ヒューマン・ボイス

劇場公開日:

ヒューマン・ボイス

解説

スペインの名匠ペドロ・アルモドバルが、フランスの芸術家ジャン・コクトーの戯曲「人間の声」を翻案し、自身初の英語作品として描いた30分の短編作品。ティルダ・スウィントンが主演を務め、恋人に別れを告げられたばかりの女性を主人公に、彼女が繰り広げる電話での会話劇だけで物語が展開する。

1人の女が元恋人のスーツケースの横で、ただ時が過ぎるのを待っていた。元恋人はスーツケースを取りに来るはずが、姿を現さない。かたわらには主人に捨てられたことをまだ理解していない、落ち着きのない犬がいる。女は待ち続けた3日間のうち、一度だけ外出をし、斧と缶入りガソリンを買ってくる。女は無力感にさいなまれ、絶望を味わい、理性を失う。様々な感情を経て、やっと元恋人からの電話がかかってくるが……。

2020年製作/30分/G/スペイン
原題または英題:The Human Voice
配給:キノフィルムズ
劇場公開日:2022年11月3日

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映画レビュー

3.5演劇と映画の融合を試みる実験的手法を楽しめるマニア向き

2022年11月13日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

知的

文芸分野の創作のほか画家や映画監督としても活動したフランスの芸術家、ジャン・コクトーが1930年に発表した戯曲「人間の声」を、スペインのペドロ・アルモドバル監督が翻案して実験的な短編映画に仕立てた。「ティルダ・スウィントンによる一人芝居」という紹介もどこかで目にしたが、一度だけ外出して買い物をするシークエンスでは店員との会話もあり、厳密な一人芝居ではない。それに、元恋人が飼っていて女の部屋に残されたという設定の犬も、なかなかに達者な演技でスウィントンをサポートしている。

元が戯曲ということもあり、撮影スタジオ内に作られた部屋のセットの壁(=パネル)の裏側を意図的に見せるなど、劇空間の虚構性が強調されている。女がかつて同居していたであろう男から冷たくされ、精神安定剤を大量摂取し、破壊衝動にかられていくのか、あるいは役にのめり込むあまり精神に変調をきたしている女優の役をスウィントンが演じているのか、どちらにも解釈可能だろう。演劇と映画の融合を試みるセットの点で、ラース・フォン・トリアー監督の「ドッグヴィル」「マンダレイ」を想起させもする。

本編30分なので、同じ日に日本公開となったアルモドバル監督の「パラレル・マザーズ」と併映かと思ったら、この一本で一律800円の鑑賞料金だとか。尺は短くても実験的な作品に価値を見出せるマニア向きという気がする。

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高森 郁哉

3.530分なのに観応えあり

2024年7月21日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

ティルダ・スウィントンのほぼ1人芝居
映画というより「芝居」という表現の方がしっくりきます
相手は見えない電話での会話、ティルダ・スウィントンの声のトーンや表情で、2人の関係が終わった事、捨てられた相手への未練がとても伝わってきます
それと狂気、こんな女性とは別れるのも大変
ティルダ・スウィントンがこわすぎました
鮮やかな色の部屋、おしゃれなインテリア、とってもステキな部屋でしたが、それがまた虚しさとあの女性の異常さを感じさせました

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共感した! 2件)
小町

4.5タイトルなし

2024年5月17日
Androidアプリから投稿

ジャン・コクトーの戯曲を基にしたロッセリーニ監督の名作『アモーレ』。その第一話「人間の声」でアンナ・マニャーニは我々に人間の真実を突きつけた。

ロッセリーニはカメラの前の素材をいかに扱うかという様式の美学を決定的に提示してみせたのだ。

ではアドモドバルはこの戯曲をどう扱ったのか。

ポップでカラフルなファッション、洒落た部屋の設え、斧、ワイヤレスイヤホンなどなど、もう見どころ満載。

ロッセリーニの『アモーレ』がアンナ・マニャーニのリサイタルであるのに対し、アドモドバルはティルダ・スウィントンの独り芝居に終わらせなかった。

リアリズムとイリュージョンという映画にまとわりつく矛盾と葛藤を感じさせつつ、アドモドバルはその矛盾を糧にしてラストでこう語る。「われわれは現実へと単に戻って行くことになるだけ」。

現実と映画があっさりと等号(=)で結ばれるとき映画は消滅してしまう。そんな不可能な一点をしっかりと見せるには、ティルダ・スウィントンの硬派な透明性しかいない。

アンナ・マニャーニのあの動物的な魅力に対抗できるのは、ティルダ・スウィントンしかいないよね。

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Raspberry

3.0赤と黒

2023年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
ネタバレ! クリックして本文を読む
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kossy