ヴィレッジのレビュー・感想・評価
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人物の作り込みが雑
この監督の作品に共通して感じることは、ディテールの作り込みの雑さ。
ヤクザっぽい、腹黒い政治家っぽい、田舎のヤンキーっぽい、悪い村長っぽい、全てぽいで止まってしまって人物の作り込みが雑。セリフも型にハマったような稚拙さを感じる。
掘り下げが浅いので、ぽさがかえって「そんな奴いるかい!」につながる。
この作品にしても、出てくる大人のセリフや外見があまりにも観念的。中学生が思い描くヤクザとか、ヤンキーの印象をそのまま形にした感じ。刺青を隠さないガラの悪い社員がいる会社にいくら故郷とはいえ精神病んだ若い女の子が平然と再就職するか?とか
シチュエーションの描写がツッコミどころ満載です。不法投棄の問題やゴミ処理の現場をきちんと取材して、リアリティーが欠けてないかちゃんと考えて作っているのだろうか。
扱っているテーマは良いしやりたいこともわかるのだが、そちらが先行してディテールが置き去りになっている。
やりたいことをきちんと表現したいなら、取材や人物の作り込みにこそ時間を割くべき。
能面の奥
のびのびとした環境、地元の文化、楽しく過ごした時間。
そんな無邪気な幼少期からだいぶ遠ざかった現在にいた2人。
優は父の過去を背負い、母の傷を見放すことなく守るように生きてきた。
美咲は都会で挫折を味わい心を痛めて帰郷した。
その再会は、離れていた年月を埋め互いの歪んだ時間を包みこむかのようにみえた。
なつかしい優しさと何よりも偏見を持たずに信頼を寄せてくれる美咲に、荒んでいた優の心は幸せだったころを思い出しほぐされ、次第にいやなことを断ち切る勇気を与えられていく。
友情が愛情にかわっていくと、表情には柔らかい日に照らされたような温かみが蘇り、瞳には力強さが宿りはじめた。
そんな心情の変化にあわせ長い間片付けられなかった部屋の様子も変わり、仕事にも意欲が出始め、少しずつ自信を得る。
美咲も、優のそばにいるときの自分らしさを心地よく思い出したようだ。肩肘張り力んでいた都会での自分を悟り、仕事場でも緊張がほぐれた本来の穏やかさと朗らかさを取り戻した。
ふたりとも、自分の手でやっと抜け出しはじめた暗闇。
求めていた安らぎが運んできたふたりの未来と希望が眩しく近づいてきたようにみえた。
2人の様子に嫉妬した村長の息子とおるが、その仲をさこうとするまでは…
噂ひとつが人生を覆してしまうような密な関係が永遠についてまわる小さな村。
その良い面を忘れてしまうほどの悪さがそこに悪戯した過去を、美咲に恋心があるとおるが執拗に利用して2人をひきさこうとする。
嫌な予感が追い立ててくるなかでその日は来た。
感情の昂りが繰り返す大きな炎を呼んだ。
迫る火のなか、淡々とうたう村長の母・ふみの声がうねりこの世の無情を嘆く。
全てを知り尽くしていたようなふみは、まさに能面そのもののように、燃え落ちる家屋とともに朽ち尽くす運命を受けて待つ。
一見、無表情なその内面に隠れる様々な感情。
多くの人は、すべてをさらけ出すことなく生きている。
そしてそこに交差するそれぞれの思惑は足跡をかすかにのこし、消えて去る。
感じる者だけに見える能面の奥。
圧倒的な横浜さんの目の表現、黒木さんのスクリーンから伝わる温度。
ひとのこころの複雑さを、能にある静と動にたぎるような炎の効果を加え、そのどちらにもある強烈な深みを表す。
地位への固執、権力の乱暴、間違った保守、変えれない意地、自己満足な見栄、伝統のための重圧、他人を傷つける欲、自我に埋もれみえなくなる世界…人間の隠しきれない癖がたくさんみえる。
誰かの純粋なきもちをにぎりつぶさないで。
余韻をのこす切なさとともにうっすらと一筋の希望をみながら願う自分が居た。
修正済み
よくわからん。
俳優さん達の演技は素晴らしかった。
救われない話は好きなので、ストーリーの構成は面白かったのですが、変に引っかかる点が何個かあった。
綺麗事を言っていた美咲も、結局彼氏に死体遺棄させて共犯者にした挙句、自首もせず村の一部になったってこと?
