熊切和嘉監督、不退転の覚悟で桜庭一樹「私の男」を映画化!
2013年2月25日 06:00
[映画.com ニュース] 鬼才・熊切和嘉監督が、第138回直木賞を受賞した桜庭一樹氏のベストセラー小説「私の男」を映画化することがわかった。多くの映画人が今作の映画化を熱望してきた意欲作で、熊切監督も原作に強くひき込まれたひとり。自らが映画化すべき原作だと直感的に思ったそうで、「原作が醸し出しているムード、それから強烈な部分に踏み込んでいるところ、それと自分も北海道の人間なので、北の地の描写には強くひき込まれました」と語り、撮影に挑んだ。
原作「私の男」は、単行本・文庫の累計発行部数が40万部を突破。10歳で孤児になった少女・花と、若くして花を引き取った遠縁の男・腐野淳悟が、内なる空虚を抱えながらも寄り添うようにして生きる姿を描き、愛に飢えた親子の描写が文壇で絶賛された。
「海炭市叙景」、最新作「夏の終り」など映画界から引っ張りだこの存在である熊切監督が、2011年に釜山国際映画祭のアジアン・プロジェクト・マーケットに今企画を提出し、第1回APM Busan Awardを受賞したことで、映画化に向け始動。物語の重要な背景となる流氷を待って、1月20日に北海道でクランクインした。紋別、ウトロでの冬パートの撮影は2月2日に撮了し、4月に春のシーン、東京での撮影を行う予定だ。
今作に強い意気込みを見せる熊切監督は、シーン別に16ミリ、35ミリ、デジタルと撮影機材を使い分けるこだわりよう。心がけていることは、「何よりも『逃げない』ことです。この作品が公開されて世間からたたかれ、監督生命が終わっても悔いはありません。それぐらいの覚悟をもって挑んでいます」と決意を口にしている。
流氷での撮影は苦労を強いられたようで、「なにぶん今まで流氷の上で芝居を撮影したなんて話は聞いたことがありませんから、僕らも想像で作戦は立てられても確証がないまま撮影に入るしかありませんでした」と述懐。それでも、「映画はワンカット、ワンカットの積み重ねです。とにかくスタッフ、キャスト一丸となって、ひとつひとつ撮り進め、何とか撮りきったという感じです」と充実感をにじませた。
原作の桜庭氏は、もともと熊切監督のファンだったそうで、脚本読後も「あっ、なるほど。こう料理するのかと感服」したという。ウトロでの撮影現場も訪問し、「真冬の海で流氷の上に少女と老人が立つという、ひときわ緊迫感のあるであろうシーンを見学させていただきました。見ているだけでも緊張し、冷や汗が」とコメントを寄せている。
注目のキャストは、後日発表。映画は13年に完成予定で、14年に全国で公開。
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