「ここに幸あり」のオタール・イオセリアーニ監督、映画論を語る
2007年9月25日 12:00
[映画.com ニュース] 「素敵な歌と舟はゆく」「月曜日に乾杯!」など知られるグルジア出身の名匠オタール・イオセリアーニ監督が来日。9月22日、新作のフランス映画「ここに幸あり」の記者会見に参加し、映画哲学を語った。
本作は、現代のフランスを舞台に、大臣を突然罷免され、仕事とお金を失って主人公バンサン(セブラン・ブランシェ)が、妻に愛想をつかされ、住む家もなくなって……やがて生まれ故郷に戻り、懐かしい友人たちと再会し、酒を飲み、歌を歌い、心やさしい女性たちに癒されていくという、ノンシャランとしたハートウォーミング・ストーリー。
「編集は自由でお金もかからないから好きだが、撮影は嫌いなんだ」と語るイオセリアーニ監督は、「映画は映像と音で成り立つ。私は映像だけで全てを分かってもらえるように編集しているから、一瞬たりとも“字幕を読もう”としないでほしい。字幕を読むということは、その間映像を見ないことになる。残念ながら、ドイツでは字幕が長くなるため吹替えで上映されたが(笑)、フランス語で撮ったものが違う言語で上映されるというのも奇妙なものだ。そこに映っているものを見て分からなかったら、それは失敗作なんだ」と自説の映画論を展開した。
さらに、主人公役に映画出演経験のない知人のブランシェを起用したことについても(監督本人も主人公の友人役で出演)、「俳優を職業としている人々は危険だ。彼らは役を演じるために個性を隠そうとし、メソッドを作り上げ、いつも同じ演技をするようになる。台所でさえも演じ続けるようになり、普通に話すことが出来なくなる。私はそういう俳優たちを何人も知っている。三船(敏郎)やジャン・ギャバンは例外で、(彼らは)三船やジャン・ギャバンという役を演じていた。もし、イザベル・アジャーニ、カトリーヌ・ドヌーブ、ダニエル・オートゥイユと仕事をしたら、彼らは私の映画を壊すだろう。だから私はごく“普通の人々”と仕事をする。(シルベスター・)スタローンに演技指導するよりずっと楽だからだ」と演技論をぶった。
「ここに幸あり」は晩秋、恵比寿ガーデンシネマほか全国順次ロードショー。