中村獅童が「主人公の父を救えなかった」と言うから、じゃあ今回は主人公をなにかしらの形で救ってくれるんだな、と思いきや最後まで救われず。結局あの村は何も変わってない。じゃあ私は2時間何を見せられたの?
結局あの穴は何?村人の本音とか鬱憤とかのメタファーなんだろうけど、能とか村とか穴とか、重要なポイントが多すぎて全部薄くなってる。
気になるところはもっとあるけど、とりあえず燃やされたおばあちゃんが可哀想。
この監督さんはもっと修行をしないと。才能はある。
このところ、黒木 華がお気に入りで観る気になった。なんか、妙に私を唆るものを彼女は持っている。美人ではないが、私のお気に入り。
冒頭のシーン、ショットがあちこち入れ替わりうるさい。私は能をテレビでしか見たことがない。大きなスクリーンで見ると感じ方が違う。一度、舞台を体験してみないと。
俳優陣はよく演っている。能は人間の業を表現するものと素人感覚で思っているが、監督の演出は表面的に留まっているのではないかと感じた。古田新太はそれができる演技力を持っている思うが、演出の問題だろう。脚本にも問題があるかも。処分場の穴は、ガス抜きのためか。さり気なく説明してくれないと。親を人殺しにする必要があるだろうか。いえへの放火は致し方ないが、細かい点で疑問を持つ。それとエンドロールが終わってから、話の続きの映像があるのはおかしい。才能があるのでもっと修行の必要ありと感じた。
運命との戦い、ため息が出ました。
横浜流星さん好きには堪らない映画に仕上がっていたと思う。勿論、華ちゃんも良かったです。
個性ある役者陣が脇を固めていました。
何処にでも存在する環境問題と格差社会で差別扱いされた社会でもがき苦しむひとりの男や集落自体で同調する圧力を感じる映画でした。
綺麗事だけすまされない社会へのメッセージを投げかけてる様でした。
おもしろいんだけど、、、
タイトルなし(ネタバレ)
山あいの寒村・霞門村(かもんむら)。
自然は豊かだが目玉となるような観光資源に乏しい。
強いて言えば、伝統の能だが、10年ほど前から村の収入の大半は近隣からの廃棄物を一手に処理する巨大な最終処分施設。
過去から逃れらず、母の君枝(西田尚美)の作った借金からも逃れられない青年・優(横浜流星)も、その施設で働くひとり。
職場カーストにおける彼の地位は最下層で、賭け拳闘の道具にされたり、闇処分の働き手として緊急呼び出しされたりと、虫けら同然の扱いだった。
そんな中、幼馴染の美咲(黒木華)が東京から戻り、処分施設の広報係として働き出し・・・
といったところからはじまる物語。
はじまって早々、脳裏をかすめたのは『犬神の悪霊(たたり)』。
冒頭の能の描写は『天河伝説殺人事件』だけれど、絵空事として楽しめるミステリ映画とはかなりの差があります。
過去の因習に対する現代の問題は、『犬神の~』では原発問題だったが、本作では廃棄物・ゴミ処理。
劇中の台詞では数度ほどしか出てこないけれど、SDGsの17の目標のひとつでもある。
SDGsといえばクリーンなイメージがあるが、現実ではかなり汚い。
それを生々しく描いていきます。
特筆すべきは、やはり主役の横浜流星で、映画中盤までの「死んだ魚の眼」をした青年から、中盤以降の生気を取り戻した青年への変化。
演技の幅が広く、かつ深い。
彼をキャスティングした時点で、ほぼ映画は成功したような感じもあります。
ただし、彼が生気を取り戻していく過程は、そうそう上手くいくかしらん、と思わなくもないけれど。
で、生気を取り戻した優青年の成功物語ならば爽やかな映画になるのだろうが、現実のSDGs同様、そんなにクリーンではない。
好青年となった優も、表面上のクリーンさと裏腹に、どす黒さは沁みついて、抜き差しならない状況になってしまいます。
最終的には、泥沼。
どちらかというと後半やや腰の甘いところのある藤井道人監督なのですが、本作は最後まですさまじい馬力。
生々しくどす黒くおぞましい社会を描き切った、と感じました。
俳優陣
藤井監督の演出と横浜流星の目力が光る!
藤井道人監督のオリジナル最新作にして、「新聞記者」と「ヤクザと家族」でもタッグを組んだプロデューサー河村光庸の遺作。
閉鎖的な村社会による息苦しさ、家族の過去や村に対する因縁に苦悩する主人公に東京から帰省した黒木華との再会により村と対峙するストーリー。
藤井監督は相変わらずショットが美しいです!
