コンペティション

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コンペティション

解説

ペネロペ・クルスとアントニオ・バンデラスが母国スペインで共演し、華やかな映画業界の舞台裏で繰り広げられる監督と俳優2人の三つどもえの戦いを皮肉たっぷりに描いたドラマ。

大富豪の起業家は自身のイメージアップを図るため、一流の映画監督と俳優を起用した傑作映画を制作しようと思いつく。そこで変わり者の天才監督ローラと世界的スターのフェリックス、老練な舞台俳優イバンという3人が集められ、ベストセラー小説の映画化に挑むことに。しかし奇想天外な演出論を振りかざす監督と独自の演技法を貫こうとする俳優たちは激しくぶつかり合い、リハーサルは思わぬ方向へ展開していく。

映画監督ローラをクルス、スター俳優フェリックスをバンデラス、ベテラン舞台俳優イバンを「笑う故郷」のオスカル・マルティネスが演じた。監督は「ル・コルビュジエの家」のガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン。2021年・第78回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品。

2021年製作/114分/スペイン・アルゼンチン合作
原題または英題:Official Competition
配給:ショウゲート
劇場公開日:2023年3月17日

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(C)2021 Mediaproduccion S.L.U, Prom TV S.A.U.

映画レビュー

3.5アカデミー賞発表直後に観るのに相応しい?

2023年3月17日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

 話の筋自体は簡単なのだが、ペネロペ・クルス演じる監督ローラのやることが何かとシュール過ぎて観る人を選ぶ作品かもしれない。爆笑を誘うわけでもない、途中どこに向かっているのかわからなくなる。特に前半は振り切れ具合も中途半端なため、正直眠くなった。

 でも、バンデラス&マルティネスがラップ巻きにされるあたりから、本作が言いたいことが如実に見えてくる。それよりもっと前から皮肉の効いた設定は出ているのだが、やはり有名どころの映画賞のトロフィーが粉砕機にかけられると観ているこちらも目が覚める。このシーンをペネロペ(カンヌ、アカデミー賞、ベネチア国際映画祭で受賞歴あり)、バンデラス(カンヌで受賞)、マルティネス(ベネチア国際映画祭で受賞)がやっているのだからメタ風味もあって面白い。
 トロフィーの中にオスカー像はなかったが、さすがに遠慮したのだろうか?
 受賞したから絶対的に名作かと言うとそうではないし、受賞の有無が俳優の良し悪しを測る唯一の物差しではない。センスを賞賛され祭りあげられている監督のこだわりは、一歩引いて見れば時に馬鹿らしく見えたり滑稽だったりもする。

 さらに印象的だったのは、終盤の会見でローラが口にする「イデオロギーありきの映画評価」への批判とも取れる台詞だ。
 近年賞レースで高評価を得る作品は、必ずといっていいほどポリコレ設定という装具を纏っている。それらが駄作とは言わない。一定のクオリティを満たしたものが候補に上がってくることは否定しないが、「マイノリティを描いたかどうか」という基準に寄り掛かり過ぎていると思うことも、正直個人的にはある。
 そんな私のモヤモヤをローラが、トロフィーを粉砕しイデオロギー偏重の視点を掃いて捨てることで代弁してくれた気がした。

 また、ローラはこうも言う。「人は理解できるものを好み、理解できないものを嫌う。大事なことの多くは理解できないものにある」
 難解に感じる作品でも、「わかりづらい、だから嫌い、わかりにくいものは駄作」で放り出すのでは自分が損するだけだ。(ただ私自身は、自分が理解した〈つもりになった〉映画に対し違う見方をする人を理解不足として見下すこともよくないと思っている)ローラの言葉は、自戒として心に響いた。

