井浦新、若松孝二監督への語り尽くせぬ感謝を告白
2013年2月10日 18:00

[映画.com ニュース] 俳優・井浦新が、大いなる一歩を踏み込み2013年の俳優業を始動させた。昨年は芸名を長年親しんできたARATAから本名に戻し、主演作を含む4本の映画が劇場公開された。しかし、突然訪れた悲しい別れもあった。10月17日に死去した若松孝二監督との師弟関係は、多くの俳優が羨むほど強固な絆で結ばれていたのだから。井浦がいま、撮影現場で対峙(たいじ)した様子も含め、恩師への語り尽くせぬ感謝の思いを語った。
井浦ほど晩年の若松監督のちょう愛を受けた俳優はいない。遺作となった「千年の愉楽」まで5作続けて“指名”を受け、その期待に必死になって応えた。若松監督は生前、井浦起用について「楽なんだよ。慣れっこにならない。新はいつでも1本目と同じ感覚で現場に来るんだ」と穏やかな笑顔で説明していた。慈愛に満ちた笑顔の裏には、厳しさも内包していた。「監督の作品は、予定調和にない瞬間的に出てきたものを映し撮っていくための現場作りから始まるんです。テストを嫌いますし、少し余裕がないくらいでスタートさせた方が、監督の言葉でいうところの『心が現れる』のでしょう」。
弛緩した空気を許さず、緊張感と集中力を高めるために突然本番が始まる。「監督の演出は、役者に芝居をつけるのではなく空間演出。空間を監督が掌握していくんです。そのなかで、役者やスタッフはものすごい緊張感をもって挑める現場なんです」。さらに、「芝居に対して口を出さず、役者が出したものを受け止めてくれる。ある意味では残酷ですよ(笑)。下手な芝居をしても、出てきたものがそれであればそのまま受け止めてくれる。どれだけ高い意識をもって1発に込めるかというのを、体が覚えていく感じでした」と述懐する。
俳優デビューが、是枝裕和監督作「ワンダフルライフ」だったこともあり、井浦にとって映画は「生まれた場所であり、一番大切なベース」。それでも、「愛していること=ずっと映画しかやらないっていう方法論もあるとは思いますが、僕は決してそれだけじゃないと思うんです」と話す姿からは、まったく気負いが感じられない。そんな風に考えられるようになったのも、若松監督のひと言によるものだ。「『役者という仕事をやらせてもらっている以上、そういうこだわりを捨てろ』と言ってくれたんです。20代の若さゆえのこだわりから生まれたこだわりというのは、たかが知れていると感じることができたんです。監督が『おまえはもっと色んなことをやれ』と言ってくれたから、こだわりを持たないというこだわり方を僕は意識してできるようになっていったんだろうなあと思います」と言い尽くせぬ感謝を口にする。
昨年はNHK大河ドラマ「平清盛」で崇徳上皇を演じ、CM出演も相次いだ。今年は、「横道世之介」を皮切りに、「すーちゃん まいちゃん さわ子さん」「千年の愉楽」「彌勒 MIROKU」「ジ、エクストリーム、スキヤキ」「楽隊のうさぎ」「そして父になる」と7本の出演映画が公開される。あらゆるジャンルの仕事と真摯に向き合ったからこそ、新たな喜びを得られるようにもなった。「色んな場所でお仕事をさせてもらって、改めて映画の現場に帰ると違う次元の喜びを感じられるんです。デビューした頃に感じてきた映画の現場での喜びとは違う。そこが変わったんでしょう」
言葉の端々からにじみ出る若松監督への謝意は、どこまでも真っすぐだ。ぶれることを知らない思いは、天国の若松監督へとつながっている。苦楽をともにしてきた若松組について聞くと、「各自がそれぞれの持ち場で必死に頑張って、監督に教えてもらったことを色んな現場で表していく。それが一番大事なことだと思うんです」。これからの長い長い俳優人生を思えば、失ったものの大きさは計り知ることができない。だが、井浦は恩師の思いを胸に黙々と前進を続ける。
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