、生活をしている主人公の姿を見た、震災で傷ついた少年がどうやって成長していくのか、という姿もぜひ見てほしいです」と締めくくった。