帰らない日曜日

劇場公開日:

帰らない日曜日

解説

ブッカー賞作家グレアム・スウィフトの小説「マザリング・サンデー」を映画化し、第1次世界大戦後のイギリスを舞台に、名家の子息と孤独なメイドの秘密の恋を描いたラブストーリー。1924年3月、イギリス中のメイドが年に一度の里帰りを許される「母の日」の日曜日。しかしニヴン家に仕えるジェーンは孤児院育ちで、帰る家はない。そんな彼女のもとに、秘密の恋人であるアプリィ家の子息ポールから密会の誘いが届く。幼なじみのエマとの結婚を控えるポールだったが、前祝いの昼食会を前に、屋敷の寝室でジェーンとひと時を過ごす。やがてニヴン家へ戻ったジェーンを、思いがけない知らせが待ち受けていた。時が経ち小説家になったジェーンは、彼女の人生を一変させたあの日のことを振り返る。「アサシネーション・ネーション」のオデッサ・ヤングと「ゴッズ・オウン・カントリー」のジョシュ・オコナーが主演を務め、オスカー俳優のコリン・ファースとオリビア・コールマンが共演。監督は「バハールの涙」のエバ・ユッソン。

2021年製作/104分/R15+/イギリス
原題または英題:Mothering Sunday
配給:松竹
劇場公開日:2022年5月27日

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(C)CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, THE BRITISH FILM INSTITUTE AND NUMBER 9 FILMS SUNDAY LIMITED 2021 All rights reserved.

映画レビュー

4.0懐かしい光の中に戻りたくなるようなイギリス映画

2022年6月13日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

本作を見ていくうちに、1980年代後半から90年代前半に製作され、筆者が学生時代に続けて見て感銘を受けたイギリス映画を久しぶりに思い出した。ジェームズ・アイボリー監督の「眺めのいい部屋」「モーリス」「ハワーズ・エンド」「日の名残り」といったミニシアター系で公開された名作、秀作と似た光と匂い、時間の流れを持った、なんともイギリス映画らしい作品で、懐かしく感じた。

まるで絵画のようなイギリスの風景の中で展開する「帰らない日曜日」は、当時の時代を反映してか、スローモーションのようにゆっくりとしている。昨今のエンタテインメント大作の早い展開(演出と編集のリズム)に慣れている方は最初もどかしく感じるかもしれないが、陽の光と風を意識した画づくりにより、そのリズムが次第に心地よくなってくることだろう。そして、衣装や美術、登場人物たちの所作などから当時の貴族たちの美意識や、主人公のエレガントな官能が匂い立ってくる。

身分違いの秘密の恋とは別に、本作の根底には、戦争によって愛する家族や兄弟、子どもを失った悲しみと喪失感も流れているのが重要なテーマとなっているが、イギリス映画の系譜を受け継いだ、ちょっと立ち止まって、思い出のあの日に、あの懐かしい光の中に戻りたくなるような作品である。

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和田隆

3.0ミステリアスなジェーンの人柄が色濃く映り込む

2024年7月1日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

<映画のことば>
「君はいつ作家になった?」
「覚えてない。」
「嘘だな。」
「きっかけは三度あったわ。生まれた時と、タイプライターをもらった時。」
「三つめは?」
「覚えてないわ。」

本作は「名家の子息と孤独なメイドのラブストーリー」という前評判でした。

その前評判にすっかり洗脳されてしまっていたのかも知れませんが、実は、本作を観始めた時点では、婚約者がありながら、こっそり(堂々と?)他家のメイドとも関係を持つ、お屋敷のボンボンの放蕩物語かと、推測していました。当初は。正直なところ。

ところが、観ていくうちに、どうやら、そういう雲行きでもなさそうと気づきました。
ジェーンは、なぜ(どういったきっかけで、どういう理由から)婚約者がいるポールとこういう関係を結ぶ間柄になったのでしょうか。
ジェーンの様子からして、ポールにぞっこんという様子もなく、婚約者のある男性との逢瀬を、むしろ楽しんでいる節も、ジェーンには見受けられたように思われます。評論子には。

本作中では、ニヴン家のメイドとなるまでの彼女の生きざまは描写されていないのですけれども。
しかし、孤児院の出身ということであれば、天涯孤独、自分自身が生きることだけを考えればよいという、ある意味「自由な身の上」だったようです。
そのせいの生来(性的な側面も含めた)奔放な性格だったのではないかだと受けとりました。
あとに同棲?することになるドナルドとの関係性も含めて。
(孤児ということだが、若き日のニヴン家のメイドと時代の彼女から、その生い立ちを窺い知ることはできなかったようにも、評論子は思いました。)

もともと、当家のメイドに過ぎないジェーンが、他家の家族の一員であるポールと本当の恋仲になどなりようはずもない―。
身分階層がはっきりとしていた(当時の)イギリス社会のありようからして、そのことは、ジェーンにしてみれば「百もしょうち、二百も合点」だったはずですから。

