エリザベート 1878

劇場公開日:

エリザベート 1878

解説

「ファントム・スレッド」のビッキー・クリープスが19世紀オーストリアの皇妃エリザベートを演じ、2022年・第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で最優秀演技賞に輝いた伝記ドラマ。ヨーロッパ宮廷一の美貌と称されたエリザベートの40歳の1年間にスポットを当て、若さや美しさという基準のみで存在価値を測られてきた彼女の知られざる素顔を大胆な解釈で描き出す。

1877年のクリスマスイブに40歳の誕生日を迎えたエリザベートは、世間のイメージを維持するために奮闘を続けながらも、厳格で形式的な公務に窮屈さを感じていた。人生に対する情熱や知識への渇望、若き日のような刺激を求める彼女は、イングランドやバイエルンを旅して旧友や元恋人を訪ねる中で、誇張されたイメージを打ち破ってプライドを取り戻すべく、ある計画を思いつく。

オーストリアの気鋭マリー・クロイツァーが監督・脚本を手がけた。

2022年製作/114分/PG12/オーストリア・ルクセンブルク・ドイツ・フランス合作
原題または英題:Corsage
配給:トランスフォーマー、ミモザフィルムズ
劇場公開日:2023年8月25日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第75回 カンヌ国際映画祭(2022年)

受賞

ある視点部門
最優秀演技賞 ビッキー・クリープス

出品

ある視点部門
出品作品 マリー・クロイツァー
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映画レビュー

4.0フェミニズム映画の志が出演者らの不祥事に汚される不幸

2023年8月29日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

欧州の王族・皇族を題材にした映画として考えると、英国やフランスに比べて扱われる機会が少ないオーストリア=ハンガリー帝国時代の皇妃エリザベートを取り上げている点で、まず歴史的興味を大いにそそられる。もっとも、ウィーン発のミュージカル「エリザベート」が1990年代半ば以降宝塚歌劇団版と東宝版がコロナ禍前まで続いた人気の演目だそうで、ミュージカルのファンにとっては馴染みのあるキャラクターだろうか。

ともあれ、邦題「エリザベート 1878」が示すように、本作は16歳で皇妃となり1898年に60歳で死去したエリザベートの40歳の1年を“節目の年”と位置づける。伝記的な正確さでたどるのではなく、彼女の人生にまつわる後年のエピソードをこの期間の出来事として描写したり、歴史的にあり得ないことも意図的に組み込んだりして、エリザベートの人生を象徴的に凝縮した1年としてストーリーを創作している。

ちなみに、歴史的にあり得ないことの一例は、宮廷でハープの弾き語りで演奏されるローリング・ストーンズの1960年代の曲「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ」。遊んでいる子供を見て自分が年を重ねたことを悟り涙を流している、といった趣旨の歌詞がストーリーに合うのは当然ながら、ストーンズに同曲を提供されてデビューした英国人歌手マリアンヌ・フェイスフルがハプスブルク家の血を引いている点も時代違いの曲が採用された理由の1つになった、というのは考え過ぎか。

脚本も兼ねたマリー・クロイツァー監督の出身国であるオーストリア、エグゼクティブプロデューサーも務めた主演ヴィッキー・クリープスの出身国ルクセンブルクと現在の拠点ドイツ、およびフランスの4カ国合作。男性本位社会において“美と若さ”という価値観に締めつけられてきた(原題"Corsage"つまりコルセットは、男性から見て美しくあるための拘束の象徴)女性の葛藤と抵抗を、現代的なフェミニズムの視点でとらえ直すことを目指した意欲作だ。

高い志を共有するスタッフとキャストが集まったと思いたいところだが、フランツ・ヨーゼフ皇帝役のフロリアン・タイヒトマイスターが今年1月に児童ポルノ所持の容疑で起訴され、被告の病気により裁判は延期されたものの罪を認めているという。またタイヒトマイスターとは別のオーストリア人俳優も、撮影セットでのセクハラで複数の女性から告発されたと報じられている。男女平等、女性の尊厳といった観点で啓発効果が期待される映画なのに、作り手の願いを汚す出演者らの不祥事が悲しいが、こうした事実が明らかになることも映画界に改善を促す力になるのだと信じたい。

