深田晃司監督「さようなら」を東京でワールドプレミアすることの重要性
2015年10月29日 08:30
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[映画.com ニュース] 放射能で汚染された日本を舞台に、人間とアンドロイドが生と死に向き合う日々を過ごしていく。2010年に「歓待」で東京国際映画祭の日本映画ある視点部門作品賞に輝き、「ほとりの朔子」でナント三大陸映画祭の金の気球賞と若い審査員賞を獲得した深田晃司監督が、平田オリザの記念碑的作品を映画化。実際のアンドロイド“ジェミノイドF”を起用し、俳優たちと演技させるという画期的なプロジェクトのもと、深田監督ならではの映像表現を駆使していく。監督にとってコンペティション部門は初の参加となる。
深田監督(以下、深田):私は、映画祭の役割は必ずしも商業的になりえない映画の多様性を守るためにあると思っています。映画祭というかたちで作品に価値を与え、そこで作家を育てて、多様な作品の上映機会を確保する。この役割はとても大きいと思います。自分が映画を作るうえで映画祭は重要なステップとして意識しています。
深田:率直に嬉しかったですね。作品の内容が、原発や移民・難民問題といった、日本の社会的なトピックがモチーフになっているので、東京でワールドプレミアができることは私には重要なことでした。東京国際映画祭という場を持てたことは嬉しく思っています。
深田:いや、きっかけはまったく別でした。2010年にフェスティバル/トーキョーという演劇祭で上演されていた、舞台「さようなら」を見たのが最初です。戯曲は第1部と第2部とあって、当時は第1部しかない頃でしたが、原発のことは何も出てきません。舞台を見たときに、映画化したいと思いました。アンドロイドと人間が共演するというトピックの面白さもありますが、わずか15分の舞台に、死の匂いみたいなものが濃密に凝縮されていました。人間が長い間、絵画、音楽、文学などで死を題材に表現してきた、その最先端がこの演劇にあると感じました。長編映画にするうえで、主人公の女性と一緒に、世界という舞台装置そのものが死に向かっているという状況を作りたいと思って、原発の同時テロを発想しました。シンプルにリアルな問題として原発はあると思います。前提として原発問題があったわけではありません。
深田:現実に地震、津波、原発事故が2011年の3月11日に起きたことは、この作品にも反映されています。私もひとりの日本人として、感じたことがあります。事故が起きた直後に、「がんばろう日本」や「絆」などという結束して復興していこうという雰囲気が、当時演出されましたが、すっぽり抜け落ちた視点があるのではないかと思いました。原発、津波、地震の被害にあったのは日本人だけじゃありません。たまたま日本にいた外国人や移民の人も等しく被害を受けているのに、「日本」という概念、「がんばろう日本」という言葉で覆い隠している。この意識は、本作のターニャが難民であるという設定に込められています。
深田:舞台の部分は全部入っているので、その意味では完全映画化です。原作は舞台装置も何もなく、シンプルで抽象的です。そういう意味では自由度の振れ幅が高く、原作を自分がどう解釈していくかに腐心しました。舞台でも主演したブライアリー・ロングが、外国人でありながら日本語でアンドロイドと話している理由を考えたときに、彼女を移民という設定から掘り起こしていくと、自然と時間が延びていったという感じですね。
深田:いわゆるディストピア、世界が滅んでいくといった世界観をどう構築していくか、限られた予算内でのせめぎ合いが難しかったですね。起きてしまったところから描くという、さじ加減を苦労しました。脚本はお客さんとの想像力の綱引きだと考えているので、バランスよく調整するのに注力しました。
深田:強いて言えば、ジェミノイドFさんのスケジュールの確保が大変でした(笑)。さらに故障すると修理費がとても高いのでその点で注意しました。現場が始まってからはNGもまったくなくスムーズに進みました。
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