アミール・ナデリ監督、未来の映画作家に「カサベテスのマネをするな!」
2012年6月26日 21:30

[映画.com ニュース] イランの名匠アミール・ナデリ監督が6月26日、故ジョン・カサベテスの回顧上映「ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ」の大ヒットを記念し、都内の劇場でトークイベントを行った。
インディペンデント映画界の巨匠として、没後23年を迎えた今なお世界の映画作家から敬愛されるカサベテス監督の作品を回顧上映する企画。「こわれゆく女」のほか、「ラヴ・ストリームス」(ニュープリント版)、「アメリカの影」「フェイシズ」「オープニング・ナイト」「チャイニーズ・ブッキーを殺した男』」の6作品を上映中だ。
日本では、西島秀俊を主演に迎えた意欲作「CUT」で知られるナデリ監督。カサベテスを最も尊敬する監督と公言し、「前世紀で最も重要な映画作家の未公開作品を一挙に見られるなんて、東京のシネフィルの方々はとてもラッキー」と挨拶した。70年代にニューヨークへ渡り、「映画監督の電話番号を手に入れようと撮影現場をひたすら渡り歩いたけど、カサベテスの番号だけはなかなか手に入らなかった」と述懐。その後、「ラヴ・ストリームス」の製作でロケハンを手伝うことになり、「彼は1日に3パックも煙草を吸うのでいつもライターを探していて、私はいつでもそばにいて彼に火を差し出す役目をしていた。するとある日、『お前はいつもここで何をやっているんだ?』と言われたことがある」とカサベテスとの思い出を語った。
また、「彼はジーザスみたいな存在。ハンサムで面白くてエネルギーに満ちていた。誰もが1度は彼と仕事をしたいとあこがれるけど、1週間も経てばみんな彼のことを嫌いになる。いつも怒っていて誰にも心を開かないし、シーンごとに何をするか分からないから。だけど酔っ払うと世界で1番良い人だった」と巨匠の知られざる素顔を明かした。そして、「カサベテスは小津(安二郎)さんみたいなもので、マネをしようとする人は多いけど、彼になれる人は絶対にいない。彼が素晴らしかったのはオリジナリティがあったから。映画を志す人は“カサベテスファッション”を1度忘れて、自分の心からあふれ出すものに従って映画を作ってほしい。カサベテスのマネをするな!」と未来の映画作家たちを激励した。
「ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ」は、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムほかで開催中。
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