劇場公開日 2023年6月24日

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ラヴ・ストリームス : インタビュー

2012年5月25日更新
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“インディーズ映画の父”ジョン・カサベテス19年ぶりの日本回顧上映 ジーナ・ローランズが思い出を語る

自ら資金を出し、個性的な映画を作り続けたジョン・カサベテスは、「インディーズ映画の父」とも呼ばれ、強い尊敬を集めた映画監督。59歳という若さでこの世を去ってから20年以上たつ今も、彼の映画は人々の心を引き付けてやまない。そんな彼の代表作のいくつかが、今回、日本だけで再び劇場公開される。主演女優として、そして妻として、彼を生涯支え続けたジーナ・ローランズに、作品や、亡き夫についての思い出を聞いた。(取材・文/猿渡由紀)

——今回、日本でジョン・カサベテスのレトロスペクティブ上映が行われると聞いた時、どう思いましたか?

「とてもうれしかったわ。もちろん、若い人たちが(ジョンの)映画を見に行ってくれるかどうかなんて、想像もつかない。でも、もし見に行ってくれたのだとしたら、彼らがどう反応するか、とても興味があるわ。ジョンは、ジョンにしか作ることができない映画を作ったの」

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——ジョンはもともと俳優出身です。監督になってからも、時々、他の映画監督の作品に出ましたが、それは自分の映画を作る資金を得る目的だったと聞いていますが、本当ですか?

「ええ、本当よ。私たちは、いつも自分のお金で映画を作った。自分たちが望むとおりの映画にしたかったからよ。誰かにお金を出してもらったら、その人は必ず、ああしろ、こうしろと言ってくる。私たちは、自分たちの思うとおりに映画を作りたかったの。資金が底をついたことは、何度もあったわ。そうなると、ジョンは他の監督の映画に俳優として出たし、私もそうした。そんなことはしょっちゅうあったわ。それも楽しかったんだけれどね」

——今回のレトロスペクティブでも上映される「アメリカの影」が、彼の監督デビュー作です。そのどれくらい前から、彼は監督をしてみたいという夢を語っていたのでしょうか?

「監督に進出しようなんて夢は、持っていなかったと思う。ジョンが『アメリカの影』を監督したのは、私たちが結婚して10年ほどたった時のことよ。あの映画は、全部即興なの。私たちはまだ若くて、同じように若い俳優の友達がたくさんいた。まだあまり経験のない彼らがいろいろなことを知りたがったので、私たちの友人ボブ・フォッシーが、ジョンに、『君はいろいろなことをすでに経験してきているんだから、教えてあげなよ』と言って、場所まで提供してくれたのよ。その部屋でジョンと多くの俳優たちが即興をやっていくうちに、『アメリカの影』の形が生まれていったの。そのうちにジョンが『これを撮影してみよう』と言いだしたのよ。私は当時、ブロードウェイで舞台に立っていたので、あの映画には、ナイトクラブのシーンで観客の役としてちらっと出演しただけ。でも、あの映画は個人的に大好きよ」

——「こわれゆく女」では初のオスカーノミネーションを得ています。暗く、複雑なあの女性像を演じるのは、相当に難しかったのではないでしょうか。

「こわれゆく女」
「こわれゆく女」

「ジョンは、『こわれゆく女』を、もともと舞台劇用に書いたの。読んだ時、私は『ジョン、これはすばらしいわ。でもこんな役を毎晩演じるなんて無理。そんなことをやったら死んでしまうわ』と言ったわ。精神的にやられてしまうと思ったからよ。彼はそうだねと言って、数日かけて書き直した。でも、話は違っていたものの、キャラクタ−は同じだったの。私は『私の言っている意味、わかってもらえなかったみたいね。この役自体が、演じるのに大変すぎる役なのよ』と言った。私はまだ死にたくなかったし(笑)、『私よりも精神的に強靭な女性に役をオファーしたら』と提案すると、彼は、『じゃあ映画にするのはどうだ?』と言って、あの映画が生まれたの。そしてあれは私の一番お気に入りの映画になった。私は数々の素敵な思い出を作ってきたけれど、あれは特別」

——今のハリウッド女優は一様に、「男優には良い役がたくさんあるのに、女性は主役の男の恋人か妻といった、深みのない役ばかり」と不満を口にします。でもあなたは複雑で奥深いキャラクターを多数演じてこられましたね。

「役に関して、私はすごく幸運だったと思う。私が生まれた時代も、その理由のひとつでしょう。当時はそういう時代だったのよ。今の若い女優にとって、おもしろい役を探すのは、とても困難なことになってしまった。私が彼女らのためにそういう役を書いてあげられたらいいのにと思うわ」

こわれゆく女」復元ニュープリント版や未DVD化の遺作「ラヴ・ストリームス」など6作品を公開する「ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ」は、5月26日から渋谷シアター・イメージフォーラムほかで開催。

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