 映画についての映画というと、映画って素晴らしいよね!的な作品が多い中、「本当にいい映画ってなんだろう」という問いを提示する作品は結構貴重かも。
 先日のアカデミー賞の授賞内容について、どこかしら違和感や不満があった人は、本作を観ればちょっと溜飲を下げられそうだ。
 また、俳優それぞれのメソッドやギャラの違いなどの小ネタもあり、この雰囲気自体は意外と生々しいものなのかな?と思う瞬間もあった。そういう細部を楽しむ作品なのだろう。

 ロケ地の建物などがどれも広くておしゃれで、非日常感がある。スペインかどこかの名建築なのだろうか。私は詳しくないが、建築好きな人も楽しめるかもしれない。

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共感した! 23件)
ニコ

4.5ペネロペ・クルスの頼もしい新境地。

2023年3月31日
PCから投稿

情けなく右往左往して、器の小ささをさらけ出してくれる男たちもいいが、ペネロペ・クルス演じる映画監督ローラがみごとな当たり役。思えばペネロペ・クルスは『ハモンハモン』のデビューから何度も新しい挑戦を繰り返し、ちゃんと人気も評価も付いてきた幸福なキャリアだったと思うのだが、今回の役には今までとはは別次元の自由さがあって、それをただエキセントリックになるのでなく、ムチャクチャだけと地に足がついていて、繊細でもあるという絶妙な塩梅で演じている。ストーリーを引っ張る役どころでもあり、引っ掻き回す役どころもであり、劇中の良心でもあり、同時に悪意の原泉でもあるという、よくもまあこんなややこしい役をみごとにものにしたものである。それこそデビュー時からリアルタイムで見続けてきたが、50歳を目前にしてに来て役者としての新しい可能性が開いていることに、同世代として勝手に大きな希望を感じた。

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村山章

4.0一味違うスペイン語圏のシニカルな笑い

2023年3月19日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

笑える

楽しい

ペネロペ・クルスとアントニオ・バンデラス、どちらもスペイン出身ながらハリウッド大作や欧米の合作映画にも度々起用される国際派スターだが、意外にも本格的な共演は今作が初めてなのだとか。バンデラスは自身に近い世界的に知られた俳優フェリックス役で、自信過剰な俺様ぶりを嬉々として熱演。一方のペネロペは天才監督ローラに扮し、型破りな演出でフェリックスともう1人の老練な舞台俳優イバン(アルゼンチン出身のオスカル・マルティネス)を翻弄していく過程をクールに、時にシュールに体現する。

「コンペティション」(「競争」の意味)というタイトルと、映画業界の話という事前情報から、勝手に映画祭がらみのストーリーかと思い込んでいた。だが実際にはローラと、彼女の新作映画に出演するフェリックスとイバンという3人の映画作り(とはいえ撮影に入るまでの読み合わせとリハーサルのシークエンスが本編の大部分を占める)における競い合いを指すのだろう。幾層にも重なるメタ構造も映画好きにはたまらない。俳優2人がそれぞれ演じる俳優の役で、演技スタイルも性格も水と油のフェリックスとイバンが演じるのは不仲の兄弟。そしてもちろん、本作は映画作りの映画でもある。

共同監督を務めたガストン・ドゥプラットとマリアノ・コーンは、ともにアルゼンチン出身で、1990年代後半からコンビでテレビ番組、ドキュメンタリー、劇映画をコンスタントに作ってきたようだ。スペイン・アルゼンチン合作の「コンペティション」に漂うブラックコメディ風味は、やはり両国合作だった「人生スイッチ」(製作はスペインのペドロ・アルモドバル)を想起させる。英語圏のユーモア感覚とはまた一味違う、スペイン語圏のシニカルな笑いが共通するように感じられた。

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高森 郁哉

4.5A Treatise on Cinema as Engagement

2023年3月8日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

OC recognizes the short attention span the Internet has inflected upon potential audiences on cinema as literature. It is much like The Square in terms of deadpan sarcasm on the art world. It may be the first film to include ASMR and in doing so successfully interweaves it into the story. Not only tongue-in-cheekly self-aware but aware of the frighteningly strange world this one has become.

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Dan Knighton

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