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高森 郁哉

3.0コルセットに束縛された王妃

2025年1月12日
Androidアプリから投稿

歴史に詳しい方なら本作が史実にあまり則してないことは一目瞭然であろう。エクササイズルームに吊り輪をしつらえさせるほどのダイエットマニアで、身長172cm&ウエスト50cm以下をキープし続けたという美へのあくなき執念、趣味は乗馬と旅行で公務は大嫌いだったという逸話も本当らしいのだが、この映画彼女がなぜ自由奔放なふるまいを好むようになったのかという人格形成部分にはまったく触れていない。

弱冠16歳で歳のはなれたオーストリア=ハンガリー帝国皇帝フランツ・ヨーゼフ1世のもとに嫁いだエリザーベトは、マリー・アントワネットやダイアナ妃と同様に当初は取り巻きにチヤホヤされていたらしい。しかし、花の色はうつりにけりないたづらにじゃないけれど、その美貌も加齢とともに衰えはじめ、皺やシミをかくすためにベール付きの帽子を手離さなかったとか。本作は、40歳という女性としての節目を迎えたその元美人王妃の苦悩が描かれている。

聞けばこの映画、主人公と同年齢の主演女優ヴィッキー・クリーブスによる持ち込み企画だったという。フランス語でコルセットを意味する“Corsage”(原題)をキリキリと締め上げるシーンが何回か出てくるのだが、クリーブスとしては“男性が女性を型にはめよう”とする現代の趨勢に対して異論をとなえたかったのではないだろうか。故に公務を怠りがちなエリザーベトに対する皇帝の冷たい仕打ちを前面に押し出した演出となっているのである。

幼少期のなれないお妃教育にしばしばヒステリーを起こしていたエリザーベトは、結婚当初から宮廷を仕切っていた大公妃ゾフィから陰湿ないじめを受けていたという。旅にはまったのもそれが原因らしい。その後息子ルドルフ皇太子の自殺にショックを受け、さらにフランツ1世の死後は終生喪服を脱がなかったエリザーベト。実際は、イタリア外遊の際に暴徒に刺されたことが原因で死亡しているのだが、この映画そういった晩年の事件は一切オミットまたは改竄、あくまでも夫の束縛から逃れるため自由を求めてエリザーベトが客船の船頭から身投げしたことにしている。

つまり、フェミニズム映画にとって都合の悪いエピソードはすべてカットした“つくり話”なのである。この映画の描くとおりエリザーベトが心底夫を憎んでいたのなら、その死をいたんで終生喪服で過ごすなんて殊勝なまねはしなかったと思うのだ。(動画撮影のインチキはまだ許せるとしても)1898年に発売開始されたヘロインの中毒症にエリザーベトがおかされていたなんていう記述もおそらく事実無根であろう。すべてを若い時に手に入れたがために、歳をとってからは悲惨な末路を迎えた美人あるある物語を、無理やり男性優位社会の犠牲になったフェミニストの悲劇に作り替えているのである。でもねこの手の演出はもうとっくに流行りじゃなくなってるんですけどね。

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かなり悪いオヤジ

2.040歳は平民女性の平均寿命ですから

2024年8月22日
iPhoneアプリから投稿

残念ながらちっとも主人公に共感できず、作品にものめり込めない。自分が好きだから自分を好きな人が好き、でもそれだけ。周りの人を振り回し、自分は自由が無いとのたまう。最後だってそんな書き方したら他の人の犠牲なんて考え無いのだろうか。何が言いたいのか分からない映画だった

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GAB I

2.0実話とは全く異なる映画

2024年8月15日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

エリーザベトが好きで歴史をよく知っています。
この映画ではシシィが頭のおかしい人のように描かれていますが、実話は姑からの酷いイジメにより鬱になります。夫は助けません。
そこが一切描かれておらず、歴史とはまた違う話しでした。

実話では守ってくれないマザコン夫フランツに嫌気がさし、姑にも反抗を続け寝室を別にします。
後継者作り以外で映画のような体の関係はないと思われます。
シシィは仕事として子どもを作るも、大切な子さえ姑に取り上げられます。
子どもが生まれ希望ができたシシィでしたが姑が育てる事になり絶望が進み、ウィーンにいられる精神状態では更になくなってしまいます。
離婚したくてもそれは許されず、自分のような人の心を救うために精神病院に力を注ぎます。
シシィはこの時代で精神科というものを大きくし、たくさんの人を救いました。
今ある精神医療もシシィの貢献があったからだと言われる程です。

