劇場版 荒野に希望の灯をともす

劇場公開日:2022年7月23日

解説・あらすじ

2019年、アフガニスタンで用水路建設に邁進するなか武装勢力に銃撃されて死去した医師・中村哲の足跡を追ったドキュメンタリー。アフガニスタンとパキスタンで35年にわたり、病や貧困に苦しむ人々に寄り添い続けた中村哲医師。現地の人びとにその誠実な人柄が信頼され、医療支援が順調に進んでいた2000年、アフガニスタンの地を大干ばつが襲う。農業は壊滅し、人びとは渇きと飢えで命を落とす中、中村医師は医療で人びとを救うことに限界を感じる。そこで彼は医療行為のかたわら、大河クナールから水を引き、用水路を建設するという事業をスタートさせる。これまでにテレビなどで放送された映像に、未公開映像、最新の現地映像も加えて劇場版として再編集し、中村哲の生き様を追った。

2022年製作/90分/G/日本
配給:日本電波ニュース社
劇場公開日:2022年7月23日

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映画レビュー

5.0 中村哲さんが大きな河になるまでの話

2025年12月11日
スマートフォンから投稿

アフガニスタンの無医地区で働く中村さんの目はどこか遠くを見つめる目をしていた。不条理で無情な運命の力を前にしてそれを潔く認めるような目だ。

貧しさと干ばつに苦しむアフガニスタンの人達の命を医療支援を通じて助ける行為は、乾いた大地に力なく咲く花に手を差し伸べる行為のように中村は感じていたのかもしれない。

「医療支援だけではここにいる人たちの苦しみの根本的に解決にはならない」という気づきから、中村は干ばつで緑を失った大地を復活させる事にこそこの土地で暮らす人の幸せをもたらす事に目を向け大規模な用水路の建設に自分の残りの人生を捧げた。

この大規模なプロジェクトは生まれ育った土地での生活を諦めて離れていった現地民の人たちの心を動かし、再びこの土地で生活できるようにと工事に参加するようになった。

工事が始まってから数年が経ち、やがてアフガニスタンの人たちは中村の力を借りずとも自分たちの力で用水路を引く工事を行う力を持った。

現地の人たちと共に働く中村には笑顔が増えて温かい眼差しで世界を見ているようだった。

これまで医療活動によって抱えていた中村の無力感に満ちた心が、用水路の建設を通して現地の人と喜びを共有することで再び豊かさを取り戻していったように感じた。

中村は大規模な用水路建設の際に、大自然の持つ河の流れに何度も打ちのめされてきたが、今は彼のこれまでの活動が、乾いた大地に絶えず恵みを与える川となり、アフガンに住む人だけでなく、世界中の人の心に豊かな力を与えている。

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はなてん

5.0 言葉が見つからない

2024年12月12日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

うまくいえませんが
中村哲さんの生き方、信念に
共感、尊敬の念に堪えません。

それでも晩年に凶弾に倒れてしまわれるんですね
もしかして情報の理解不足なのかもしれませんが
全てのひとに共感してほしいです

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かざ

5.0 色んな意味で涙が止まらない

2024年10月9日
iPhoneアプリから投稿

信念と行動力をもつ人間の偉大さ、中村さんと比べた自分の不甲斐なさ、拡大する世の中の不条理、終わらない暴力の連鎖、、

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Assane

4.0 「中村哲」の生き様を記憶する。

2024年9月15日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

 働いていた頃、ある男子にこう言われた。「先生、日本に生まれたら勝ち組じゃね」と。「幸せじゃね、とか感謝せんといけんね」よりも、この表現の方が私は好きだ。ストレートで偽善ぽさがない。
 先日、韓国に行くとき調べたが、世界で水道の蛇口をひねりそのまま水が飲める国は日本を含め12カ国だそうだ。「湯水の如く」と言う表現があるのは日本語くらいではないのかな?
 日本だって4枚のプレートの上に国土が乗っかる地震、火山、津波の災害大国だ。台風や土石流も怖い。でも周りを海で囲まれそれが天然の城壁となっている。政治の貧困が社会問題となってはいるが、今日、明日にミサイルが飛んでくる状況にはない。「どこに生まれるか」「いつ生まれたか」は決定的に運命的だ。

 YCAMでまた良い映画を見た。「中村哲」はもちろん知ってはいたけど、その生涯を端的に語ったもの、中村先生が自ら語りかけてくるような作品をみたのは初めてだ。映画をみての感想は、

・いつも思うけど、こういうテーマに出逢えて、それをやり抜く人がいる。これは自分がライフワークとして取組むテーマだと気付き、それをやり遂げる。
 私にもきっとあったはずなんだ。自分なりにやったとは思うけど、全然未熟で甘っちょろい。

・「希望の灯」は見ようとしないと見えないし、骨骨と続けた先にだけ見えるものなのだ。
・平和とは観念的なものではなく、水と食料を平等に行き渡らせることだ。
・やはり、全ては「トレードオフ」。2019年12/4に自らが理不尽な銃弾に倒れた。10歳の次男を脳腫瘍で失っている。
・「平和」の根子にあるのが自然や環境だ。我々人間も本来はそのおこぼれを頂戴し、慎ましく、倹しく、生きていくのがこの世の作法なのだ。
・ミサイルやヘリコプーター、機銃掃射、その下でシャツ1枚で土を掘り起こし、かき上げ、用水路を作る。どちらが生きている生をより実感できるのか、比べても仕方ないけど。
・人は必ず死ぬ。中村先生が残した最大のものはアフガニスタンの人が自らの力で堰を修復し、新たに作れる技術力と、その意義を見いだせるようにした事だ。先生は殺されたけど、その意思は引き継がれた。その場面が最後に描かれていた。
・用水路の側にモスクを建てた。現地の人達とその完成を喜び合う、その笑顔に彼のやつて来たことが収斂している。

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アツサミー