ロストケア

劇場公開日:

解説

松山ケンイチと長澤まさみが初共演を果たし、連続殺人犯として逮捕された介護士と検事の対峙を描いた社会派サスペンス。

ある早朝、民家で老人と訪問介護センター所長の死体が発見された。死んだ所長が勤める介護センターの介護士・斯波宗典が犯人として浮上するが、彼は介護家族からも慕われる心優しい青年だった。検事の大友秀美は、斯波が働く介護センターで老人の死亡率が異様に高いことを突き止める。取調室で斯波は多くの老人の命を奪ったことを認めるが、自分がした行為は「殺人」ではなく「救い」であると主張。大友は事件の真相に迫る中で、心を激しく揺さぶられる。

斯波を松山、大友を長澤が演じ、鈴鹿央士、坂井真紀、柄本明が共演。作家・葉真中顕の小説「ロスト・ケア」をもとに、「そして、バトンは渡された」の前田哲が監督、「四月は君の嘘」の龍居由佳里が前田監督と共同で脚本を手がけた。

2023年製作/114分/G/日本
配給:東京テアトル、日活
劇場公開日:2023年3月24日

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(C)2023「ロストケア」製作委員会

映画レビュー

4.0日本社会の重要な課題をえぐり出す

2023年4月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

原作のミステリー要素は抑えめにして、早々に犯人が分かり、本作のテーマである介護問題をめぐる議論を深める方向に脚色していた。日本のこれからにとって非常に重要な、重苦しい問題を突き付けてくる。大量殺人の動機は、介護で犠牲になる人々を解放することだった。介護業界も人材不足、共働きせねば生きていけない世帯が増えるので、家族で介護するのも難しい。そもそも、子どもたちと別居している世帯が地方には多い。それでも家族の介護に関わっている者たちはギリギリで生きている。しかし、介護に時間を取られて満足に働けないし、体力的にも精神的にも追い詰められていく。殺人が救いになるなど、あってはいけないと思いたい。しかし、この現実から目を背けてもいけない。超高齢化社会の日本ではこれは全くの絵空事ではない。介護を受ける人の尊厳、介護する人の尊厳、どちらも守ることは社会にできるだろうか。様々なリソースが減少し続けるこの国が抱える深刻な課題を突き付ける優れた作品。

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杉本穂高

4.5これを他人事だと言い切れる人が何人いる?

2023年3月26日
iPhoneアプリから投稿

怖い

同じ介護士が働く訪問介護事務所の入居者の死亡率が突出していることから、1人の検事が事実の確認に着手する。やがて見えてくるのは、65歳以上の高齢者が人口全体の3割を占めるここ日本で、もはや国の政策や制度では賄い切れない厳しすぎる現実だ。

疑惑の介護士が言い放つ、常軌を逸しているようで、実は胸に突き刺さる一言に激昂し、否定する刑事の側も迷いがある。2人のやり取りを聞いていて、これを他人事だと言い切れる人がいったい何人いるだろうか?

介護問題と人間の尊厳が天秤にかけられ、危ういバランスを保っているこの国で、だからこそ、これは今、作られるべくして作られた映画。ここ数年、進境著しい松山ケンイチ(介護士)と長澤まさみ(検事)が共に渾身の演技で観客を映画の空間に引き込んでいく。その吸引力が半端ない。

社会派ドラマとサスペンスが絶妙のバランスで配分された必見作と言えるだろう。

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清藤秀人

4.5表面的には白黒が付けやすいように思えるが、実は「正解」が極めて見えにくい。見ておきたい良作。

2023年3月24日
PCから投稿

本作は、長澤まさみ×松山ケンイチという組み合わせの段階で魅力的です。
ただ、内容自体は、私たちにとって重大な様々な問いかけをしてきます。
私たちは自然と「見たいもの」と「見たくないもの」という分け方をすることで、できるだけ「見たくないもの」を逃避する傾向があります。
本作では、その後者に当たる「現実問題」を分かりやすく見せることで、私たちに「考えること」を促します。
ネタバレにならないように、本作に出てくるキーワードで「問題」を提示してみます。
本作では、「年金」「生活保護」「刑務所」というワードが出てきます。
例えば「(国民)年金の場合は、生活保護費よりも少ない場合がある。これは不公平ではないか。年金の保険料を払わない方が得だ」といった意見を見かけることがあります。
この論については、いろんな誤解があるのですが、ここでは解説するのではなく、次の問い掛けをしてみます。
「生活保護によって非常に限られたお金で苦しい生活をするくらいなら、自動的に毎日3食が食べられ雨風をしのげる住まいや医療も提供される刑務所に入っていた方が得だ」という考えはどうでしょうか?
実は、前者の論よりも後者の論の方が、「正解」が見えにくくもあるのです。
このように、普段は考えないような「社会問題」も、日本は「世界一の高齢大国」であるため、「介護」の問題は私たちが世代を問わず直面し得る極めて重要な「問題」なのです!
その「問題」においては、「連続殺人犯」vs「検事」という極めて分かりやすそうな構図であっても、正直なところ「どちらが本当に正しいのか?」と「正解」は非常に見えにくいのです。
これは、例えば今ロシアで刑務所にいる殺人犯が戦場に駆り出されていますが、その殺人犯が戦場で多くの敵を殺戮すれば、無罪放免になるどころか「英雄」になれる、といった「現実」もあることが象徴的です。
このように、環境によって「正解」が真逆となるのが「現実社会」でもあるのです。
以上の予備知識を踏まえた上で本作を見れば、様々な視点で考えられる「軸」のような映画となることでしょう。

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細野真宏

4.0理想と現実

2024年4月28日
iPhoneアプリから投稿

ケア対象の老人を42人殺害した介護士とその事件の担当検事の取り調べが見応えありだった。
犯人であるマツケンは自分の経験から,自分は老人とその家族を救ったのだと主張する。それは、強く語るというより,ごく自然に当然のことをしたかのような語り口なのだ。それに対して、介護施設に母を入れた検事は,どんどん感情に流されて彼のやったことは犯罪なのだと認めさせようとする。そうしながら,自分が現実から逃げていたことに否応なく気づいてしまうのだ。
そこには、出口のないような理想と現実があった。
マツケンが淡々と語る、この世界には穴があるんです、という言葉。この映画は、誰もが、この立場になったら、穴から落ちたら自分はどうするんだろうと考えてしまう。
ある意味,怖い映画だった。

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