小松菜奈が若尾文子、菅田将暉が北大路欣也!?「溺れるナイフ」に宿る増村保造イズム
2016年12月25日 10:00
[映画.com ニュース] 「溺れるナイフ」の山戸結希監督と「淵に立つ」などで知られる深田晃司監督が12月24日、東京・シネマート新宿で開催中の特集上映「溝口健二&増村保造映画祭 変貌する女たち」のトークショーに出席。新鋭監督として注目される2人が、巨匠監督の魅力や、自身の作品に与えた影響について語り合った。
「溝口健二没後60年、増村保造没後30年 記念企画」である本映画祭は、12月23日~2017年1月26日に両監督の作品42本が上映される。山戸監督は「初めて見たのは『最高殊勲夫人』でした。去年『溺れるナイフ』を撮る前に、『濡れた二人』を見に来た。まさに山と海に挟まれて、海の男に惹かれていくという話だったので、すごく同時代的に感じました。『溺れるナイフ』の直前に『濡れた二人』を見て、『溺れるナイフ』を撮ってという、ビビットな体験でした」と振り返る。
さらに山戸監督は、深田監督から「『溺れるナイフ、“振られ用”の男の子良かったですね」という指摘を受けたことを告白し、「濡れた二人」にも同様に“(ヒロインに)振られ用”の男性キャラクターが登場すると説明。そのうえで、「『濡れた二人』は『溺れるナイフ』の直前に見たので、まさか若尾文子さんを重ねられているとは小松菜奈ちゃんも思っていないと思います。菅田将暉くんは北大路欣也さんで、重岡大毅くんは振られ用の男子」と両作品の主要キャストの役どころが似ていることを明かし、「見るとビビットに影響しちゃうので、そういうことだったのかもしれないです」と感慨深げに述懐した。
一方の深田監督も、溝口監督作「赤線地帯」を例に熱いトークを展開。「やはり映画の新しさは時代に左右されないと感じた。海外の映画評論家たちと話しているが、最近の日本映画で描かれる家族観は非常にスウィートなものが多い」と述べ、「『赤線地帯』でドキッとするのは、ただで家事をやらされた女性が『これだったら娼婦の方が良い』って言う。これは、溝口とか小津(安二郎)とか、この時代の人たちに色濃いのですが、封建的な家族制度の闇みたいなものを目の当たりしているからこそ、そこに対して無邪気になれない。そういった意味で現代的な映画」と熱弁をふるった。
これに対し、山戸監督が「結婚したら家事労働が無償になってしまうって、今流行りの『逃げ恥』と一緒ですよね。昨日も見ていて一緒だなと思いました」と20代ならではの指摘をすると、深田監督は「そうですね、一緒ですね!」とほほ笑み、同調した。
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