夫フランツと姑ゾフィーとの食事が喉を通らなくなり、拒食症になります。
旅に出て自分を守りますが、教育という名の虐めのターゲットがシシィを慕って尊敬していた息子ルドルフに移ります。
義母ゾフィーにとってかわいい孫になるはずでした。
ルドルフは姑が親権を握っているような状態で育ち、大好きなシシィとの接触も制限されついに限界がき、自殺してしまいます。
シシィはこれがキッカケで喪服しか着なくなり、絶望がまた進みますが自死は選びません。
守るべき娘がまだいますから母としてちゃんと生き続けます。

フランツはシシィの容姿が大好きで家にいて自分を満たしてもらいたいと願い続けます。
しかしシシィ以上に母ゾフィーを愛しているフランツ。
いじめから助けない代わりに旅費を出してあげていましたがある日、帰ってきてほしいためにもう税金で旅をするな、国民に嫌われてるぞと嘘を言い脅します。
しかしシシィは怯む事なく株を学び大成功し、自分のお金で旅を続けます。
税金には一円も手をつけなくなりました。

帰っても心は守ってもらえない。
体だけ遊ばれるために生きているのではないと決して自分を下げることはしませんでした。
フランツは庶民の若すぎる女を気に入り不倫していました。
若すぎる相手で、庶民はやめてほしいとシシィは願いフランツの好きな女優にお金を払い愛人契約をします。
フランツに自ら紹介し、うまくいくよう恋愛相談に乗り2人をいつもくっつけました。
シシィはそれほどにフランツとの肉体関係を嫌がりました。
株の成功額はフランツも驚くほどの額で
遺産がものすごい大金だったそうです。

嫁いびりが一生続いたのに、義母ゾフィーの介護をしたのはたったひとり、シシィでした。
これからわかるものはエリーザベトはマリア様のような優しい女性だったと言う事です。
普通、息子まで殺された義母に優しくなんてできませんよね。。
死ぬ間際にゾフィーは謝罪をし、和解をしています。

シシィが自死をしなかったのはゾフィーから守りたい娘がいた事、守りたい国ハンガリーがあった事、女性として自分を守り続けたことが大きかったと思います。
夫はシシィが大好きなハンガリーを嫌っていましたが、後に自国はハンガリーに救われます。
頭がおかしいのも精神病なのもシシィではなく
フランツとゾフィーの親子共依存関係が起こした歴史の悲劇がエリーザベトだと思います。

今でも姑いじめは問題視していくテーマだと思います。
いじめをしている人や助けない人が観て変わっていけばシシィも報われると思いました。(そこを描いて欲しかったです。
好き勝手やったわがままプリンセスみたいな内容の薄い映画に驚きました。
まあ、ゾフィーが登場したらシシィの美しい話から、どろどろのいじめ劇になるでしょうし
フランツはただのモラハラマザコン夫で綺麗な映画にはなれない。
そこはシシィが好きな故描きたくなかったのかな。

ルートヴィヒ2世とはいとこで親友でもあり、ルートヴィヒの唯一愛している女性でした。
彼はシシィに近づくために妹と婚約しますが、シシィ以外と性行したくない事を理由に破棄します。
シシィを求め続けますが、自分の立場を弁えていたシシィは親友でいることを守り続けます。
ルートヴィヒに何かあったら嫌だったのもあると思われますし、彼が亡くなった時に暗殺だと主張しています。
映画のように彼を誘う事はなかったでしょうし、あったとしたら逆だったかと。
シシィには妹の婚約を破棄し一回絶縁されています。
必死に戻した縁。次怒らせたら終わり。
そんな状況だったから彼も親友でいる事を頑張ったのではないでしょうか。
それほどにシシィを愛していました。
2人が結ばれたら幸せだっただろうな。

御世話係の女性の結婚を反対しますが退職を希望されて後々許します。
更に旦那さんも城に雇ってあげます。
そこも描かれず事実とは違う内容でした。

なんでもシシィを自分勝手な頭の悪い遊び人風に描いてあることが不思議でした。
歴史をあまり調べずに映画にしたのか?
と思うシーンが多々あり。

シシィが美に取り憑かれたキッカケは
姑ゾフィーに見た目を批判されたことで醜形恐怖症になったからです。
とまあこんな感じの実話とは、かけ離れた内容の映画でした。

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josephine

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