今作の撮影監督は今村圭佑ではありませんが、上空からのショットや村を映すロングショット等、印象に残る映像が非常に多くて釘付けになります。
今作では日本の伝統芸能である「能」が出てきます。
村にある「能」の場面が、この村にある過去の栄光や美しさを表現されていました。また、ゴミ処理場が現実の残酷さや今までの歴史で産み出された「闇」のように思えて、その二つが上手く"村"自体を対比されていて感心しました。
俳優陣の演技も見事で、横浜流星はやさぐれた所とそうでない場面のギャップがたまらないし、中村獅童は村を出た善人として凄く良かったのと同時に、歌舞伎役者だからなのか「能」を披露する場面は自らやっていて非常に素晴らしかったです!
ただ、ストーリーに関しては総じて普通です。
確かに日本の「村社会」という閉鎖的な所は上手かったし主人公の抱えてる問題には同情しました。
ただ今回、突っ込みどころも多かったです。
一ノ割ワタル演じる村長の息子とヤクザの関係性もイマイチ理解しにくいし、主人公の母親の抱えてる問題もあっさり解決してて「?」と感じました。
夢の中で動けなくて 救われなかったのかな?
不思議な映画
生きているから 思い当たる事があるなと思った。
夢の中で思う様に動けなくて 逃げたくても 焦るだけになってしまうことがあるけれど
ここの人達も 夢の中で生きているよう
夢に絡まれてしまって 意志はあるのに 行きたい方向に行けない。
夢はしがらみなのか?
優は美咲に認められて元気になったけれど
美咲も優を救ったけれど 自分も救いたかったのだと思う。
お互いを助け合うのは 悪い事ではないのだろうが
やはり自分の人生は自分で責任をとって生きる事が大切なんだと思った。
優が恵一を説得しようとするシーン
村長みたいだと思って 怖かった
守ろうとすることがあると 人は正しくなくなってしまうのか…
弱くて可哀想な人達だと思ったけれど
自分かもしれないと思う事もあった。
脚本に信念があって、演出力も撮影力も役者力もパワーがあるから 作品全体から たくさん問いかけられて 考えられるのだろうと思う!
考えることはとても大切な事だと改めて思った。
いつの時代の話なんだろうと思う。 借金があるのにタバコを吸ってるあ...
フィクションとしてのどん底感を楽しむ
どん底にいる人たちの物語ってやはり魅力的だ。メンタルで病んだ人、借金で首が回らない人、キャンブルに依存する人、そしてどうしようもないほど悪いやつ。たいてい主人公はろくでもないことをやって取り返しがつかなくなる。そんな彼らを見て安全なところからエンタメとして楽しんでしまう。でも、自分はそんなことしないと言い切れるだろうか。
自分ではどうしようもない流れってものがある。いい方向にも悪い方向にも。本作はそれをエンタメとしてうまく演出していた。いや、もちろんあの村の存在や置かれた状況、住民たちの反応、すべてフィクション感が強い。フィクション感が強いのに横浜流星の廃れた感じや古田新太、杉本哲太の悪どい迫力でなんとなく持って行かれてしまった。藤井道人って監督は映画としての訴え方がうまい。でも、彼は社会問題として訴えたいんじゃない気がする。あくまで映画というエンタメ作品として提示しているだけ。それは彼が様々なジャンルの映画を監督しているところからも想像できる。そしてどれもそれなりに面白い作品に仕上げてくる。
本作もそれなりに突っ込みどころはあるが最後までエンタメとして楽しんでしまった。次はどんなタイプの映画にするのだろう。今から楽しみだ。
救いのない夢物語
監督と主演の上映前舞台挨拶付きの回を鑑賞。
ストリートビューでロケ地の村を探したとか、シナハンに横浜くんも同行して役作りしたとか。
事前募集の質問で、穴から聞こえてくる音の録音方法は?というのがあって、監督が秘密と仰ってて。その後映画を観て理解しました(そりゃ観る前には言えないよ。なぜその質問選んだ?)
山々に囲まれて小さくて閉鎖的な村で起こる物語。加害者家族である主人公とゴミ処理場問題、村の伝統である「能」が不気味さを加速させる。
観終わった後に深いため息を吐いた。
主演の横浜流星はじめ役者陣も良く、透役の一ノ瀬ワタルには本当にムカムカした。ゴミ処理場の同僚役の奥平大兼が最後に主人公に向けた表情が印象に残った。
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