インスペクション ここで生きる

劇場公開日:

インスペクション ここで生きる

解説

ゲイであることから母に捨てられ海兵隊に入隊した青年が自らのアイデンティティを貫こうとする姿を、本作が長編デビューとなるエレガンス・ブラットン監督が自身の半生をもとに描いたヒューマンドラマ。

イラク戦争が長期化していた2005年のアメリカ。ゲイの青年エリス・フレンチは母に見捨てられ、16歳から10年間にわたってホームレスとして生きてきた。自身の存在意義を求めて海兵隊に志願入隊したものの、教官から強烈なしごきを受け、さらにゲイであることが周囲に知れ渡ると激しい差別にさらされてしまう。何度も心が折れそうになりながらも、暴力と憎悪に毅然と立ち向かうフレンチ。孤立を恐れず、同時に決して他者を見限らない彼の姿勢は、周囲の人々の意識を徐々に変化させていく。

歌手としても活動する俳優ジェレミー・ポープが主演を務め、第80回ゴールデングローブ賞の最優秀主演男優賞(ドラマ部門)にノミネートされた。

2022年製作/95分/R15+/アメリカ
原題または英題:The Inspection
配給:ハピネットファントム・スタジオ
劇場公開日:2023年8月4日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第80回 ゴールデングローブ賞(2023年)

ノミネート

最優秀主演男優賞(ドラマ) ジェレミー・ポープ
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映画レビュー

3.5実話らしい現実的なラストに胸がつまる

2023年8月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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ニコ

4.5セーフティネットとしての軍隊

2023年8月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

アメリカにとって軍隊とはどういう場所なのかがよくわかる作品だ。一言でいえば、軍隊は社会のセーフティネットになっていて、マイノリティや貧困に苦しむ人が生活や人生の糧を求めてやってくる。本作は監督自身の実体験をもとにしている。主人公である黒人のゲイの青年は、母親に見捨てられ10年のホームレス生活の後、海兵隊に入隊。当時の米軍は同性愛者であることを公言してはいけないというルールがあったから、主人公は自分を隠して生きねばならない。「こんな自分でも軍隊で死ねば英雄になれる」という動機で入った彼は、そこで様々なマイノリティと出会う。実社会以上にひどい差別も経験しながらも、仲間と絆を育んでいく様子が描かれる。非常にアンビバレントな体験だろう。酷い差別をしてくる連中とも苦楽をともにし、何らかの弱さを抱えていることに気づくと、絆は生まれる。分断社会を乗り越えるための、非常に貴重な実例を示した作品だと思う。
性的マイノリティはしばしば、シスジェンダーよりも貧困に陥りやすい。軍隊は差別的であるにもかかわらず、そうした人々のセーフティネットとして機能していたという矛盾は、社会の理不尽から生じていることもよくわかる作品だった。

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杉本穂高

4.0ゲイを否定的に受け取られかねない要素を敢えて入れた誠実さ

2023年8月3日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

本作については当サイトの新作映画評論のコーナーに寄稿したので、ここでは補足的なことを書いておきたい。「インスペクション」で長編監督デビューを果たしたエレガンス・ブラットンは、自らがゲイであること、同性の配偶者がいることを公言している。自身の海兵隊訓練期間の体験や母親との関係に基づくヒューマンドラマであり、差別やいじめ、しごきに屈することなくアイデンティティーを貫き、周囲の考え方を変えていく様子が描かれる。感動的であり、啓発効果もあるだろう。

だが、ブラットン監督が自ら手がけた脚本は、決して自画自賛や美談の類ではない。驚かされたのは、大半の教官や同期生が同性愛者を嫌悪する中、例外的に優しく接してくれたロザレス教官とのエピソードだ。フレンチがロザレスに対して抱いた好意は、性的な妄想や淫夢に発展。彼が妻帯者だと知りながら、ついには思い切った行動に出ようとする。

こうした“赤裸々な告白”ともとれるエピソードは、「同性愛者は同じ性的指向の相手を恋愛対象にするもの」という一般的な認識から外れ、観る人によっては否定的な感想を抱くかもしれない。それでも本作は敢えて、主人公を100%善良で優等生のゲイとして描くのではなく、理性より欲望に負けそうになる弱い部分も持った生身の人間として描写している。そこにブラットン監督の誠実さと勇気を感じる。

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高森 郁哉

4.0かつて味わったことのない視点で描かれた海兵隊ドラマ

2023年7月31日
PCから投稿

A24の手掛ける作品群はいつも、これまで被写体となる機会のなかった人や物事に光を当てる。その光は、こうあるべき、こうでなくては、と我々をがんじがらめにする意識の鎖を取り除き、身軽にしてくれるかのようだ。その持ち味は本作でも変わらない。冒頭、主人公が地下鉄に乗り、街をゆく。たったそれだけの描写でも、彼の身にまとう赤い衣服が鮮烈に映え、都市のこれまで見せたことのなかった表情が浮かび上がる。そして彼がやがて海兵隊を志願する理由も、我々の固定観念を鮮やかに突き崩すものだった。なぜなら彼はセクシャリティを抑圧して他の兵士と均一になろうとするのではなく、むしろ厳しい訓練に耐え抜くことで胸を張って「自分らしく」生きようとしているのだから。その意志の強靭さ。思考の柔軟さ。仲間や上官との交流も味わい深い。アニマル・コレクティヴの音楽がまた素晴らしく、色とりどりの響きが主人公の生き様に祝福を与えるかのようだ。

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牛津厚信

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