赤線地帯
劇場公開日 1956年3月18日
解説
売春防止法施行直前の吉原を舞台に女たちの生き様を描き、巨匠・溝口健二の遺作となった傑作群像劇。芝木好子の短編小説「洲崎の女」を物語の一部に取り入れ、「新・平家物語」の成沢昌茂が脚本を手がけた。国会で売春防止法案が審議されている頃、吉原にある特殊飲食店「夢の里」には、それぞれの事情から身体を売る女たちの姿があった。普通の主婦に憧れるより江は客と結婚するが、夫婦生活が破綻し店に戻ってくる。ひとり息子のために働くゆめ子は、息子に自分の仕事を否定され発狂してしまう。客を騙して金を貯めているやすみは、自分に貢ぐため横領した客に殺されそうになる。
1956年製作/85分/日本
配給:大映
スタッフ・キャスト
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今日マチ子あえてアップにしないという演出だった。京マチ子のアップが見たかったのでとても残念だ。この映画で中での役どころは二十歳そこそこなのだが、この時、彼女は30半ばだったのでアップを連発するのにはちょっと無理があったのだろう。
ストーリーは、いわゆる赤線地帯で働く色んな女たちの人間模様を描いたものだった。 幸せになるもの不幸になるもの、どうにもならないもの・・・群像劇として描かれそれなりにインパクトのあるものになっていると思う。特にお母さんが息子に捨てられるシーンと、悪女が金づるを切るシーンは脚本がしっかり描けていて迫力があった。
京マチ子の他にも若尾文子が出てるので見どころはしっかり有ます。
2020年6月2日
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売春禁止法制定目前の世相を背景に、“赤線地帯”吉原で働く娼婦たちの群像を、格調高き映像美で描き出した文芸作にして、巨匠・溝口健二監督の遺作となった名編。
主役を設けず、5人の個性的な娼婦たちそれぞれの姿を描く手法が、とても秀逸でした。視点が切り替わる瞬間が、自然な流れの中で行われて、テンポが非常に良かったです。
音楽のセンスも凄まじい…。不安を煽って来るような電子音楽…。まるで「ウルトラQ」のような得体の知れなさがハンパじゃなかったです。赤線地帯の異世界感も曲のイメージに加味されているのかもなぁ、と思いました。
様々な事情を抱えて、体を売る女たち―。生きるために、夢見るために…。しかし、その仕事が失われようとしている…。彼女たちは、如何にして生活すれば良いのか? 金が無いと生きていけない、だが、その稼ぎの場所が無くなったら?
一度は流れた法案成立も、一時のしのぎに過ぎない。いずれは―。滅びの足音は刻一刻と彼女たちに忍び寄って来ていました。しかし、もはや体を売ることしか手段の女たちは、言い知れぬ不安を感じながら、今日も街頭に立って客を呼び込む…。なんとも言えない切なさがありました…。
失われゆく景色へのノスタルジー…。
2020年4月7日
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鑑賞方法:VOD
56年大映。溝口健二監督。
ミゾグチ映画には縁がなかったのだが気楽に見てみようとまず遺作のこれを。
売春禁止法ができる前の吉原、赤線地帯で働く女たち。シビアーな現実をみせていくが悲壮感よりも逞しさが勝る。各人のキャラクターが立ち、話のリズムテンポも素晴らしい。奇妙な音楽が流れているが段々といい感じに聴こえてくる。
若尾文子は売れっ子で抜け目のない女を演じていて魅力的。京マチ子のミッキーという女も印象深い。監督が女性を描くのに長けていると言われる理由がわかった気がした。
2020年2月18日
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鑑賞方法:DVD/BD
溝口健二監督の現代劇を初鑑賞。舞台は売春防止法が施行される直前の吉原。そこで働く娼婦達の生活を中心にリアリティ溢れるタッチで描かれた傑作群像劇。溝口監督の遺作となった作品。
いやー凄い作品だった。溝口作品らしく途轍もなく完成度が高い。現実をあぶり出す圧倒的なリアリティ。巧みなテンポで進む巧妙なストーリー展開。映像や音楽の芸術的なセンス。魅力のある多彩なキャラクター達。それを演じる多彩な女優陣の見事な演技力。隙の無い完璧な完成度の高さだった。
当時の売春業者の追い詰められた現状が群像劇で描かれていて、あらゆるタイプのキャラクター達が登場し、他のキャラクターの物語へと切り替わるタイミングやテンポが見事で素晴らしかった。凄くリアリティのある人間ドラマで追い詰められた吉原娼婦達の悲哀が描かれていた。
溝口作品らしく映像や音楽の芸術的なセンスも素晴らしく、ゆめ子が発狂するシーンや、女の子が怯えながらも声を掛けようとするラストカットは芸術性も高く衝撃的だった。
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