日本版「許されざる者」、ベネチアでのワールドプレミア目指しエントリー
2013年6月14日 06:00
[映画.com ニュース]クリント・イーストウッド監督・主演のアカデミー賞作品賞受賞作を、李相日監督、渡辺謙主演でリボーン(再創造)する「許されざる者」の興行関係者向けのプレゼンテーションが6月13日、都内のホールで行われた。
現在は7月中の完成を目指して編集作業を終え、音楽の制作とミックスを控えている段階。この日は、約8分半のフッテージ(ダイジェスト映像)が上映され、李監督は「映っている人と風景が強いので、何か伝わるものはあると思う」と手応えを感じている様子だ。
もともとオリジナルを見て「シンプルな勧善懲悪ではないが、人の心に訴えるものが強い。暗くて淡々としているところがすごい西部劇」と心酔した李監督が、かねて撮りたかった時代劇とシンクロさせた企画をワーナー・ブラザースに提案。同社のウィリアム・アイアトン社長は、「ハードルは高い」との思いを抱えつつ、イーストウッド作品のプロデューサー、ロバート・ロレンツに聞いたところ、その翌日にOKの返事がもたらされ製作が実現した。
イーストウッドの「硫黄島からの手紙」に主演している渡辺をはじめ、柄本明、佐藤浩市ら出演者にもオリジナルへの意識はあったはずだが、李監督は「(ロケ地の)北海道の厳しさで吹っ飛んでいたと思う。オリジナルに引きずられるというより、今の自分たちが撮ることしか道はないという部分は共有していた」と冗談めかしながら振り返る。完成後は当然、イーストウッドに見せることになるが、「イーストウッドに魅力を感じていない映画人がいるのかというくらい、神様みたいな人。その人に自分の作った映画を見てもらえるプレッシャーを感じられるのが幸せ」と楽しみにしている。
8月22日に開幕するベネチア国際映画祭でのワールドプレミアを目指し、エントリーしたことも発表。イーストウッドに見てもらう場として、ロサンゼルスでのプレミアの準備も進めている。また、2人は既に地方へのキャンペーンを開始しており、李監督は「重くて骨太な作品なので、届けるのが難しいことは分かっている。だが、人間の尊厳、誇り、生きざまを映画を通して伝えていきたい。『ゴッドファーザー』や『タクシードライバー』など、CGではなく人間の迫力を肌で感じる映画で育ってきた。微力ながらどこへでも行きます」と並々ならぬ意欲を見せた。
ワーナーとしても、初となるローカル・プロダクション全額出資の作品だけに、アイアトン社長は「(興収)数十億円はいきたい。入り口を広げて、劇場に足を運んでくれさえすれば間違いない。ダメだったら、私がクビになりますから」と不退転!? の決意。李監督も「社長をクビにするわけにはいかないので、頑張ります」と共闘を誓っていた。
「許されざる者」は1880年の北海道を舞台に、かつて“人斬り十兵衛”と恐れられながら刀を捨てた江戸幕府の剣士が、愛する者を守るため、己の尊厳を取り戻すために再び刀を取り、宿場町を牛耳る警察署長に戦いを挑んでいく姿を描く。9月13日から、全国で公開される。
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