北野武監督「アウトレイジ」、カンヌでスタンディングオベーション
2010年5月18日 11:55
映画祭も中盤を迎えたこの日は、朝から快晴の“カンヌ日和”。北野監督は、「暴力的な映画ばかり撮ると言われて、それをやめたら今度はなんでやめたのかと言われた。でもまた同じような映画に戻ったと思われるのが嫌だったから、今回は同じバイオレントでも進化したと言われるような映画にしたつもり」と胸を張った。
同作は、昔気質のヤクザと今どきのビジネス至上主義世代という時代の移り変わりを絡めながら、暴力団の組内部での権力闘争を、着実な演出と畳み掛けるようなテンポで描く。通常の北野作品に比べるとユーモアやギャグは極力抑えられているが、それでも「悲しい場面や痛い場面で悪魔のように笑いが忍び込む」と北野監督が表現する通り、時折笑い声が会場で起こっていた。
夜の上映の最後にはスタンディングオベーションが鳴り響き、上映後のパーティで北野監督は「観客をKOしたという感触があった。『HANA-BI』『座頭市』『菊次郎の夏』に並ぶベスト4の反応。案外すんなり暴力が観客に受け入れられて意外だった。こんなバイオレントな映画をよくぞコンペに呼んでくれたと感謝しています」と喜んだ。
これまでに上映された中で、コンペ部門でもっとも好評価を得ているのはマイク・リー監督の「Another Year」。だが、ほかのコンペの顔ぶれも傑出した作品は現れておらず、本命不在という状態が顕著に。そんななか、「アウトレイジ」にどのような判断がなされるか期待がかかる。(佐藤久理子)
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