落下の解剖学のレビュー・感想・評価
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観終わってもモヤモヤする
サスペンス好きなので、予告の雰囲気に惹かれて鑑賞してきました。悪くはなかったですが、期待したほどでもなかったかなという印象です。
ストーリーは、雪山の山荘で両親と穏やかに暮らしていた、視覚障害をもつ息子が、家の外で倒れている父を発見し、当初は転落による事故死と思われたものの不審な点も多く、やがて妻のサンドラに殺人の疑いがかけられ、法廷で新たな事実や証言が出される中、事件の真相とともに家族に隠された真実も明らかになっていくというもの。
集められていく証言、科学的な見解、新たな状況証拠など、少しずつ明らかになっていく事実が、仲がよいと思われた家族の裏側をあぶり出し、サンドラの立場をじりじりと追い詰めていく展開は見応えがあります。それはそのまま転落死の真相に迫っていくことでもあり、観客は法廷での判決の行方を固唾を飲んで見守ることになります。憎々しいほどの推論を展開する検事のいやらしさは強烈だし、録音音声から描かれる夫婦喧嘩のシーンも圧巻です。
しかし、証言も証拠も殺人を裏付ける決定的なものではなく、検察側がそこから導き出す主張もすべて推測に過ぎません。結果、検察側も弁護側も、主観と可能性をぶつけ合っているだけで、真相に迫っている雰囲気はあるものの、実は1ミリも近づいてないのではと思わされます。
では、いったいこの裁判は何を明らかにようとしているのでしょうか。はからずも弁護士がサンドラに向かって「事実はどうでもいい」というようなことを言うのですが、要は「第三者の目にどう映るのか」が重要だということです。つまり、それぞれが自分に都合のいい真実に導こうとして、周囲の印象操作をしているだけなのです。そんな大人たちの姿から学んだダニエルが、最後に渾身の名演技で証言をしたようにも見えました。果たして、ダニエルの証言は事実なのでしょうか。全てがもっともらしく、全てが嘘くさく思えてきます。
最終的に下された判決も、当然誰もが納得できるものではありません。ラストのオチは、「ザリガニの鳴くところ」のように秘密を墓場まで持っていくのか、「梟-フクロウ-」のように実はダニエルは見えてましたかと思ったのですが、どちらでもなかったですね。所詮、真実を知るのは当事者だけなので、亡くなった父の証言が聞きたいものだと強く感じました。真相はどうであれ、残されたサンドラとダニエルは、完全に崩壊してしまった家族を、これから時間をかけて再生していくことになるのでしょう。
主演はサンドラ・ヒュラーで、その胸の内が読めそうで読めない妻役を好演しています。脇を固めるのは、スワン・アルロー、ミロ・マシャド・グラネール、アントワーヌ・レナルツ、サミュエル・セイスら。
真理と判決、愛情
言葉からの情報量が多くて、一つ一つ真面目にとらえていると、何が本当か分からなくなりました。
裁判とは、白黒ハッキリさせるためのもので、判決が絶対的に正しいとは限らないのではないかと思いました。
この映画のケースは、真実が勝ったものと信じたいです。
人間が他者に対してもつ愛情の熱量は、一定に保たれているものではなく、常に変化しているものですよね。根本的な愛情も、そのときどきの愛情も、嘘ではないです。でも、大切なひとを妬んだり、怒りをぶつけたり、嫌悪する感情が起こるのも事実かと思います。憎んでいるから相手を責めるのか、愛しているからこそケンカになるのか、カップルや状況によって異なるのか…なんだか良く分からなくなりました。
言い争いは、自分も疲れるし、周りにも迷惑なので、なるべく防ぎたいものです。
パルムドールにアカデミー賞ノミネートということで選んでみたが期待値...
