ある男のレビュー・感想・評価
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社会派とは
こういうのみたかった。背景として社会問題を扱いつつ、主張するわけでなく、でもきちんと心に残る描き方。 自我、国籍、戸籍、血脈、日常の差別、社会的な差別、死刑制度、犯罪者家族など、考えさせる要素はたくさん。 柄本明の芝居がかった演技をする芝居はやっぱりすごくて、対峙する妻夫木も大変だっただろうな。こんなに骨のある役者になっていたなんて。 真木よう子は優しいのか優しくないのか…。なんで結婚したのかな2人は。 真木よう子は両親の差別的な言動に苦笑いするだけだけど、スナックの子は店長にちゃんと反論するのがいい。いつも俯いて笑うだけだった妻夫木もハッとするんだよね。 大祐とは出会いから家族になるまでが腑に落ちる。子どももいい子だ。 血筋や家系に否定的な気分なので、こういう形の映画は新鮮で面白かった。逃れられない血筋への意識と、それを超えてつながる親子がいる現実。
私も今を捨てて別の人間として、やり直したい。
今日は映画の日で、鑑賞料が千円だったので観てきました。内容的にはまあまあ面白かった。 アクションがあるわけでなく、特にウルッとくる場面もなく、淡々とゆっくりと時が流れていく感じでした。 ま〜映画館で見るほどでもなかったかと・・ ただ、キャストは名優揃いだったの、演技はどなたも素晴らしかった! 柄本さんは、何演じさせても上手いなー! 長男役の子も良い味だしてました。 あの家庭環境であんなに素直で親想いの子に育つにはどう育てれば良いのか聞いてみたい! ところどころ差別的な場面はあったけど、物語的には必要な場面だったと思う。 私も、今の生活を全て捨てて、別の人間として生きてみたいと思ってしまった。
過去は変えられるのだよ、偽造として。
大好きな彼女や親友の過去なんて何も判らないし わかったところで嫌いになる事ではない。 過去を暴く暴露系連中とかどうでもいい。 でもその過去は必ず顔に出てしまう。 気持ちにも表情にも出てしまう。 「真実の顔」 「真実ぶってる顔」 「真実と思いたい顔」 「真実ではない顔」…more 一滴の涙すら演技のひとつ。 なので、とんでもない表情に長けた 素晴らしい出演陣を集めた。 特に 妻夫木聡 さんの意図的な嘘顔は深みを増す。 静の美学を楽しむ。 そんな作品でした。 「#ある男 」この3文字がこの物語の全て。
自分を捨てたくなる時って、切ない…。
好きな作家 平野啓一郎さんの原作で、観たい俳優 妻夫木聡さんの出演作、楽しみにしていた。 仕事帰りのレイトショーは大きなスクリーンに私も含め観客は3人だけで、内容と同じ冷え冷えした静かな空間が落ち着いた。 最初から引き込まれて、妻夫木さんの視点で鑑賞。 窪田さんの出演作は初めて観たけれど、メンタルしんどい役だなと感じた。 ここしか居場所がないと思っちゃうと、袋小路に入る。 家族や周りの人たちから嫌われないように、自分を抑えて、我慢しなきゃと思い込んでしまう。 ホントは、そんなことないのになあ…。 不愉快なことを言われたら、やめてと言う。 希望があれば、こうして欲しいとお願いする。 きき入れてもらえないなら、そこから、その人から離れてみる。 その気になれば、世界中、どこにでも、自分の居場所はあると信じてみる。 死ぬまで付き合うのは、自分だけ。 家族ですら、人生の一部でしかない。 なら、最大限、自分を尊重してわがままに生きていい。 間違えたら、謝って修正したらいい。 色々な体験をして、優しい自分も、ずるい自分も、怒り狂う自分も、情けない自分も、失敗しながら受け入れていけばいい。 だからどうか、自分を捨てないでと祈る。 妻夫木君が、ラストシーン、なんと名乗ったのかすごく気になった。 私なら・・・。
