岩井俊二、ハリウッド進出作「ニューヨーク、アイラブユー」で至福の体験
2010年2月26日 18:21
[映画.com ニュース] 世界中から集った個性的な11人の監督が、ニューヨークを舞台にさまざまな愛の物語を紡ぐ群像アンサンブル・ムービー「ニューヨーク、アイラブユー」がいよいよ2月27日より公開される。その中の一編で、オーランド・ブルームとクリスティーナ・リッチが出演する短編を手がけた、岩井俊二監督に話を聞いた。
「会ったことない人が、もうコミュニケーションを始めている。そういう現代の不思議を描ければと思いました。スターをキャスティングするつもりはなかったけど、オーランドが僕の作品を好きだと言ってくれて、『エリザベス・タウン』(05)を見たらすごく彼の芝居が良かったんです。彼は演技に対して非常に真面目で、猪突猛進型のすごく男らしい人でした」
本作は、ファティ・アキン、アレン・ヒューズ、イバン・アタルら多彩な監督のもとに、ヘイデン・クリステンセン、シャイア・ラブーフ、アンディ・ガルシア、ロビン・ライト・ペンらハリウッドの豪華キャストが集合。パリを舞台にした恋愛オムニバス「パリ、ジュテーム」のような、贅沢なインディーズ映画に仕上がっている。
「個人的な印象では、『パリ、ジュテーム』はいろいろなフィルムメーカーが最大限のパフォーマンスをするという意識が高くて、個々がオリジナリティやユニークさを追及していたけど、今回は肩の力を抜いて、無理のない自然体で作ろうという感じでした。アメリカの現場システムは、合理的でやりやすかったですね。普段は監督って1人だけど、中国のチアン・ウェン監督とインドのシェカール・カプール監督と3人で利き酒しにいったり、試写ではナタリー・ポートマンやブレット・ラトナーと映画の感想を言い合ったり、そういった横のつながりも楽しかったですね」
岩井監督は、映画の街ニューヨークでの撮影を振り返り、「ニューヨークの人って、本当にニューヨークが好きなんだなぁって思います。僕はジョン・レノンの熱烈なファンではないけど、彼が殺されたダコタハウスってすごく印象深いし、『ライ麦畑でつかまえて』をポケットに忍ばせた犯人の心の闇は、『リリイ・シュシュのすべて』(01)を書くときにすごく影響されました。それに、僕の好きな70年代のニューシネマはニューヨークが舞台のものが多いから、そういう場所にカメラを向けることが出来るのは至福の体験でした」