コーダ あいのうたのレビュー・感想・評価
全165件中、21~40件目を表示
話せば分かる
自分以外の家族はみんなろう者、ということは、こどもの時から、他者と家族の橋渡し役を自然に担うわけだ。本人も、その役割が当然のことと認識してしまう。負担だと感じても言えない。これは息苦しいよね。
漁師の父ちゃんと兄ちゃんは、なかなか口が悪い。意に反することには、従わない強さもある。母はルックスが良く、自意識が高いが、その分ろう者であることに引け目を感じている。社会と関わることは避け、娘に依存している。
家族のケアと学校で忙しく、自分自身のことまで気が回らないルビーは、夢や希望も持つ余裕がない。歌うことは好きだが、ろう者の家族には理解されない。音楽の先生が唯一、彼女の才能を買ってくれている。この先生、絶対ゲイだと思ってたら、妻と子がいた。勝手な想像してすみませんでした。
高校で開催されたコンサートの途中、無音になるところが出色。あと、バークリーの試験での手話、ここは泣きどころ。個人的にはデビッド・ボウイの「スターマン」のコーラス版に感動した。アレンジいいじゃん!
多少、うまく行きすぎだろ、とツッコミたくなるが、主人公の成長と、ともに成長する家族の姿に、あたたかい気持ちになった。あと、マイルズ、いいヤツだ。ルビーと彼は、一生の付き合いになるといいね。
日テレ金曜ロードショーを視聴。
立ち止まっていても何も変わらない、行動する勇気を持て
第94回アカデミー賞作品賞受賞作。家族の中で唯一健常者である高校生ルビーが夢を追っていくことで、ルビー自身と聴覚障害者の家族(両親と兄)が成長していくヒューマンドラマである。
本作で登場するのは、健常者の少女が献身的に家族を支え、家族は少女に感謝するという模範的な家庭ではない。リアルな家庭である。ルビーは家族の通訳であり続けることに苛立ち、音楽への夢をどうするか苦悩している。漁業を家業にしている家族は、当然のように遠慮なくルビーに依存する。健常者の家族のように自己主張はするし、喧嘩もする。障害者=弱者という意識は希薄であり、対等に健常者と交流する。日本との違いに愕然とする。邦画『こんな夜更けにバナナかよ』の障害者役の大泉洋の自由奔放さを思い出す。
そんな家族に変化が起きる。ルビーは新学期を迎え、突如、合唱部に入部する。ルビーは苦悩の末、夢を追う行動を起こす。顧問の先生は彼女の歌の才能を見抜き、音楽大学への受験を勧める。ルビーは両親に音楽大学受験を懇願するが、両親にはルビーの歌声が聞こえない。ルビーの歌の才能が分からない。彼女抜きでは家業が成り立たない両親は猛反対する。ルビーは夢を捨て、今まで通り家業を手伝おうとするが、兄に背中を押され、夢を掴む道を選ぶ。
ルビーが高校の音楽発表会で歌唱するシーンに、両親の想いが凝縮されている。会場にルビーの歌声が響き渡った後、暫くの間、静寂が映画館内を支配する。両親が感じている無音の世界に導かれる。両親にはルビーの声は届かない。ルビーの才能の確認はできない。しかし、両親は、ルビーの音楽大学受験を許す。ルビーの才能を信じ、ルビーの家族からの巣立ちを許す。同時に、ルビーへの依存を止め自立を目指していく。
ルビーは、音楽大学に合格する。夢への扉は開かれる。
本作は、夢を諦めず行動したルビーが自身を成長させるとともに、家族の絆を強めた作品である。行動する勇気の大切さを教えてくれる作品である。
ヤングケアラーと一筋の希望
ヤングケアラー。
近年聞くようになった言葉だけれど、問題になり始めたのが最近なだけで、ずっと昔から犠牲になってきた人はいたはずだ、と思う。