彼女のそういうミステリアスな生き様が、その数奇な運命とともに、本作の全体を通じての「味付け」になっていたように思います。

そしてモチーフとなっている女性がどちらも作家ということからも、本作は、別作品『あちらにいる鬼』のイギリス版だとも言えるようにも思われます。

第一次大戦下て、生活のちょっとしたところにも戦争の影ー閉塞感が窺われるという世相の中で、ジェーンは芸術家(彼女は後に小説家となる)としての自由な生き様を貫いていたと評したら、それは評論子の勝手な憶測ー独断というものでしょうか。
(そのことは、婚約者のあるポールとの、本当に屈託のない性行為にも表れていたと、評論子には思えてならないのです。)

原題の「マザリング・サンデー」の「マザリング(愛撫)」も、ジェーンとポールとの性愛関係を、実は暗示しているように思えてなりません。評論子には。

彼女がポールの両親からも(彼の婚約者であるエマを差し置いてまで、彼の父親が所有する)競走馬の残り一本の脚の所有者と目されていたことも、そのように理解しました。
評論子は。

佳作てはあったと思います。

<映画のことば>
「書くしかなかったの。
しんどい作業だったけど。
素晴らしい日々だった。」

<映画のことば>
記憶を呼び起こし、
それを描写して自分のものにする。
そして、言葉で再現する。
君ならできる。
やってくれ。
僕らのために。
そして、君のために。

(追記)
別作品『女王陛下のお気に入り』でアン女王を演じたオリビア・コールマンの出演作品ということで、観ることにした一本になります。
彼女が主演というわけではないことは分かっていたのですけれども。それが、本作の鑑賞の、いわば「入口」だったという訳です。
いわばほんのちょい役なのですけれども、本作の中では、けっこう重要な役回りだったのではないかと、観賞後には思われました。

本作の原題は、前記のとおり「マザリング(愛撫)・サンデー」ということですけれども。
ポールの回想からも、彼女は(シェーリング家・ニヴン家の子供たちを含めて、文字どおり子供時代から)子供たちを、慈(いつく)しみ、深い愛情をもって育てていたことが、窺われるようです。
ダブル・ミーニングとして、原題の意味は、そこにもあったように思われます。
評論子には。

(追記)
女性の側が使う避妊具(ペッサリー)のことを、別名では「オランダ帽」というようです。ネットで見てみると、考案者はドイツ人医師のようですけれども。(当時は?)避妊法の研究が進んでいたオランダに渡って改良されたようなので「オランダ帽」と呼ばれるようになったもののようです。
評論子は、初めて知りました。
本作を観て。

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talkie

4.0雰囲気が好き

2024年6月28日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

原題:Mothering Sunday
人生の転換点。
自分の原点。
マザリング・サンデー。
母なる日曜日、か。

【映画感想文】人生の転換点、自分の原点を描く「帰らない日曜日」

●余韻が漂う作品
物語の展開や登場人物の心情を、過剰に説明することなく、観客の想像力に委ねる絶妙な間合いが印象的だった。
特に、ジェーンとポールの関係性や、彼らを取り巻く時代背景などが、直接的な説明ではなく、表情や仕草、沈黙の瞬間を通じて巧みに描かれている。

この余韻を残した表現が小説を読みたいと思わせてくれる動機になっていると感じる方も多いのではないだろうか。

また、この映画は1924年、1948年、1980年代と3つの時代を行き来する構成になっており、それぞれの時代の移り変わりも、過度な説明を避け、観客の想像力を刺激する形で表現されている。女優が若かったので時系列の変化がわかりにくかったが、この時間軸の移動が、物語に奥行きを与え、余韻を深める要素となっている。

さらに、映像美や音楽も、この「絶妙な間合い」を支える重要な要素となっている。美しい自然描写や、時代を反映した衣装やインテリア、そして情感豊かな音楽が、セリフや行動だけでは表現しきれない感情や雰囲気を巧みに伝えていて良かった。

●まとめ
映画の中で直接的な説明を避け、「行間を詰めすぎない」ことで、観客に自由な解釈の余地を与え、映画を見終わった後も長く心に残る余韻を生み出している。

これによって、単なる物語の消費ではなく、観客自身の経験や感情と結びつき、深い共感や思索を促す効果があるように思う。

具体的には、鑑賞後「帰らない日曜日(※)」(原題:Mothering Sunday)というタイトルを通して、観る人それぞれの心に「人生の転換点。自分の原点。」についての問いを投げかけているように感じた。個人的にこの問いかけによって、一層印象に残る作品となっている。

※邦題はややネガティブな印象を受けてしまう。しかし、この日曜日があったからこそ、その後のジェーンの成長に繋がっていると捉えると、やはり原題の方が良かったのではないかと思わずにはいられない。

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山のトンネル

4.0詩的

2024年5月6日
iPhoneアプリから投稿

イギリス人小説家の回顧。思いがけず美しい映画に出会った。
身分の違う二人が出会い恋をした、最後の言葉はさよなら。
そして彼は。。
ジョシュオコナー目当てで見た映画が思いがけず良質な映画脚本でした。オコナーは変わらず自然な演技。オデッサ初見ながら見事に演じ切った。そしてそしてなんとコリンファースが出演。これだけでもご褒美、いつも変わらずパーフェクト演技で大好きな俳優。もっとヒットしてもいい作品。

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ken

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