ケイコ 目を澄ませてのレビュー・感想・評価
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耳が聞こえないということ
耳が聞こえない女性プロボクサーの話
ボクサーということをぬきにして
あらためて
耳が聞こえないということは
とても大変だということを
痛感させられます。
聴者に対して
ろう者の世界はこうなんだ
ということを
示してくれている感じがした。
生活音だけのエンドロールが
象徴的でした。
画面に映っているのはケイコだけで
周りでのやり取りの声が聞こえてくる。
ケイコは無反応。
見ている聴者はそのやり取りが気になる。
そんなシーンがいくつかあった。
聞こえないって怖いな
不安にならないんだろうか
と思って見ていた。
会長の奥さんが
会長の病状を話すシーン
パンフレットの説明には
「呆然とするケイコ」
みたいに書かれていたけど
手話なしで喋ってるだけだったので
伝わってなくてキョトンとしてるだけ
かと思ってしまった。
いろんな人に見てほしい作品です。
設定は特殊でも、生きることの中に普遍的に存在するもの、それが描かれている
耳が聞こえない女の子のプロボクサーって、相当特殊なんだけど、ケイコの足掻きながら生きていく日常に誰もが自分の人生を重ね合わせることができると思う。ケイコほどの身体的ハンディを抱えている者は多くはないだろう。しかし、その生き様には万人に共通するものがある。そんなことを感じさせてくれる映画である。ボクシングというハードなスポーツの過酷さや、その上、耳が聞こえないハンディ、さらにそのために不便であろう日常生活を、殊更に特殊なものとせず、淡々と描いている。また、それを岸井ゆきのは見事に演じた。
映画の終盤、ジムの会長が倒れ入院する。お見舞いに行ったケイコは病床で大学ノートに何やらイラスト?メモ?を書いている。それを目にした会長の奥さんはケイコの了承を得てそのノートを手に取り、めくりながら読み始めた。そのノートには練習の記録(ロードワークを何キロしたとか、スパークリングを何ラウンドこなしたとか)を中心に日常の他愛ないことがメモされていた。そのケイコの日常がスクリーンに流れたとき、僕は不覚にも涙がこぼれてしまった。よくわからない感情が僕の心に渦巻いたのだ。僕は受験生の時に日誌を書いていた。あの頃を思い出した(普通の受験生とは少し異なる環境にいたよななんて考えたり)し、サラリーマンとして必死に働いていた若い頃を思い出したりもした。他にもいろいろと足掻いて生きてきた(今も見事に足掻いてます)なあなんて、いろいろと考えたりしました。
観て良かった
光の差さないほうへ
日本の若手監督で個人的に大好きな三宅唱監督の作品。やっと鑑賞できた。前作のきみの鳥はうたえるが好きすぎて、今作も楽しみで仕方なかった。聴覚障害でありつつもプロボクサーとしてリングに立つ小笠原恵子さんの原作を元にして作られている。個人的にボクシングが好きなのでボクシング映画はたくさん観ているけれども、こちらの作品はボクシング映画というよりはボクサーとして、人としての生き様が描かれていてこれまでのボクシング映画とは一味も二味も違っていた。ケイコの人生、生き様に焦点が当てられていた。岸井ゆきのさんのセリフはほぼなく、その代わりに眼ですべてを訴えかけてきていた。ケイコにとってボクシングは魂を燃やす場所であり、本来の自分を曝け出せる、言葉のない拳で語り合う場所である。心情の変化はすべて映像で語られておりそれこそが三宅監督のなせる技なのかなと。ケイコの通うボクシングジムはノスタルジックな古いボクシングジム。それと対照的に真新しいジムが話中にでてくるが、そこは綺麗で蛍光灯で全てが照らし出された影のない明るい綺麗なジム、そこはケイコの生きていきたい場所ではなかった。鑑賞後調べたらデジタルフィルムではなく16mmのフィルムで撮影されているそうで、そのぼんやりとした、ふんわりとした優しい光がこの作品の良さを増していたように思う。華美な展開やセリフ、表情がなくても観るものにこれだけ訴えかけてくる作品ってなかなかないと思います。映画館で観れてよかった。
ボクシング映画ではないのですね
悩み
なんでボクシングを続けることに悩んでいるのか、、、
そこがとても大切なテーマなんだと思うんですが、イマイチ伝わってこなくて結果的に退屈に感じてしまいました(スイマセン)
もっと言ってしまうと、長い人生の中で何か情熱を傾けられる対象が見つけられた人は、それだけで幸せなんだと思います。そこは全く描かれていない上に、その対象にのめりこんだ入り口と、のめりこんでいる最中と、その出口、その3つが揃っていなくて、腑に落ちないというか、一連の一幕としてのなんか居心地が悪いんですよね。
岸井ゆきのさんがストイックに役に取り組んでいたのは、凄く伝わってきたので心苦しいのですが、全体として面白い映画と感じることができませんでした。