家族だから、やって当たり前。
他の人に頼むとお金はかかるし、何よりも家族の問題を他人にお願いするなんて恥ずかしい。
そんなことが当たり前だったから表面に出てこなかっただけ。
コーダ、
とは耳の聞こえない人を指す言葉。
手を自由に動かして目で見てコミュニケーションを取り合う人たち。
耳の聞こえない家族の中で、たった1人聞こえ、歌えるルビー。
「3年生の時、親の代わりにウエイターに堂々とビール2つね、と頼んでいてカッコよかった。俺はその時保護者付きだったから」
気になる男子からそう言われて、
少し嬉しそうだったルビー。
だけど、その頃から大人にならざるを得なかったことを思うと切ない。
耳の聞こえない家族と世間を繋ぐ橋渡しという役割を与えられ、そこから抜け出すことができない。
生まれてからずっとそうで、それが当たり前だったから。
新しく人を雇う余裕もない、だから、必然的にルビーが大人にならざるを得なかったのだろう。
歌の才能があっても、家族の生活のために、自分を押し曲げなければいけない。
抵抗しようとしても、大きな波にのまれそうになる。
そこで負けて折れてしまわないのが、このストーリーのいいところだ。
力になってくれる先生、友人、そして、気になる人、それでも歌いたいと思う気持ち。
気になる人が家に来ていいムードなのに、ラブラブな両親が大音量でおっ始めた時は、いたたまれなかった。
思春期にこれはキツすぎる。
でもどうか、負けないでほしい、と思った。
勝たなくてもいい、だけど負けて泣く姿を見たくない。頑張れ、と。
ヒロインのルビーが普通っぽくあるほど、この状況を打破して輝かしい未来に羽ばたいてほしい、と強く願ってしまう。
いつも少し怒っているように見えるルビー、
好きなように、思いっきり誰かに向かって歌って笑っている姿を見たい。
繊細ではない、だけどしっかり地に足をつけた歌声。
ところどころ差し込まれる無音のシーン。
どんなに聞きたくても、ルビーの歌声は両親にも兄にも聞こえない。
それでも、家族はルビーの歌を聞き、笑顔で手を叩く。
少しでも娘の声を感じようと首に手を置く。
愛の歌を、目の前で繰り広げられる美しい音の羅列を、少しでも取り入れようとする。
最後のシーン。
家族に向けた手の動きがキラキラして見えた。
声が聞こえなくても、どんなに魅力的に彼女が歌ったのか、分かっただろう。
彼女はたしかに家族のために、犠牲になってきた。
でも、それだけではない。
この話はただ見つけてもらうのを待っているシンデレラストーリーではない。
周りの人に助けられても、一人ひとりが立ち上がる、薄雲から光がさしていくような、
希望の物語だ。
観て良かった映画
家族の為に自分を犠牲にする。
そんな生活が当たり前だった今まで、彼女の才能が開花され家族が協力し合い彼女をサポートしていく。
頼りにしていた娘と離れる瞬間両親はどう思っただろう。
涙が出ました。
伝えることの大事さ 歌の素晴らしさ 家族の素晴らしさ
鑑賞後の気持ち
家族っていいなって思った
鑑賞後の心の変化
家族を大切に思うなら自分を大切に
歌ってすごい
鑑賞後の行動の変化
相手に全てを伝える努力をしようと思った
好きなシーン
お父さんたちから観たコンサートのシーン
お父さんだけの前で歌を歌うシーン
嫌いなシーン
監視役がチクったシーン
本当に感動した映画だった!!
家族の中で1人だけ健常者でだからこそ感じる疎外感や両親や兄の頼りっぱなしのところから、娘を応援しようと変化していたことにすごく感動しました!!
