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解説

「ウェンディ&ルーシー」などで知られ、アメリカ・インディーズ映画界で高く評価されるケリー・ライカート監督が、ミシェル・ウィリアムズと4度目のタッグを組んだ作品。芸術家の女性の思うようにならない日常や周囲の人々との関係を、時に繊細に、時にユーモラスに描く。

美術学校で教鞭を取る彫刻家のリジーは、間近に控えた個展に向け、地下のアトリエで日々作品の制作に取り組んでいる。創作に集中したいのにままならないリジーの姿を、チャーミングな隣人や学校の自由な生徒たちとの関係とともに描いていく。

主人公のリジーをウィリアムズが演じた。共演に「ダウンサイズ」「ザ・ホエール」のホン・チャウ、ライカート監督の「ファースト・カウ」に主演したジョン・マガロ、ラッパーのアンドレ・ベンジャミン、「フェイブルマンズ」のジャド・ハーシュ。2022年・第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。

2022年製作/108分/G/アメリカ
原題または英題:Showing Up
配給:U-NEXT
劇場公開日:2023年12月22日

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受賞歴

第75回 カンヌ国際映画祭(2022年)

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コンペティション部門
出品作品 ケリー・ライカート
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映画レビュー

4.0柔らかくもじっくり丹念に描かれゆく芸術家の心理と日常

2023年12月29日
PCから投稿

ライカート監督が”芸術家”の心理と日常に迫った物語。気心知れたミシェル・ウィリアムズを主演に据え、オレゴンの美術大学に勤務しつつ、自らも個展開催に向けて作品作りを進める彫刻家の姿を柔らかな筆致で描いていく。現代を舞台にしてはいるものの、ストーリー展開のスピードやじっくりと内面に寄り添う感覚は前作「ファースト・カウ」とさほど変わらない。むしろそのリズムとテンポをあらかじめ知った上で臨んだほうが、ライカートの構築する世界に抗うことなく身を浸せるのかも。かく言う私は今回もこの監督の眼差しに心酔させられた。とりわけ主人公がホン・カウ演じる天才肌の芸術家に対して苛立ちと憧れという二律背反の感情を抱く様や、美大の日常、さらには芸術一家の宿命的な情景にも魅了されることこの上なかった。傷ついた鳩はまるで自らの内面を取り出し客観視したかのようなメタファー。その仕掛けも相まって終着地はとても清々しく心地よい。

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牛津厚信

4.0芸術の街、ポートランドで芸術家として生きること

2023年12月22日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

知的

アメリカ、ポートランドで彫刻家をしているリジーは作品作りに集中できてない。隣人に給湯器を直すようしきりに催促しているのだが、まるで取り合ってくれないし、飼い猫が傷つけた鳩を獣医に連れていく羽目になるし、同じくアーティストの兄は家に引き篭もり状態だし。そんな芸術家の煩わしい日常が、一見、何の目的もないかのように綴られていく。

ところが、リジーがありきたりの集中力を投入して完成させた、指先で女性の苦悩と表情を表現した粘土彫刻は、個展のテーブルに何点か並べてみると、見事なアートとして仕上がっている。才人の物作りの工程というのは、えてしてこういうものかもしれない。

舞台になるポートランドは芸術の街として世界に知れ渡っていて、街にあちこちにペイントアートやギャラリーが点在している。だからアートが好きな人にとっては天国だろうが、そこで物を作る芸術家たちにとっては、意外に息苦しい場所かもしれないと感じた。まして、リジーの母親は彼女の母校であるオレゴン芸術工芸大学の美術管理者だし、兄が引き籠りになったのはどうやらクリエイティビティに限界を感じたから?みたいだし。

そんな芸術家たちの苦闘と自由に空が飛べる鳩とを対比させることで、作品のテーマがさりげなく明かされるケリー・ライカートの『ファースト・カウ』に続く最新作。日々の葛藤とそこから抜け出す瞬間の喜びは、誰もが共有できるに違いない。

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清藤秀人

猫が狭い隙間に入って体を丸める様な安心感

2024年10月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 年頭に観た『ファースト・カウ』の素晴らしさに大きな衝撃を受けたケリー・ライカート作品はあれが監督の最新作ではありませんでした。という事で、昨年のカンヌに出品された最新作がこれです。

 芸術大学で教えながら自らも創作を続ける造形作家の、個展を控えた日常を描く物語。家の修理をしてくれない大家に苛立ったり、人格に問題はあっても優れた芸術的才能を持つ人物に嫉妬を感じたりの日々の小さな漣が綴られます。特に大きな出来事は起きないのですが、台詞で説明しない独特の間(ま)に自分の心と体がスッポリはまる一体感が心地よいのです。猫が狭い隙間に入って体を丸める様な安心感とでも言うべきかな。『ファースト・カウ』とはまた異なるケリー・ライカートの名人芸でしょう。観終えて時間が経ってからの方が滋味が滲み出て来るる不思議な味わいです。 (2024/1/13 鑑賞)

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La Strada

4.0友達あるあるをちりばめつつ、「回復」のあり方について語りかけてくる一作

2024年6月17日
PCから投稿

気心が知れた知人だからこそ、雑にあしらわれていると感じた瞬間に、無性に心がささくれ立ってしまった経験は誰しもあるはず。ましてや自分の人生を大きく踏み出す直前であればなおさらでしょう。

本作の主人公、リジー(ミシェル・ウィリアムズ)とジョー(ホン・チャウ)という二人の芸術家の関係もまさにそんな感じです。それぞれの個展に向けて準備を進めていく中で生じる、様々なできごとに翻弄される二人(というか、主にリジー)の姿を、格別大きな事件も交えず落ち着いた筆致で描いているところは、いつものライカート監督作品だし、すっかりライカート作品の看板となっているミシェル・ウィリアムズの演技も心得たものです。

これまでのライカート監督の作品は、どこに行きつくのかわからない「漂泊の人々」を描いてきました。一方、本作のリジーは大学に所属し、個展の開催という、物語上の到着点も明確です。

本人はどうも周囲に対して疎外感を抱いているようですが、少なくとも立場上は、ちゃんと「居場所のある人」というわけで、少し今までのライカート作品の主人公とは毛色が異なっています。むしろ、どうもかつて芸術家を志して挫折しらたらしい、リジーの兄に、心が彷徨っている人々の姿を託しているようです。

序盤から目を引く傷ついた鳩と、中盤に登場する損傷した「あるもの」とが、回復しうるものと回復しえないもののわかりやすい対比となっているのですが、こうした明確な対比構図の提示もライカート作品では珍しいかもしれません。傷ついた「あるもの」が何で、どのような役割を帯びていくのか、ぜひとも注目してほしいところ!

プロダクション・ノートとか読みたくても、公式ホームページ自体が配給を手掛けたUNEXTの特集ページの一部なんですよね…。短くとも劇場公開して、パンプレットも販売してほしい!

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yui

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