米ソニーの“クリーン・バージョン”計画がハリウッドで波紋
2017年6月19日 15:30
[映画.com ニュース] 米ソニー・ピクチャーズが打ち出した、家庭用エンタテインメント向けに“クリーン・バージョン”を制作するという方針が、ハリウッドで波紋を呼んでいる。
同スタジオは、より多くの視聴者を想定し、地上波テレビ放映や飛行機の機内エンタテインメントでの視聴用に映画を再編集する計画を発表。iTunesなどデジタルプラットフォームでの購入時、暴力シーンや不適切な言葉が排除されたクリーン・バージョンが、オリジナル版に付属するという内容だ。対象は24作品。「アダルトボーイズ青春白書」や「小悪魔はなぜモテる?!」といったコメディ作品だけでなく、「スパイダーマン」シリーズや「ゴーストバスターズ(1984)」といった大ヒット作、アカデミー賞ノミネートの「キャプテン・フィリップス」「マネーボール」なども含まれる。
この動きを受け、ソニー傘下のコロンビア・ピクチャーズで「ソーセージ・パーティー」「スモーキング・ハイ」といった過激なコメディを生み出してきたセス・ローゲンは、「なんてこった、どうか俺たちの映画にはそんなことしないでくれ。たのむぜ」とTwitterで即座に反応。コメディ映画の名手ジャド・アパトウも「こんなのまったくふざけてる。クリーン・バージョンなんてくそくらえ」と怒りをあらわに。米ハリウッド・レポーターによれば、「俺たちステップ・ブラザーズ 義兄弟」「タラデガ・ナイト オーバルの狼」がクリーン・バージョンの対象となったアダム・マッケイ監督も、代理人を通し反対を表明しているという。
また、全米監督組合(DGA)は、“クリーン・バージョン”が契約上の合意に反する可能性の調査に乗り出したといい、「無許可の改変から映画を死守する」と対立姿勢を示している。ソニーがクリーン・バージョン計画に乗り出した背景には、米国では子どもの視聴に適したフィルタリングの需要があることが大きく影響しているようだ。昨年12月には、ディズニーやワーナー、20世紀フォックスから著作権侵害で訴えられていたフィルタリングサービス「VidAngel」が、連邦裁判所の命令によりサイトを閉鎖するケースがあった。
フィルムメーカーたちの反発を受け、ソニーは「テレビ放映用に監修されたバージョンを通常版に付属することについて、監修に携わったフィルムメーカーたちの許諾が得られているという認識だった」と声明を発表。そのうえで、「快く思わなかったり、再検討したいという場合は、対象作から除外する」と、フィルムメーカーたちの意志を尊重する姿勢を示した。