また最後オーディションで家族に向けて手話つきで歌っているのをみてめちゃめちゃ泣きました…😂
師弟関係もとってもよかった!という他の方のレビューみて、たしかに!と思いました〜♪
師匠が最後まで彼女の可能性を信じて説得していたのも印象的でした🌞
爽やかな潮風にのった歌声「青春の光と影」が心に響く、ルビーの旅立ちの物語
両親と兄が聾唖者のロッシ家の中で、一人コーダ(聴者)の少女ルビーが才能に恵まれた歌に未来を託す旅立ちの物語。他者から見ると、朝3時に起床して父と兄に加わり漁の仕事を熟して登校する日常は、家族の犠牲になっているのではないかと思われるも、ルビー本人は特に苦も無く家族の中の役割と自覚している。その健気さがルビー本人の性格の良さと、両親の育て方が間違っていないことを表している。実際問題として聴覚障害者だけで漁をするのは、もし事件事故が発生した時に通信できない危険性があるし、またコミュニケーションの点で、仲買人から騙されて搾取される扱いを受ける場面もある。この厳しい家業と高校生活の板挟みに会いながら常に前向きに立ち向かうルビーの青春物語は、爽やかな潮風と彼女の心の叫びを込めた歌の共感性を映像に映し出していた。
ストーリーの流れは前半が予定調和で進み、脚本としては作為が目立ちます。“起承転結”でいうと、“起承”が長く、後半一気に“転結”が押し寄せる印象を持ちました。それは、この作品で私が一番心打たれたシーンから輝きを放ちます。沿岸警備隊に通報され多額の罰金を言い渡された晩の母と娘の会話シーン。ルビーが生まれた時の母ジャッキーが抱いた偽りの無い気持ちを告白する、その内容に驚きつつ、ここに障害を持った人でしか分かり合えない過酷さがあると理解しました。ルビーとジャッキーが語る台詞が素晴らしい。この後の兄レオとルビーのシーンもいい。そして合唱発表会の場面になりますが、ここで両親の視点に切り替えた演出には、正直やられたと思いました。上手いとか、ユニークだとかではない、聴覚障害者に寄り添う演出に一時でも体験させて貰えたことに感謝したい気持ちになりました。そして父フランクがルビーの歌う喉に手を添えるシーンも感動的です。クライマックスは娘ルビーの夢を叶えるべく家族で向かうバークリー音楽大学のオーディションシーンで、ベルナルド先生の気を利かせたユーモアからの、家族の為の手話歌唱、そのジョニ・ミッチェルの「青春の光と影」の途中からその後の家族の変化をモンタージュした編集の巧さ。歌詞の言葉とルビーの想いが奇麗に重なります。それはルビーの為に作られたのではないかと錯覚してしまうほどに。
前半は教育映画のような素直な演出で、技巧の冴えはない。対して後半の演出と脚本は、良い映画を観た感動に導いてくれる。勿体ないと言えば勿体ない。それとボーイフレンド マイルズとの関係が曖昧な表現に終わり、ルビーの心の成長に関わっていない不満も残る。役者では、主演のエミリア・ジョーンズの自然で濁りの無い演技が素晴らしい。実際の聴覚障害者の俳優である、トロイ・コッツアー、マーリー・マトソン、ダニエル・デュラントは、卑猥なキャラクター付けを明るく転化していて其々に味のある演技を見せてくれる。ベルナルド役のエウヘニオ・デルべスも一寸変わった個性的な音楽教師をそつなく演じています。
この映画の良さは、どんな環境に置かれても家族の愛に包まれた主人公が自分の長所に自信を持って将来を見通すストーリーとして、名作「リトルダンサー」に類似しているところであり、幅広く観る人に清々しい感動を与えてくれる人間ドラマになっていることです。今の時代に必要なメッセージも優しく描かれている。模範的な青春映画の秀編でした。
素晴らしい映画!ハンディがあっても可能性は無限!
