劇場公開日 2022年5月28日

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「『コーダ あいのうた』をまた観たくなる!」私だけ聴こえる kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0『コーダ あいのうた』をまた観たくなる!

2022年9月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 東日本大震災で津波の恐怖を知ったアシュリー。大声で「逃げろ!」と叫んでもろう者たちには聞えない。聴者たちにはわからない苦労。災難があらためて心に刺さる。東北を訪れていたコーダのアシュリーが積極的に体験談に耳を傾ける。途中、アメリカのドキュメンタリー映画だと勘違いしてしまいそうになったけど、これは日本の映画。

 ウィスコンシン州で毎年12日間開かれているコーダ・キャンプ。日頃から、ろう者の両親からも疎まれ、学校へ行っても違った人種のように疎外感をおぼえる彼らコーダ。友達もなかなか出来なく、このキャンプだけが同じ境遇の若者たちと交流を深め、楽しい12日間を過ごすのです。ずっとこのままでいたい・・・と呟く彼ら。

 幼い頃から家族と手話で会話して、外では手話通訳として活躍する。それが当たり前の人生なんだと思っているのに、普通の聴者たちからは距離を置きがちにされてしまう。そして、それぞれのコーダの若者たちが「ろう者になりなかった」と漏らし、聴者を生んだろう者の親も悲しむという。ここが『コーダ あいのうた』の肝でもあったから、またこのアカデミー賞作品賞の映画を観て確認したくなるのです。

 全体的に真摯に彼らの心の内を探った内容によって、自分の認識の甘さを痛感させられた。そして『コーダ あいのうた』が特別な家族ではなく、主人公の心の変化もリアルだったんだと感じてしまう。これは多くの人に観てもらいたいドキュメンタリーでした。

 タクシー運転手経験も10年以上経った私kossy。視覚障がい者も聴覚障害者もお乗せしたことがありますけど、ろう者が行き先を伝えるのはメモに書かれた住所。「そこを右、そこを左」と伝えるときは肩を叩いてくれたりする。今ではカーナビもついているので楽になったけど、ないときはこんな感じでした。UDドライバーの研修は受けたけど、ほとんどが車椅子客と視覚障がい者だったなぁ・・・それにしても、日本語タイトルは「聞く」ではなく「聴く」になっていることも考えさせられた。

kossy