加瀬亮、原恵一監督の初実写作品で主人公・木下惠介監督役
2012年11月7日 06:00
[映画.com ニュース] 俳優の加瀬亮が、木下惠介生誕100年記念映画として製作される「はじまりのみち」(原恵一監督)に、主人公・木下惠介役として主演することが決まった。また、恵介の母・たま役には、木下が脚本を手がけた「二十四の瞳」で大石先生を演じた田中裕子。恵介の兄・敏三役のユースケ・サンタマリア、便利屋役の濱田岳とともに、戦争という時代のうねりに翻弄(ほんろう)され、映画監督を辞めようとしていた失意の木下がいかにして翻意していったのかを描く。
数多くのアニメ作品を手がけてきた原監督が、初めて実写映画のメガホンをとる今作は、戦時中に脳いっ血で倒れた母を疎開させるため、木下監督がリヤカーに乗せて山越えをしたという実話のエピソードが軸となる。また、血気盛んな映画青年として軍部ににらまれ、松竹を一時離れるきっかけとなった「陸軍」製作時のエピソードを、回想形式で盛り込んでいく。
主演の加瀬は、クリント・イーストウッド監督作「硫黄島からの手紙」をはじめとする海外作品や、「おとうと」「アウトレイジ」「海炭市叙景」といったあらゆるジャンルの邦画作品に出演し、常に独特の存在感を放ち、その演技力にも定評がある。そんな加瀬に対し、原監督は「穏やかな印象ながら、芯の強さも感じさせる人。木下監督が監督を辞めようとしていた時期の、絶望からの再生をきっと繊細に演じてくれると思います」と期待を寄せる。一方の加瀬も、「時代の激しい流れに巻き込まれながらも、青年時代の木下惠介監督がどうしても手放せなかったもの、その大切なものを、原監督と一緒に同じ道をゆっくりとたどりながら見つめていきたいと思っています」と意気込んでいる。
「二十四の瞳」「喜びも悲しみも幾歳月」「楢山節考(1958)」などの名作を精力的に発表した木下監督は当時、黒澤明監督とともに国民の人気を二分した。それはひとえに、手放しの人間賛歌ではなく、人のもつ美しさや醜さ、強さと弱さを全て肯定し、名もなき市井の人々の姿に優しい眼差(まなざ)しを注ぎ続けてきたことにある。原監督が、加瀬をはじめとする実力派俳優たちと、その実像と精神にどう迫るのかに大きな注目が集まる。
11月9日にクランクインし、静岡・浜松ほか長野、群馬などでオールロケを敢行。下旬にアップ予定で、2013年2月の完成を目指す。
「はじまりのみち」は、13年6月1日から全国で公開。