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映画『エール!』『コーダ あいのうた』でも取り上げられた、耳の聴こえない両親から生まれた耳の聴こえる子どもたち。
コーダ(CODA)とは、Children Of Deaf Adultsの頭文字。
日本のドキュメンタリー作家・松井至は、東日本大震災に伴う大津波の生存者のなかに耳の聴こえない人々がおり、彼らに津波の襲来を伝えたのが、彼らの健聴の子どもたちだった、ということを知る。
取材に同行していた外国人女性から、米国に多くのコーダたちがいることを知り、コーダたちの生き方、苦しみ、その後の人生などを撮ることにした・・・
といったドキュメンタリーで、作家視点から映画の紹介を始めたわけだが、映画の多くは多感な時期にいるコーダたちの様子が中心。
映画後のシンポジウムの内容を加味しながら書き進めます。
当初、監督が製作した「資金集めのためのショートフィルム」は、センチメンタルな音楽がつけられ、コーダ=不幸な存在、というイメージを強調しすぎていたようで、映画の被写体となるコーダの少女から完全にシャットアウトされそうになったという。
それでも、少女と交流するうちに、彼女自身も自分の内側に抱えている物事を外に発信したいという思いがあり、彼女のアイデアを尊重して撮影を続けていった、という。
他のコーダたちにも同じアプローチをすることで、彼ら彼女らの心が開かれ、映画としては生き生きとした映像の集まりとなった。
特に、一人の少女が、自分の生い立ちをベースにして物語を創造し、クラスメイトの前で発表するシーンは印象深い。
また、米国にはコーダたちが集う「コーダ・キャンプ」というサマーキャンプがあり、その1週間のキャンプのときだけ、自らの悩みや思いを仲間たちに解放できるようで、キャンプのエピソードでの彼ら彼女らを写した様子も素晴らしい。
翻って、コーダという存在は聾者という少数派の中の更なる少数派で、少数派であることの苦しみは、他の少数派と比べても、深いものがあるのでしょう。
映画では、監督ほかによる第三者のナレーションは使われておらず、コーダたちから出る言葉で綴られています。
それは、言葉だけでなく、手話などの身体表現コミュニケーションも含まれ、饒舌とも豊穣ともいえます。
そのほか、興味深かったのはコーダたちが暮らす家庭の様子。
耳が聞こえない=無音の環境、と思っていましたが、音が聞こえないゆえに生活音には無頓着。
なので、炊事などの家事では、食器などがぶつかり合う音がすさまじい。
ま、なるほどというえば、なるほどなんですけど。