まず、主人公の家族皆んなが、実際の聴覚障害のある俳優が演じている事に感動した。
特に母親役のマーリーはすごく美しい人〜
反対を押し切ってまで本物をキャスティングした事は、大きな意味がある。
映画では家族の中で1人だけ健常者の主人公ルビーが、家族の通訳として欠かせない存在になっている。
家族は気にするな、自分のやりたい事をやれ、俺たちだって出来る事はいくらでもある!と、感情を露わに手話でぶつけるルビーの兄。
ルビーの首元に手を当てて、ルビーの歌声を振動で感じ取ろうとするお父さん。
最初は音大に行く事を反対していたけど、最後はルビーを応援してなけなしのお金で赤いドレスを買ってきたお母さん。
本当にみんな暖かくて泣けた。
ルビー役のエミリアもすごくかわいい!歌も素晴らしかった。
聴覚障害があると、どんな生活になるのか知らなかった。
お父さんが車でラップ音楽をガンガンにかけてて、そうか、振動で楽しむんだ!とか発見がいっぱい。
ハンディがあっても行動する勇気があれば反論もできる。仕事でリーダーになれるし、恋人だってできる。
セックスだって普通にする。
↑ここ!ハンディのある人物でここまで人生を「普通」に生きて、楽しむ事があって、仕事もして、、、
ここまで描いた映画が世に出てきた事が、最も重要だと思った!
素晴らしい映画でした!
家族4人、それぞれの心境。
家族4人の心境が良く描かれてて、心揺さぶられました。
そりゃないよーお母さん。と思う場面がチラホラありましたが、娘が産まれた時のことを話すお母さんを見て、ハッとしました。家では明るいお母さんなのに、組合の奥様方に馴染めないところなんかも意外で。私が健聴者だからですね、お母さんのこと勝手に責めてました。反省。
特にお兄ちゃんの描かれ方、良かったです。序盤に交渉を邪魔するなと妹にキレる場面がありました。一方で酒場でひとりだけ耳が聞こえない疎外感(これ見てる私まで気まずい気持ちになった)があり、最後には自分たちは無能じゃないから家族の犠牲になるなと訴える、お兄ちゃんのもどかしさが伝わってきました。
あとルビーの友だち、ビッチだけどいい子だった!
先生も最初から最後までヨカッタ。学生時代にあんなメンターと出会いたかった。
シング・ストリートに出てた彼も素敵でした。
家を出るから、一緒に仕事をしないから、だから家族を大切にしてないってことには繋がらない。(そうだとわかってても、お互いつらいよね…)大事に思い合って、これからも素敵な家族でいてほしいです。
There are plenty of voices with nothing to say.
アカデミー賞に相応しい佳作。主人公をはじめ両親、そして兄、皆んな人間臭さが全開の映画。ハンディキャップを抱える家族や貧しい家業に縛られるルビー。片や臆病さを認めつつも、漁業のしきたりを乗り越えてゆく力強い兄、父。心配性の母。最後は予定調和かも知れませんが、実話ベース、かつ演じた俳優も実際に聾唖者と、力強さに痺れます。あと、ルビーを指導する音楽の先生ベルナルドが良い。
聴こえるということ
オスカー作品賞ノミネートということを知り、半信半疑で視聴した自分をぶん殴りたい
音楽映画に求めるものとして、歌の練習シーンを何度も見せ、ラストの本番で全てを視聴でき、最高のカタルシスを生むことだが
本番をラストだと思わせて、聴こえない人の感覚を味合わせて家族の気持ちを理解し、
試験で手話ありの歌を最後に見せる
軽はずみにカタルシスを求めて映画を視聴したが
無音の空間で自分の愚かさと悲しさ、音が聴こえることの幸せを知った
エールを観ていた!
