「カプチーノはお熱いうちに」オズペテク監督、病気と向き合う主人公を描くドラマは「愛情を絡めて語ることが重要」
2015年9月18日 17:20
[映画.com ニュース] 日本でもスマッシュヒットを記録した「あしたのパスタはアルデンテ」のフェルザン・オズペテク監督の新作「カプチーノはお熱いうちに」が、9月19日から公開される。恋の情熱からさめ、妥協点を見つけて日々を送ってきた夫婦が、突如降りかかった困難から新たな愛の形を見出してくさま、病気になった主人公を見守る周囲の人間の変化を時にユーモアを交え軽やかなタッチで描く。来日したオズペテク監督が作品を語った。
外見も内面も美しく、大恋愛の末結ばれた夫との間には2人の子どもに恵まれ、ゲイのビジネスパートナーと始めたカフェ経営も順調という、誰もがうらやむような生活を送るエレナに、病魔が襲い掛かる。
本作製作のきっかけは、友人が乳がんを患ったことがきっかけだった。「彼女の家で主治医や、俳優が招かれたパーティが開かれたのです。そのとき彼女の病気は進行していて、体のコンディションはあまり良いとはいえない状況でした。彼女とは何でも言える仲でしたから、夫と一緒に寝ているのかたずねてみたのです。『そうよ、それに時々求めてくるのよ。男の人はなにも嫌がらないのね』と。このような言葉を劇中のセリフにも入れましたが、その会話の瞬間、だんなさんが彼女の方を偶然振り返り、その視線に強い愛情を感じたのです」
「ふたりは肉体的なものを超えた深い愛を確立していると、とても感動しました。肉体が変わっても心は変わらずそばにいる、具合の悪いときに寄り添う、そんなことをこの作品で描こうと思ったのです。男でも女でも長い間生活を共にしていると、慣れがでたり、欲望は変わっていくものです。しかし、何か大きな出来事が起き、身体的に変わってしまってもそれでも相手が欲しいと思えるのが本当の愛情ではないかと思いました」
主人公のエレナを演じたのは、リュック・ベッソン製作の「パリより愛をこめて」でヒロインを務めたポーランド出身の美人女優カシア・スムトゥアニク。「彼女は外見が美しいだけでなく、内面も完璧。いつも他人の事を思いやり、3年前からネパールに学校を建てるプロジェクトにも参加しています。今回、彼女のように完璧で美しい人にも病気のような不幸が起こるということを描きたかったので、オファーしました」
病気が進行して行く様を描くため、監督と俳優陣は患者や医者、身近な人にわたるまで、入念な取材をして役作りに臨んだそう。その甲斐あってか、本国公開後に予想以上の反響が寄せられた。「イタリアでは、がんや病気について正面きって話すのはタブー視されている部分もあります。ですから、もっと普通のこととして向き合い、突き放して話すのではなく、愛情を絡めて語ることが重要だと思います。作品が公開されてから、たくさんの感想を受け取りました。その中で、多くの手紙が治療中の女性で、この作品を見て自分の病気を恥じる必要がなくなったという感想をもらいました」
原題「Allacciate le cinture」は「シートベルトをおしめください」という意味だが、邦題「カプチーノはお熱いうちに」の印象を問うと「原題は人生では困難にぶつかることもあるので、気をつけるようにという意味合いです。日本のタイトルには、重要な事をやらなくてはいけない瞬間があるという意味が含まれていてよいと思うし、エレナと主治医との間に『熱いカプチーノを』というやり取りがありますから。私の映画は各国でタイトルが変わるのですが、それぞれの国の感じ方で配給会社が決めてくださるのが良いと思います」と笑顔で答えてくれた。
「カプチーノはお熱いうちに」は9月19日銀座シネスイッチほか全国順次公開。
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