「目を澄ませて」という副題は、観客に向けてのメッセージだったのかも知れませんが、それにしても「う~ん」という感じでした。
しゃべらなくとも
稽古
淡々とした日常
よかった
すごい評判だったので期待しすぎたせいか、話がとにかく地味で盛り上がりに欠ける。無理にドラマチックすることを避けているのだろうけど、それにしてももうちょっと工夫があってもいいのではないだろうか。
主人公の岸井ゆきのさん、ボクシングの練習はすごくしていたけど、試合のシーンが少ない。3戦か4戦しかしてないのをリアルにしようとしたのか、あまり強そうな感じがせず動きの切れが悪い。腰が低すぎて強そうに見えない。安藤サクラやヒラリー・スワンクはもっと切れ切れだった。ろうあ者の感じはすごくする。しかも性格がそんなによくない感じがいい。
時には心も澄ませて。
聴覚障害を抱える実在の女性プロボクサーをモデルにした物語。日中は客室清掃の仕事、午後は下町のジムでトレーニングに励むケイコ。尊敬する会長の声も、ゴングの音もその耳には届かない。そして一度ボクシングから離れたいという本音もうまく伝えることができない。
周囲の期待に応えたい気持ち。自分自身のこれからのこと。心が強く見えるケイコにだって弱い部分はもちろんある。淡々と流れる下町の空気感。あちらこちらの雑音。なんだか感傷的になります。
正直になれないもどかしさやお世話になった会長への義理。入り乱れる感情を隠すようにリングに立つケイコの姿にぐっときました。岸井ゆきののいつもと違った表情が素晴らしいです。ただ、全体のテンポが私には合わなくて途中ちょっと退屈してしまいました。
力のある、いい作品だけど……
力のある作品です。
ざらっとした質感の映像、シンプルなストーリー、岸井ゆきのの揺るぎない存在感……。
それらがひとつになって、ひじょうに味わいぶかい内容に仕上がっていました。
まず冒頭のトレーニングのシーンが圧巻です。ケイコとトレーナーのパンチの音は、まるでパーカッションによるセッションのよう。そのリズムがなんとも心地よい。
あまり起伏のない物語なので、途中、映画の世界から気持ちが離れそうになったけれど、決してそうはならず、またすぐに意識が画面に戻っていく。
中盤ぐらいからそんなことを繰り返していて、なんか不思議な作品だなと思いながら観ていました。
ともすれば離れそうになる僕の気持ちをスクリーンにつなぎ止めていたのは、言うまでもなく、岸井ゆきのという女優の存在です。
デ・ニーロじゃなきゃ『レイジング・ブル』があそこまでの作品にならなかったのと同様に、岸井の存在がなければ本作は成立しなかったでしょう。
ちなみに、昨年、僕は彼女の舞台『気づかいルーシー』も観ましたが、そのときのパフォーマンスも素晴らしかった。岸井ゆきのは、わが国のエンタメ業界の未来を背負って立つ俳優です! これからも応援するよ、ゆきのちゃん♡
いや、また気色悪い文章になってきた。映画の感想に戻ります。
さて、岸井ゆきのの好演とともに伝わってきたのは、監督がこの作品をひじょうに丁寧につくっているということでした。
本作のテーマを損なわないように、安直な「感動物語」にしてしまわないように、注意ぶかく制作しているということがわかりました。
その一方で、「でもなあ」という思いも湧いたのです。
前述したように、たしかに力のある、味わいぶかい、いい作品なのだけど、正直言うと、やっぱり映画として、もうちょっと面白くしてほしかったなぁ、と。
スパーリングのリズムに魅せられた
岸井ゆきのさんがよかった。演技力と役への情熱の熱さが伝わってきました。
なんと言ってもスパーリングのかっこよさ。あれで一気に物語に引き込まれてしまいました。
いつも頑なに自分を守ってるケイコが美しく、楽しげに、自分を解き放つ瞬間。
オーナー役の三浦友和さん。とてもよかったです。びっくりしました。
頑なだったケイコが(それでよいと思っていたケイコが)自分の身体の事情を伝えられず、思いを伝えられないジレンマにもがいて、でも意外な人がケイコに挨拶に来るところでケイコの心情が変わる場面。
あの場面でケイコはまた前を向いたのだと思います。岸井さんの表情が。なんとも。よかったです。
音楽がなく、シンプルな映画作り。その潔いよい作り方が深く刺さる映画でした。
文学小説と創り方が同じ
あしたのロッキー
なんだかふざけたタイトルになっちゃいましたが、端的に言うとそんな感想だったのでしょうがない。フィルム撮影も相まって、かなりグッときました。良い。
ケイコ(岸井ゆきの)とおやっさん(三浦友和)は勿論なのだが、出てくる人みんな良い。終わり方も「生きる希望」に溢れていて大好きでした。何よりも、フィルム撮影の質感と、劇伴も台詞も最小限(勿論主人公に至っては無い)の所での録音。素晴らしかった。色々なものが詰め込まれているが、台詞が極小というのもあってお仕着せ感はなく、自然と身体に染み込んでくる感じもエンドロール後に反芻したくなる心地よさを孕んでいましたね。
