働いていた頃、ある男子にこう言われた。「先生、日本に生まれたら勝ち組じゃね」と。「幸せじゃね、とか感謝せんといけんね」よりも、この表現の方が私は好きだ。ストレートで偽善ぽさがない。
先日、韓国に行くとき調べたが、世界で水道の蛇口をひねりそのまま水が飲める国は日本を含め12カ国だそうだ。「湯水の如く」と言う表現があるのは日本語くらいではないのかな?
日本だって4枚のプレートの上に国土が乗っかる地震、火山、津波の災害大国だ。台風や土石流も怖い。でも周りを海で囲まれそれが天然の城壁となっている。政治の貧困が社会問題となってはいるが、今日、明日にミサイルが飛んでくる状況にはない。「どこに生まれるか」「いつ生まれたか」は決定的に運命的だ。
YCAMでまた良い映画を見た。「中村哲」はもちろん知ってはいたけど、その生涯を端的に語ったもの、中村先生が自ら語りかけてくるような作品をみたのは初めてだ。映画をみての感想は、
・いつも思うけど、こういうテーマに出逢えて、それをやり抜く人がいる。これは自分がライフワークとして取組むテーマだと気付き、それをやり遂げる。
私にもきっとあったはずなんだ。自分なりにやったとは思うけど、全然未熟で甘っちょろい。
・「希望の灯」は見ようとしないと見えないし、骨骨と続けた先にだけ見えるものなのだ。
・平和とは観念的なものではなく、水と食料を平等に行き渡らせることだ。
・やはり、全ては「トレードオフ」。2019年12/4に自らが理不尽な銃弾に倒れた。10歳の次男を脳腫瘍で失っている。
・「平和」の根子にあるのが自然や環境だ。我々人間も本来はそのおこぼれを頂戴し、慎ましく、倹しく、生きていくのがこの世の作法なのだ。
・ミサイルやヘリコプーター、機銃掃射、その下でシャツ1枚で土を掘り起こし、かき上げ、用水路を作る。どちらが生きている生をより実感できるのか、比べても仕方ないけど。
・人は必ず死ぬ。中村先生が残した最大のものはアフガニスタンの人が自らの力で堰を修復し、新たに作れる技術力と、その意義を見いだせるようにした事だ。先生は殺されたけど、その意思は引き継がれた。その場面が最後に描かれていた。
・用水路の側にモスクを建てた。現地の人達とその完成を喜び合う、その笑顔に彼のやつて来たことが収斂している。