濁った眼で鑑賞してはいけない
この時期はアカデミー賞ノミネート作品があわただしく公開され面白いことが保証されているのでこちらもそれを追っかけることとなる。この作品はカンヌでパルムドールを獲っており、夫殺しの容疑で起訴される主役のザンドラ・ヒュラーはエマ・ストーンと主演女優賞を争う見事な演技だが作品の知名度含めて圧倒的に不利だろう。それにしても事件前日の夫婦げんかで見せる長回しの感情吐露シーンは、この作品の総て(ミステリー要素における観客の推理を含め)のカギを握っており鬼気迫るというか冷静から沸騰までの感情の変遷を決して過剰ではなくナチュラルに演じておりあっぱれである。夫が山荘の高い位置から転落して死亡しその時間に屋内にいたのは妻だけで事故か自殺か他殺か?というあまりにもオーソドックスなミステリーサスペンスでメインは法廷闘争なのだが、このかつてないスタイルがちょとそうとうにグッとくるというか伏線や駆け引き小細工のないまっとうなストーリー展開と演出はドキュメンタリータッチと言っても足りなくて目から鱗がボロボロと落ちる。真実は無くて法廷の結果が全てということなのだがポスト・トゥルースの現代も同じく。加えて犬の演技が凄くてアカデミーに動物部門があったればぶっちぎりでオスカーであろう。
結末はすっきりしない、しかし---
人里離れた山荘でサミュエルが転落死する。次第にベストセラー作家の妻サンドラに容疑が向けられて警察に逮捕され、裁判になる。視覚障害を持つ11歳の息子、ダニエルの証言が最大のポイント。
この作品は、どうして2023年カンヌでパルム・ドールを獲得することができ、24年のアカデミー賞で、作品賞をはじめ幾つかの部門賞でノミネートされているのだろう。私は、二つの点に着目している。
一つは、作家である妻のサンドラに、夫サミュエルが、少なくとも一度は、作品のアイデアを提供したこと。日本だったら、太宰治の例が有名だろう。多くの閨秀作家が、彼に材料を提供し、かつ愛人になった。こうした場合、ほぼ常に女性が弱い立場で、男性が優位に立つ。この映画では、それが逆転していた。時代の流れを顕著に描き出しているのだと思う。
もう一つは、ドイツ人の強い女性サンドラと、フランス人のやや弱い男性サミュエルが結びつき、最初はロンドンに住んでいたが、サミュエルの故郷、雪深い山の中に移って暮らす。かわいい男の子ダニエルを育てるが、日常語は(けんかも)英語。裁判になると、公用語は、当然フランス語だが、彼女の要求に従って、一番肝心なところでは、英語での証言が許される。これ以上の国際交流はないだろう。
それでは、この映画の弱点はどこか。実は、二つある。
一つは、二人でダニエルを育ててきたはずなのに、ダニエルは極めて自然なフランス語を話し、一方、サンドラもフランス語がわかり、かなり上手に話はするが、二人の間は、どこかよそよそしい。本当に親子かと思うくらい。サンドラの言い分は、私だって母国語はドイツ語、一歩譲って英語を話しているのに、どこがいけないのか。一方、ダニエルとサミュエルは本当の仲良しに見える。
次に、ダニエルには視覚障害があり、どうやら事故の結果らしい。サンドラはサミュエルの責任としているようだが、驚いたことに、自分の作品の題材にしたらしい。まるで、日本の私小説作家のように。しかし、その仔細は明らかではない。
結末はあいまい。中村吉右衛門演ずる、TVの鬼平犯科帳みたい。裁判が終わったあとも、どこかすっきりしない。しばらく観ていたら、なぜかわかった。裁判の判決が出ても、サミュエルが帰ってくるわけではないからに違いない。そうだ、あのサンドラも、もちろんダニエルも、夫であり父であるサミュエルのことを、本当は愛し、慕っていたのだ!何と言う素晴らしい映画か。
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本作が、アカデミー賞で脚本賞に輝いた。
一人でも多くの皆さんに劇場へ足を運んで欲しい。
途中で理屈っぽいと思うかもしれないが、是非最後まで。
素晴らしい映画だから。(2024.03.11)
