ファニー・アルダン来日 「日曜日が待ち遠しい!」トリュフォーとの思い出語る
2012年5月12日 12:45
[映画.com ニュース] 仏女優のファニー・アルダンが5月11日、東京日仏学院創立60周年イベント出席のため来日した。フランソワ・トリュフォー監督の生誕80年を記念し、アルダンが主演した「日曜日が待ち遠しい!」が上映され、作品とトリュフォーとの思い出を語った。
1984年に他界したトリュフォーの遺作となった同作は、南仏を舞台とした恋愛ミステリー。不動産店経営者(ジャン=ルイ・トランティニャン)とその秘書(アルダン)が、不可解な連続殺人事件の謎を追う。ユーモアを交えた軽快なタッチで描かれ、美しいアルダンの魅力がふんだんに詰まった作品だ。
アルダンは「人生において実に不思議で、絶対的に来る喜びを感じている瞬間があります。この作品はまさにそういう瞬間でした」と穏やかな口調で当時を振り返り、「トリュフォーが繰り返し言っていた言葉があります。『早く進まなければいけない、早く、早く、観客たちが考える時間を与えてはいけない』と」と、撮影中のトリュフォーの言葉を紹介する。
本作の魅力を「私にとってこの作品はシャンパンの入ったグラスのような気がします。泡がはじけていて、そのために自分でコントロールできないような酔いがやってきます」と美しい表現で形容する。そして「トリュフォーの全作品を見てみると、アントワーヌ・ドワネルシリーズは別ですが、いつも物語の中心に女性が置かれています。また、アラン・レネ、ジャン=リュック・ゴダール、エリック・ロメール、ジャック・リベット、アンドレ・テシネ、彼らのすべての作品の中心に女性を据えており、それは、当時のフランス映画の特徴、いわば記号と言ってもよいでしょう」と、ヌーベルバーグの作家たちの作品について分析。客席からは大きな拍手が上がった。
シネマテーク・フランセーズ館長セルジュ・トゥビアナ氏も登壇し、アルダンを「人間として愛すべき方で、私の知っている人の中で一番ファンタジーのある、気まぐれなことができる人です。彼女がすることは予測ができません」と称える。
1975年からトリュフォーと親交を結んだというトゥビアナ氏は、トリュフォーと映画評論家で翻訳家の山田宏一氏の交流を挙げ、「山田さんと文通をしていたおかげで、トリュフォーは映画の世界で何が起こっているか、日本の映画についての情報を絶えず得ていました。彼の作品の持つ繊細なところが、日本という地理的にとても遠いところでも理解されるということがとても重要でした」と日本とのつながりについて話した。
また、本作について「普通の探偵ものはたいていは男性が捜査を行います。しかしこの作品では彼女(アルダン)が捜査を行うのです。女性が捜査を行い、男性が身を隠すという点で『終電車』とも通じるものがあります。トリュフォーは女性の主人公をきわめて強く、威厳があり、活動的な人物に作りあげるやり方を持っていました」と、カトリーヌ・ドヌーブ主演作も例に挙げ説明した。
東京日仏学院創立60周年イベントは13日まで開催。
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