エールという映画を昔観ていたらしく、最初からこの映画見たことあったっけ?って何度もなったのだけどそれでもストーリーを忘れていたので十分楽しむ事が出来た。エールはフランス語だしこちらは英語。私は多分こちらが好きだと思う。ハッピバースデーの歌を水辺で歌うところなんて上手すぎて!!入学試験で途中手話を交えながら、家族に話しかけるように歌うシーンも涙、涙だ。この映画で感動しない人はいないだろう。青春、家族、兄弟愛、友情、教師との信頼関係、障がい者と仕事、恋、歌・・全部詰め込まれたすごい映画。
歌声はキレイ、景色もキレイ、でも中途半端。
みなさんの評価が高いのに、少しびっくり。
悪くはないが、そこまでは響かなかったです。
多分、映画の構成のせいかな。
テーマと的が絞りきれてない、ような。
主人公がいっぱいいるかんじ。
家族全員が主人公なのか?
特に前半は家族の色々がいっぱいで、
何に主体を置きたいのか、よくわからないまま話が進みました。
後半以降は学校や先生、男子生徒とのかかわり等、
とても良いテーマで気持が熱くなりました。
家族が、どうしてもだらしなく見えて、苦手です。
ユーモアがある家族っていうのかな?
だらしない、というか、下ネタもあって、なんだかな〜という印象。
そこから這い上がるストーリーにするなら、
とことん家族を酷く描いてもいいような気がします。
ところが、いい家族アピールの展開になってるし。
後半はいいかんじなんだけど、前半と分離してしまう印象。
できれば、後半をメインにした話にしてほしかったかな。
そしたら、より熱く感動しそう。
多分なんだけど、あの手の家族は、どこまでも頼ってくると思う。
それが分かるから、この先のことを考えると、可哀想。
逆に、家族をつらいけど切り捨てて、
本当の意味での自立をテーマにした話にしてほしかったかな。
(リバーの旅立ちの時みたいなやつ)
旦那と見ましたが、あちらも、あまり印象には残らなかったようです。
その先が見たい。と思ってしまった。
途中途中、ボロボロ泣いたw。
家族愛と主人公の葛藤。
兄弟愛。親の気持ち。
あったかい家族だから、
お互いがお互いを大切に
ぶつかりあってて感動
推薦してくれる先生が居て入試迄がチートだったけど、サクサク進んで見やすかった。
強いて言えば、音大行った先
プロの歌手になった所をみたいなと思った。
余韻が残る素敵な映画でした〜
下ネタ祭りあるので家族で見るには気まずいかなw笑面白かったけどね
聞こえない耳に届く最高にイカした歌声が、今日、世界の色を塗り替える
聞こえない家族の「通訳係」だった少女。
家族に必要とされながらも、自分の夢を見つけるルビー。
家族の中でただ1人健聴者である主人公は、漁を手伝いながら学校へ通う生活。
漁の中歌うことはあれど、誰にも届くことはなかった。
有名音大への進学を目指し、本格的に歌を習い始めるも、港の新規事業にも必要とされ両立に苦しむ。
家族は事業には必要といいながら、娘の夢を応援するか悩む。
そこには、歌声を聞けないことからの不安や、互いに離れきれない不器用さがある。
そんななか開かれたコンサート、ルビーはデュエットを組み、歌声を披露する。
周りの観客が心打たれ聞き入る中、ふと父親の目線に立つと際立つ疎外感。
父はここで娘の世界に歩みを寄せる。
夜風にあたりながら、父娘で話し合う。
娘が歌っている様子を賢明に理解しようと、喉に触れ、見つめる。
翌日のオーディション、ここでルビーは初めて家族へ向けて歌を歌う。
音のある世界、音のない世界、ある種異なる世界で住む家族。
しかし実際には世界は一つであり、双方が歩み寄る姿は変え難く尊く映る。
健聴者と聾唖者のすれ違い、互いに理解しようとする姿勢が表現される。
字幕をあえて使用しなかったり、コンサート中に訪れる無音の時間は一気にスクリーンに引き込まれる。
家族の視点