静かに張りつめた緊張感
3セットマッチにたとえるなら
壊れてしまった夫婦、あるいは家族の物語
スヌープの演技力ならラップもできそう
夫の死をめぐる裁判で、徐々に明らかになる夫婦間の確執を見つめつつ事件の真実に迫るという設定はおもしろそうなんだけど、実際には夫婦の痴話を長々とうまくないセリフ回しで見せられる感じ。話のポイントじゃないこともあってミステリー的要素も薄くて、こっちは傍聴席で意識が飛びそうになった。
裁判もなんか論破合戦的というか「朝生」っぽい軽い感じで、 検事がやけにフランク。あちらでは公判中にジョーク言ったりすんのだろうか? まあ、母親があんまし子ども好きじゃないのはよくわかった。
しかし、飼い犬のボーダーコリーの演技がめっちゃすごい。アスピリンで目を開けたままぴくぴくなったり、人の心を見透かすような三白眼で見つめるところなど、ヘタな役者よりもうまい。今作の主役ザンドラ・ヒュラーがトニ・エルドマンで唐突にマッパなったときぐらいの驚きがあった。
関係ないけど、本作の紹介欄で「さようなら、トニー・エルドマン」って。校正ぐらいした方がいいよ…。
ガチ
真実は結局なんなのか
正直想像していた内容とは違った。
結局真実がなんなのか明らかになっていないような感覚になり、急に出てくる新たな証言に翻弄され、確信に近いことなのかよくわからない事柄を議論しまくっている印象だった。
痛ましいケンカシーンや白熱した裁判の議論が見せ場だったとしたら少し期待外れであった。
息子の揺れる表情が切ない
家族の絆と裂け目「落下の解剖学」に見る社会の断面と深淵
『落下の解剖学』はただのヒューマンサスペンスに留まらない、深遠なメッセージを秘めた作品です。人体の構造を探求する解剖学のように、この映画は、雪山の山荘で起きた謎の転落死を通じて、家族の秘密や社会の問題を解き明かします。監督ジュスティーヌ・トリエの手によって、第76回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞し、さらに第96回アカデミー賞で5部門にノミネートされるなど、世界中から高い評価を受けている事の意味を深く感じました。すごい
この映画は、視覚障がいを持つ少年とその家族を中心に展開し、夫婦間の複雑な関係、社会問題、そして人生の不条理について深く掘り下げます。高額な医療費、外国で暮らすことの難しさ、性的マイノリティ、ネット社会による情報の拡散や誹謗中傷など、現代社会が直面する様々な問題を、一つの家族の物語を通して浮かび上がらせます。
サンドラ・ヒュラーが演じる主人公サンドラの迫真の演技は必見。彼女の演技を通して、観客は家族の愛、秘密、そして嘘が複雑に絡み合いながらも、それぞれの真実が明らかになっていくのかを目の当たりに。深い作品でした。
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味わい深い映画‼️
フランス法廷劇
予告だけ観て鑑賞、意図せずして良い法廷映画を引いた。
作中の「重要なのは事実ではなく、君が周りからどう見られるかだ」というような台詞、まさに参審制や陪審制の曖昧さを表現しているのかな。
後半に出てくる口論シーン、
あ、なんか旦那さん可哀想かも、いややっぱり奥さんが可哀想かも、いやでも、やっぱり……客観的に見ているつもりの自分の判断がいかに曖昧で主観的なものかを突きつけられる感じ、本当に嫌になる、上手い。
他の弁論シーンも同様、家族のストーリーを一部見せられている我々には検察官がめちゃくちゃ嫌な奴に見えるんだけど、傍聴席から聞いてみればむしろ馬鹿げた弁論を繰り広げているのは被告人側なのかも、客観性ってなんなのか…。
元々フランス映画の独特なテンポに苦手意識があったのだけれど、この作品を観て私が苦手なのはフランス語のテンポなのかもと思い直しました。
アカデミー賞ノミネートがこれ…
宣伝ミス
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