ペルシャ猫を誰も知らない

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ペルシャ猫を誰も知らない

解説

「酔っぱらった馬の時間」「亀も空を飛ぶ」などで国際的に高い評価を受けたイランのバフマン・ゴバディ監督が、テヘランのアンダーグラウンド・ミュージック界を題材に、17日間に渡る無許可ゲリラ撮影を敢行して撮りあげた青春群像劇。西洋的な文化が厳しく規制されているイランで、当局の目をかいくぐってバンド活動に熱中する若者たちの姿をリアルに描く。第62回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で特別賞を受賞した。

2009年製作/106分/イラン
原題:Kasi Az Gorbehayeh Irani Khabar Nadareh
配給:ムヴィオラ
劇場公開日:2010年8月7日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第62回 カンヌ国際映画祭(2009年)

受賞

ある視点部門
ある視点部門 審査員特別賞 バフマン・ゴバディ

出品

ある視点部門
出品作品 バフマン・ゴバディ
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映画レビュー

3.5☆☆☆★★ ※ 鑑賞直後のメモから 以前に、『亀も空を飛ぶ』で衝撃...

2020年1月2日
iPhoneアプリから投稿

☆☆☆★★

※ 鑑賞直後のメモから

以前に、『亀も空を飛ぶ』で衝撃を喰らったバフマン・ゴバディ監督作品。

イランを飛び出て海外で音楽を目指す若者が、ナデルとゆう男に様々なミュージシャンを紹介され…。

イランで活動する色々なジャンルのミュージシャンが画面に登場して来る。
ナデルのオートバイに跨り、彼等を訪問して行く。
一見するとロードムービーの様な作りにも感じるのだが。何となくロードムービーとも言い難い雰囲気がある。
その為に、映画が何を訴えかけているのか…をなかなか理解出来ずにいた。

すると突然、画面にはナデルが探していたイランのラッパーが現れる。
彼は言う。「俺はここを離れない!」…と。
その後、このラッパーの歌声と共に。PVの様な映像が画面から流れて来る。
すると、その映像の背景で。ラッパーと同時に映るのは、イランに於ける貧困であり。朽ち果てた残骸の映像だ!
それまでにも、様々なジャンルのミュージシャンが登場しては、PVらしき映像が画面には映ってはいた。
但し、それらのミュージシャンには。主人公が歌うバンドのメンバー募集とゆう理由があった。
このラッパーが登場する辺りから、何となく映画の方向性がはっきりと。彼等ミュージシャンを通してのイランの現状を訴えかけている様にも受け取れる。

何をするにも〝許可〟〝許可〟〝許可〟が必要なイランの現実。
コンサートを開くには何故だか女3人が必要…とか。犬を外に連れて行くには許可が必要…等。
全ては当局の監視の元に、がんじがらめになっている現状に抗議している様に感じられた。
特にナデルが当局に対して、口八丁手八丁で泣き付く場面は。思わずゲラゲラと笑ってしまう事間違いなし。

そして映画はラストへ。
『亀も空を飛ぶ』のラストには、思わず脳天をバットで殴られたかの様なしょかを受けたが。今回はシンプル且つ単純でありながらも。やはり観ていて鬱に陥ってしまうが如くの締め方で、軽い衝撃を受けた。

全編で、当局からの許可を得ずのゲリラ撮影を敢行…との事でしたが。ワンカットだけだが、パトカーの内部からのショットがあった事実から考えると、多少は眉唾物かな?…と言ったところ。
勿論、全部ではないでしょうけど。

2010年8月27日 ユーロスペース/シアター1

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松井の天井直撃ホームラン

4.0ロックってある時代までは、体制と戦う武器だったんですよね。

2015年7月28日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

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さぽ太

3.5自由のない国

2012年9月23日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

 日本もどんどん息苦しくなってきていて、特にそれに対する反対の声もないのが空恐ろしいと感じている昨今、イランには厳格な宗教があり、イスラム教に反する表現も非常に規制されているようだ。パスポートの取得も大変そうで、北朝鮮ほど不自由ではなさそうなものの、映画も好きに見れなさそうで、日本との違いがとても興味深かった。

 そんなイランの音楽事情のカタログ的に紹介しつつ、規制だらけの中でとてもエネルギッシュに音楽に取り組む姿勢が素晴らしかった。表現とは、自由とはと非常に突きつけられるものがあった。

 主人公のアデルがよく喋ってよく動き、見ていて元気が出るキャラクターでとても魅力的だった。

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吉泉知彦

4.5イラニアン・アンダーグラウンド

2011年9月21日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

悲しい

知的

イランは検閲が厳しい国である。欧米はそれを”イスラム”だからと考えたがるが、それは偏見というもの。日本人も欧米の情報を元にそう思いがち。
イランは革命からすぐイラクとの戦争に突入し、しかも欧米と険悪な関係にあった。そんな中で体制転覆を恐れるあまり、今までずっと戒厳令、国家非常事態体制の状態なのである。革命国家にはこうした負の面があることは歴史が証明している。
フランスは革命後の混乱と外国からの圧力により恐怖政治に陥った。ロシアは革命から独ソ戦、冷戦、ソ連邦崩壊まで非常事態体制国家のままで終わった。イギリスの清教徒革命後におけるクロムウェル体制は、ほとんど戒厳令体制である。宗教や思想は案外関係ないのだ。ただ、抑圧の大義名分に使われているのだ。

そんな中で検閲の目をかいくぐって広げられるイランのアングラ音楽。その知られざる音楽に触れることのできる貴重な映画。自由にやれない分、楽しく真剣に音楽と向かい合っているのが伝わってくる。しかも、皆さん逞しい。ナデルと警官のやりとりなんて最高。ネガルやアシュカンと違ってイランに残る決意をしている人々も、自分なりに将来を見据えている。仲間、連帯感のようなものがある。音楽をやりたい飢餓感、必然性、それらが彼らをより魅力的に見せていると思う。

アメリカや日本は自由である。だが、若者を中心とした虚無感は何なのか。つまりは、ハードに監視されなくても、ソフトに都合よく監視されているののだ。都合の悪いことは”自粛”しろということだ。メディアなどを通じて、反抗心はやんわりと去勢される。冗談と笑いがあふれ、怒りの感情は巧みにスポイルされていく。宴の後の虚しさが社会を覆い、今が大事で将来が見えなくなる。つかの間の宴、つかの間の人間関係。連帯は無く孤独が支配する社会である。こういう国ではロックの役目は終わっているのかもしれない。日本は自由だというが、自殺者3万人で自分探しが流行る国ってどうなのよ、と自問したくなった。

ちなみに、ネガルが可愛い。アシュカンがちょっと羨ましかった。

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辛子ニコフ