作って欲しくはないけれども、続編が出来ちゃったら必ず観に行く。そんな映画でした。
【”サイレント&センシティブ&ソウルフルなボクサー。”岸井ゆきのさんの目(目力)と表情と身体のみで演技する確かな演技力に、今更ながら引き込まれた作品。劇伴、一切なしの演出も効果的な作品である。】
■ボクシング映画が面白いのは、演じる俳優さんの気迫がスクリーンを通して伝わってくるからだろう。
だが、女性ボクサーを主役にした映画は少ない。
邦画だと、安藤サクラさん主演の「百円の恋」
洋画だと、クリント・イーストウッド・主演、監督でヒラリー・スワンクを一躍スターダムに押し上げた「ミリオンダラー・ベイビー」と、渋い所では脱北者の女性ボクサーを主人公に据えた「ファイター、北からの挑戦者」が印象に残っている。
主演した女優さんは、皆スターダムを駆け上がっている。
だが、トレーニングを含め、相当な覚悟が必要なんだろう。
■今作では、更に聾者という設定が被されている。
つまり、岸井さんは台詞で演技が出来ないわけである。
だが、今作で彼女はこの難役を見事に演じきっている。
ボクシングシーンも含めて・・。
今までは気づかなかったが、岸井さんの目力は相当凄い。
特に、小柄な彼女が”下から上”を見る時の目が凄い。
■演出面で言うと、一切の劇伴を無くした事で、ボクシングジムでミットを叩く”バシ!バシ!!”と言う音や、都会の騒音、川の流れの音がリアリスティックに響いてくることであろう。
<今作での、岸井ゆきのさんの声なき演技は、天晴というしかない作品である。
コロナ禍の寂しき風景や、脇を固める三浦友和さん、佐藤緋美さんの演技も良い。>
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■2月公開の「レッドシューズ」も楽しみである。
サブタイトルがダサい。
音が聞こえない、音を出してはいけない系の映画にハズレは少ない。観客が集中するし絵も手が抜けない。
レビューもかなりの数あるし、評価も高い。
ストーリーに目新しさは無いが、心の揺れを細かく感じられるのはやはり「音」が無いせいだろう。
ドキュメンタリーぽい距離感も良いのだ。
岸井ゆきのの成長著しい。三浦透子、古川琴音とか昔は見分けがつかなかったが3人とも良い作品に恵まれて一気に開花した感じでユマニテウハウハだ。
(3人とも事務所が同じ)
三浦友和のイケおジジ具合が良い。
仙道敦子が元気でよかった。
さらに中村優子の顔も見れてお得であった。
最近忙しくて、落ち着いて映画が見れない。
こんな時こそ映画見た方が良いと思うんだけど、心に余裕がないの、、、、。
ゆきのの魅力
タイミングが合わずやっと観れました。
楽しみにしてたんですが作品が作品なだけにセリフがあまり無い、静か、シアタルーム暗い=眠くなる。作品が悪いんじゃなく私の仕事上の問題(早起き)。
ちょいちょい寝落ちしそうになりながらもストーリーは把握。
試合は負けたという結果はわかったけど他の部分が中途半端なまま終わってしまったっていう印象。
試合後に岸井ゆきの演じるケイコと三浦友和演じる会長の多少のやりとりがあっても良かったのではないかな?と個人的には思いました。
あとタイトルに書いた岸井ゆきのさんの魅力は何なんですかね?
私にはわからないけど映画、ドラマ、CMとかなり活躍されてるし、いつもいい役やられてるな!ってイメージ。
あと昨年末にやってた「アトムの童」で中盤の話辺りから急にキレイになったんですけど
男でも出来たのかな?って思う位雰囲気変わってビックリ!
ゆきのさんも役で結構イメージ変わるなと思いました!ちゃんとボクサーになれてた!
2023/01/18
かつてプロボクサーだったわたしは「強くなりたい」とか「チャンピオンになりたい」みたいな思いはそんなになくて、単純にボクシングが楽しくて続けていたら、ボクシングがある日常が普通になっていた。ロードワークして仕事してボクシングして帰る、それが当たり前の日常だった。
世の中にあるボクシング映画は人生やら恋人やら、でっかーい何かを背負ってリングに立っているドラマチックなものばかりで、自分みたいなのからすると別世界のような気分になるものばかりだった。
この映画は、当時の自分のように、日常の中にボクシングがある、ただそれだけ、そんな1人の女の子の日常を切り取っているだけなのがとても心地よかったし、こういう映画があることが嬉しかった。
ボクシングだけではなくて、耳が聞こえないということも、彼女にとっては当たり前のこと。そういう当たり前のことを過度にドラマチックにすることなく描いているのがとても良かった。
バンテージ、わたしはネットに入れて洗濯機で洗ってたけど、ピンチハンガーに同じように干してました。
あとあの美しいコンビネーション練習を見ていたら、久しぶりにボクシングをやりたくなりました。
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