第72回ベネチア国際映画祭が開幕!多彩な審査員の顔ぶれにも注目
2015年9月3日 13:30
[映画.com ニュース]第72回ベネチア国際映画祭が、9月2日(現地時間)に開幕した。
コンペティション参加作品は初長編2本、ドキュメンタリー1本を含む計21本。マルコ・ベロッキオ、アレクサンドル・ソクーロフ、アトム・エゴヤン、イエジー・スコリモフスキといったベテランから、トム・フーパー、キャリー・ジョージ・フクナガら若手、またチャーリー・カウフマンの共同監督作や、ミュージシャン、ローリー・アンダーソンが愛犬を主役にした私的なエッセイなども。全体的に作家色の強い監督が並んだ印象だが、今年は審査員のメンツも同様に濃い。
一昨年「ゼロ・グラビティ」がオープニングに披露されたアルフォンソ・キュアロンを審査委員長に、ホウ・シャオシェン、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン、リン・ラムジー、ダイアン・クルーガー、エリザベス・バンクスら計9人。多彩な顔ぶれが、どのような作品を支持するのかに注目が集まる。
映画祭ディレクターのアルベルト・バルベラは、「クリエイティブな見地からすれば、今日、映画の地図は、ハリウッドとヨーロッパという二極化が薄れ、さまざまな世界を反映した刺激的な作品が増えている。さらに新しいフォーム、新しいルールが生まれる過渡期にあり、ベネチア映画祭もこうした傾向をフォローしていく」と説明。それを反映するかのように、オープニング作品に選ばれたのは3D映画の「エベレスト3D」。またキャリー・ジョージ・フクナガの「Beasts of No Nation」は、いま話題のNetflixの製作による。
アイスランド出身、バルタザール・コルマウクル監督の「エベレスト3D」は、1996年にエベレストで多数の登山者が遭難した悲劇を映画化。壮大な風景のなかに自然の過酷さを見せつける、パワフルな作品となった。オープニングセレモニーには、監督とともに主演のジェイソン・クラーク、ジェイク・ギレンホール、ジョシュ・ブローリン、エミリー・ワトソンらが駆けつけた。
今年は残念ながらコンペティションに日本映画が入選しなかったものの、クラシック映画部門に、三船敏郎のドキュメンタリーの新作「ミフネ ザ・ラスト・サムライ」がある。監督は、「ヒロシマナガサキ」などで高い評価を受けている日系三世のスティーブン・オカザキ。さらに3年前に発足した、新人監督を援助するビエンナーレ・カレッジ・シネマ部門では、日本人として初めて選ばれた長谷井宏紀の「Blanka」が披露される。
アウト・オブ・コンペティションの期待作は、ジョニー・デップが実在の凶悪犯に扮した「ブラック・スキャンダル」、マーク・ラファロ、レイチェル・マクアダムス、マイケル・キートンら芸達者が集まり、ボストンで実際に起きた聖職者のスキャンダルを描いた「Spotlight」など。さらに今年はノア・バームバックとジェイク・パルトロゥがブライアン・デ・パルマを撮った「デ・パルマ」(デ・パルマは今年、監督ばんざい賞を授与される)、若手エイミー・バーグがジャニス・ジョプリンを題材にした「ジャニス」など、ドキュメンタリーも多い。
注目の金獅子賞は、9月12日の閉幕セレモニーで発表される。(佐藤久理子)