行定勲監督11年ぶりの「セカチュー」ロケ地凱旋!名カメラマン・篠田昇さんに思い馳せる
2016年2月16日 12:00
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[映画.com ニュース] 本広克行監督がディレクターを務める香川県の「さぬき映画祭2016」に初参加した行定勲監督が2月14日、同県で撮影を行った監督作「世界の中心で、愛をさけぶ」(2004)、「春の雪」(05)のロケ地ツアーを敢行した。参加したファン約40人はもちろん、撮影時に交流を深めたゆかりの人々と再会を果たし、旧交を温めた。
行定監督はこの日、バスの中でツアーコンダクターまで務めるなどサービス精神を旺盛に発揮し、ファンを喜ばせた。企画が実現した経緯については、「本広さんが舞台『転校生』の稽古中、僕は隣で『タンゴ・冬の終わりに』の稽古をしていたんですが、(行定監督の故郷)熊本のお水を差し入れで持参され、『ウフフフフ。10周年までこの企画をとっておいたんですよ~』っておっしゃられて、断れないよね(笑)」と説明する。
企画発案の本広監督は、「春の雪」のロケが行われた栗林公園で合流。同作のなかで“小さな滝”の存在が重要だったと話す行定監督は、「ここには滝がないんです。『セカチュー』がヒットした後だったし、優遇して作らせてもらえたのかもしれませんね」と笑う。撮影を台湾の巨匠リー・ピンビンが手がけたことでも知られているが、「彼は自然を愛する人で、壊したりするのが大嫌いなんです。だから滝を作るなんて本末転倒。作ったことは言わずにいたら、彼も黙っていたから上手く騙せたかなと思ったんだけど、知っていましたね。三島由紀夫の作品を読破した人だから、ここは滝がないとダメだと理解してくれていたんでしょう」と懐かしんだ。
リー・ピンビン起用については、「世界の中心で、愛をさけぶ」が遺作となった名カメラマン・篠田昇さんと同作撮影中、防波堤で昼食をとっている時の雑談がきっかけだったと打ち明ける。「篠田さんが『ユッキー、最近いい映画見たか?』って言うんです。『俺見たよ。花様年華って映画でさ。あれは相当いいトーンを出している。すげえカメラマンだよ』とね。篠田さんは人の映画をあまり褒めないんですよ。遺言のように話していたことを思い出して、『春の雪』はリー・ピンビンだ! と思って交渉をしたんです」。
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続いて向かったのは、興行収入85億円の大ヒットを飾り社会現象になった「世界の中心で、愛をさけぶ」のロケ地となった庵治町。行定勲監督にとっては、約11年ぶりの訪問とあって感慨深げに「ヒットしてから行ったら道路の標識に『愛の聖地、左へ』って書いてあったんだよなあ。まだあるかな?」「篠田さんは最後の言葉が『俺が35ミリでやれることは全てやった。これはいい映画になるよ』だった。長澤まさみも森山未來も父のような存在の篠田さんに懐いてね、若いやつらも一丸になって撮ったんだ」と打ち明けた。
浜・谷交差点、谷商店(秋山電気店として登場)、観光交流館、皇子神社のブランコ、王の下沖防波堤とめぐっていくなかで、谷商店をさらに奥へ突き進んで行った先にあった“空き地”が、最終的に庵治町でのロケを行定監督に決断させる要因となったという。この日、行定監督を先頭に、その場所を再訪。「庵治町へロケハンに行こうと言ったのも、篠田さん。この通りを『もっと先になんかあるぞ』と進んで行くんです。そうしたら映画館跡地があって、そこに錆びついた35ミリの映写機がポツンと残されていたんです。『俺はこれに引き寄せられてきたんだ』と篠田さんは言っていた。死を前にした人が口にする言葉は神がかっていますね」。
現在は映写機も撤去されているが、行定監督にとって思い入れの強い場所であることに変わりはない。「僕らにとって決定的な心の拠り所になったんですよね。『ここじゃないとダメだ』と思わせてくれたのは、映画館の跡地にあった朽ち果てた映写機なんです」。観光交流館の敷地内には、行定監督がつづった「ここから始まり、ここから続いてゆく」というメッセージが石碑になっている。この石碑を見て、誰よりも驚いたのが監督本人。「この字は俺のだけど、石碑になっているとは……」と苦笑いを浮かべ、写真を撮っていた。
また、今作で大ブレイクを果たした長澤については、「クランクインこそ出来たものの、まさみは『深呼吸の必要』って映画のロケで1カ月も沖縄に行くことになっていたんです」と述懐。そして、「『絶対に日焼けするな! 死を前にした女性が小麦色にはならない!』って、きつく言いましたね。マネージャーも『引きこもりの役ですから』なんて適当なこと言ってね(笑)。案の定、ちょっと日焼けして帰ってきたし、チャンプルーの食べ過ぎで3キロ太りやがった。空き時間には外を走らせていましたけど、簡単には痩せませんでしたね」と秘話を披露し、ファンの爆笑を誘った。
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皇子神社のブランコは、撮影用に設置したものではないそうで「もともとあったんですよ。撤去予定だったんでしょうけれど、映画が当たったから残ったんでしょうね。誰もこんなところにブランコがあるとは思いませんよね」。
帰りのバスでは、「僕らが散らかしていったものを、まるで宝物のように大切にしてくれている。あんなにも誇りに思ってくれているとは思っていなかった。町の人が、『映画を見て、庵治がこんなにいい町だとは思わなかった』とおっしゃっているのを聞いて、思わぬ発見だった」と胸中を吐露。さらに、「こういう機会をもらった本広さんにも感謝している。『セカチュー』と『春の雪』は、いいスタッフ、いいロケ場所、いい人たちに恵まれて、幸せでした」。
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