第13回東京フィルメックスのラインナップが発表 園子温の幻の名作も
2012年9月26日 17:26
[映画.com ニュース] 今年で第13回を迎える「東京フィルメックス」のラインナップ発表が9月26日、都内で行われ、映画評論家の秦早穂子、園子温監督、大森立嗣監督、本映画祭ディレクターの林加奈子氏、同プログラムディレクターの市山尚三氏が会見した。
林氏が「映画としての完成度の高さ、切り込む問題の深さ、個性の気高さ、傑作がそろった」と自信をのぞかせる注目のコンペティション部門には、イスラエルから「514号室」(シャロン・バルズィブ監督)と「エピローグ」(アミール・マノール監督)の2作品を迎えるほか、前作「ペルシャ猫を誰も知らない」により故郷イランを追われた名匠バフマン・ゴバディの妹ナヒード・ゴバディ監督のデビュー作「111人の少女」、「独身男」で同映画祭審査員特別賞を受賞した中国のハオ・ジェ監督の新作「ティエダンのラブソング」ら世界各国から集まった力作が参戦。日本からは、「ふゆの獣」で同映画祭最優秀賞を受賞した内田伸輝監督が震災後の日本を描いた野心作「おだやかな日常」と、「ある朝スウプは」の高橋泉監督の新作「あたしは世界なんかじゃないから」の2本がエントリーを果たした。
審査員を務める秦は、「フィルメックスはエッジも効いているしずっとブレていない。長いこと映画を見てきたけれど、どんな映画も白紙の状態から見ることを心がける」と抱負を語った。審査員には秦のほか、映画監督のSABU、イスラエルの批評家ダン・ファイナウ、イランの女優ファテメ・モタメダリア、ユニフランス・フィルムズ日本支局長バレリ=アンヌ・クリステンの5人がそろった。
個性豊かな気鋭監督たちの作品をフィーチャーする特別招待作品には、アキ・カウリスマキ監督やペドロ・コスタ監督らヨーロッパを代表する名匠たちが、ポルトガル発祥の地とされる古都を舞台に描いたオムニバス映画「ギマランイス歴史地区」や、「ブンミおじさんの森」でパルムドールを戴冠したタイのアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の「メコンホテル」、本年度ベネチアで金獅子賞を受賞したばかりのキム・ギドク監督作「ピエタ(原題)」など話題作がずらりとそろう。
同枠のジャパン・フォーカス部門には、園監督が1995年に撮影し未完成となっていた幻の名作「BAD FILM」の上映も決定。2日前に最新作を撮了したばかりだという園監督は、「今作っている映画に通じるものがこの映画で生まれたんだなと分かった。『BAD FILM』なしでは今の僕はない」と断言し、「日本では希有な、ストイックな映画祭で観客のレベルも高いので、反応を楽しみにしている」と期待を寄せた。大森監督も、鋭意編集中だという「ぼっちゃん」の上映が決まっており、「秋葉原の連続殺傷事件がきっかけ。ネット上の掲示板を見て色々と思うことがあった。フィルメックスのお客さんは目が肥えているので、自分にとっても良いものさしになる」と語った。
オープニングを飾るのは、韓国のホン・サンス監督が仏女優イザベル・ユペールを主演に描く「3人のアンヌ」が選ばれた。クロージング作品には、バフマン・ゴバディ監督が伊女優モニカ・ベルッチらを迎えてトルコで撮影した「サイの季節」。また、日本とイスラエルの外交関係樹立60周年を記念した「イスラエル映画傑作選」や巨匠・木下惠介監督が残した49作品のうち24作品を一挙上映する「木下恵介生誕100年祭」など多彩なプログラムが目白押しとなる。
第13回東京フィルメックスは、メイン会場となる有楽町朝日ホールを中心に有楽町地区で11月23日~12月2日まで開催される。