兄のレオが「お前が産まれる前は家族は平和だった」と言うシーンがあった。健常者であるルビーがいることによって支えられているという視点から見ていた家族の関係が、ガラッと変わった。
ろう者のみが分かる苦悩を共有できる家族に、健常者のルビーがいることで救われる部分もあると同時に負担も増えていた。
人はどんな状況でもそれをポジティブにとらえることも、ネガティブにとらえることもできるのだと思う。
ただの家族愛や社会問題を捉えた作品でなく、自分自身、物事をどう受け取って生きていくべきかについて教えてくれる映画だと思いました。
内外で対峙しなければならない苦悩。
聾啞者の両親と兄を持つルビー。自分だけ健常者というなかで通訳役をしながら代々漁師をしている家庭を支えている。
一方、歌の才能があり、合掌の先生も特別にレッスンをしてくれるほどの実力がある。
家族を支えることと、自分の夢とのはざまで苦悩するルビーが痛いほど伝わってくる。
そして、障害者だから・・・ということで慎ましく人に優しくというステレオタイプのような家庭環境ではないのがまたリアルさを感じる。
喜怒哀楽だってあるし、性欲だってあるし、欲望だってある。その破天荒ともいえる環境で世間かのからかいにも屈せず、音楽に向き合いつつ、家族を背中で説得させるルビーの強さは自分たちに勇気を与えてくれる。
母親との会話で、私(ルビー)が健常者だったら嫌だったか、というくだり。あそこは今まで閉塞感の中聾啞者として生活してきた苦悩をすべて物語っている。1人健常者がいると家庭内の様子がガラッと変わってしまうためだ。唯一の健常者に頼る家族、でも唯一の健常者だけに家庭ではマイノリティという現実。家庭内でも社会でも苦悩するルビーは人の心に訴えかけるシンガーになるだろう。
虐待に感じてしまい私には無理!
後半になって父親がルビーを1人の大人として見ようとするまで、辛くて見てられないんだが!
だって、子供がお金の心配して家族以外の大人と対峙しなきゃいけない事、時に社会の緩衝材として言葉を変えたり親以上に大人にならなきゃいけない状況。通訳として親の世話をしなきゃならず、時に親のSEX事情聞かされたりする。親たちがルビーの言葉に耳を貸さずに家族内での聾者多数で淘汰する環境、何より親たちが耳の聴こえるルビーの前で聾者以外を嫌悪してる事も、親が親であろうとしない状況を虐待に感じてしまう。
聾者やヤングケアラーと言う設定だけで飲み込めないって感じるほど、ルビーが当たり前と思ってる環境がただの子供って置き換えたら嫌だなって思えちゃう。通訳が必要とか言う前に筆談すれば?漁なんか他の船の船員と1人交換するくらい誰かに頼めないの?
オリジナルの映画「エール」では親たちはポーラの事頼りにしてたけど、ここまで無闇にって感じがしなかった。畜産農家で社会との距離をいい感じで取れてたけど、ルビーの家族の仕事は聾者対聴覚者って社会に対してまで壁を作らず子供のためにもっと適合する努力をするべきじゃない?って思っちゃうんだよね。
すごくあったかい気持ちになる
間違いなく今年見た映画の中で最も素晴らしい作品だと思う。
無音になるシーンで私は結局表面上しか物事を理解できてなかったんだなって思ったし、耳の聞こえない家族と同じように、ルビーの歌声をどうにか聴きたいと切実に思った。
家族たちの、娘の声を歌声を聴きたいという気持ちと、音楽を同じように楽しむことができない孤独、健常者との間にある隔たりをはじめて自分のことのように感じることができたシーンだと思う。
それでも最後には家族たちもルビーの歌声を手話を通してはじめて聞くことができた。この映画は、健常者の表面的な共感の限界とそれでもその隔たりを越える可能性を示していたんだと思う。
私たちがどれだけ美しいものを当然のように感じているのかを考えさせられた。
劇場にでてきた「Both Sides Now」はこの映画全体を表しているってやっと気づけた。
全165件中、21~40件目を表示