山田洋次監督、苦渋の決断 「東京家族」製作延期に
2011年4月14日 10:00
[映画.com ニュース] 配給大手の松竹は4月14日、山田洋次監督の最新作「東京家族」の製作を延期することを発表した。当初は4月1日にクランクイン予定だったが、3月11日に東日本大震災が発生したことで撮影上の物理的事情、山田監督の意向を受けて決定した。
同作は1年以上の歳月をかけて入念に準備を整え、クランクインを間近に控えてスタッフ、キャストの気力は充実しきっていたという。そんなタイミングで大震災が発生。山田監督は、「このままそ知らぬ顔で、すでに完成している脚本に従って撮影していいのだろうか。いや、もしかして3月11日以前と以後の東京の、あるいは日本の人々の心のありかたは違ってしまうのではないか。僕は何日も悩み、会社とも繰り返し相談した結果、それこそ苦渋の選択をしました」と説明する。
悩み抜いて出した結論は、製作延期だった。「撮影を中断して、今年の終わりまでこの国の様子を見よう。その時点で脚本を全面的に見直したうえで、戦後最大の災害を経た東京、つまり2012年の春の東京を舞台にした物語をこそ描くべきだ、ということです」。松竹は、12年早期のクランクインを目指し、調整に入るという。そして山田監督は「来年、僕たちは新たな気力を奮い立てて『東京家族』の製作に挑みます。どうか観客の皆さん、ご期待ください」とコメントを寄せた。
「東京家族」は、小津安二郎監督の名作「東京物語」を今日に置き換え、家族のきずなと喪失、夫婦と子ども、老いと死について問いかける。「やくざ戦争 日本の首領」(77)以来の共演となる菅原文太と市原悦子が主人公の夫婦を演じる。ほか、西村雅彦、夏川結衣、室井滋、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優という主演級が結集する。