楽しくて仕方なかった。(楽しいストーリーじゃないけどね)
安藤窪田妻夫木清野太賀が期待通りで、観てて楽しくて仕方なかった。(楽しいストーリーじゃないけどね) そこに柄本の怪演となんか怖い真木。最初から最後まで楽しかったです。(楽しいストーリーじゃないけどね) 伏線が効いてて、ああだからこうなるのか、こうなっちゃうんだとすんなり来る感覚が楽しい。(楽しいストーリーじゃないけどね) エンディングは混乱するが余韻の中で考えると、あ。こういう解釈やなと思える。映画館で集中して観てほんと良かった。楽しかった。(楽しいストーリーじゃないけどね) 自分にとっての超オールスターキャストを楽しみました。今後の石川監督のオリジナルストーリーを見てみたいです。
時代にマッチしてる。すごく面白い。
面白かったなあ。 特に窪田正孝さん、深みのある演技というと欠かせないのでは。恥じらいとかそういうリアルな感情がこの人からは細やかに感じられる。 朝ドラのエールでもだけど、悶え苦しみ泣くシーンは秀逸。民放ドラマとかじゃ物足りないのでは?と思っていたら、こんなに深みのある演技を要求される映画には適役としか言いようがない。 優しいひと、というところが本当にリアルに思えるからね。 いろんな、その人それぞれの過去、背景、国籍、学歴… みんな自分が望むものでないものも背負って生まれて生きている。 そうした肩書きや、情報や、評価や、果ては言葉や目に見えるもの、当たり前かもですが、それに頼って生きてる。 そして苦しむ人も。 なりすましが多い現代社会だし。人が自分ですって証明できるものって顔とかいじったらもう無いわけで怖くなりますが。 でも自分がシンプルに行き着いたものは、 結局、信じるものは自分の感じたものだけ。 やはり何を自分が信じて、幸せと感じるか 自分の内証に、自分の声に従うしかない。 自分の中に誰もが絶対ってものはあるから。 間違うことでまたお勉強して 自分の行きたい方向に向かえるものを自分で見極める。 そうした智慧を磨いていくしかないのかな。見える何かに従いたければそれもそれで生き方のひとつだけど 時に簡単にそれが崩れる時があるから。 安藤サクラの、里枝が、「知らなくても良かったのかも」と言ったことが全てなのかもしれないと思いました。 でも、知らないと不安になるから正しかったという裏付けはやはり求めてしまうけどね。
センセイは、何もわかってないんじゃないですか?
なかなか良質なストーリーであったが、出るべき人がカットされていて説明不足感満載。(原作未読だと???ってなる) 原作を読むといろいろと補完でき、こりゃ原作を買わすためのプロモじゃないの?と思えてくる。 エピローグをちょっとひねってある。(余計) 事件があってその人物の生き様を追っていくカタチは 「ザリガニの鳴くところ」の日本版といった感じか。 正直「母性」より面白かった。
普通の仮面を持っている事の有り難さ
私は某国が大キライです。 こう言うと、私は差別主義者のレッテルを貼られるかも知れませんね? キライになった理由も、事情もあるけど、キレイな一般常識社会は其処を考慮しない。 だから外見や、出身や、経歴、立場で人を差別しません。って常識という仮面を被ってる。普通のヒトで。 酷い過去のある方なら尚更、仮面が必要。 その人が何者であるかより どんな人で、どんな性格かは 肩書きの仮面では分からない。 分からないから怖い。 だから様々な印象を判断材料として 人を視て判断しないといけない。 安全かそうで無いかは重要だから。 イケメンのヒトは良いように見られ易い。 無愛想なヒトは不気味に見える。 話して付き合っていっても解らないのにね。 良い仮面が欲しい人は沢山いるよなー。 そんな事を考えさせられた映画です。
無題
重く深いテーマを娯楽作品として見事に構築した面白い作品でした。 映画サイトも高評価が多いのだけれど、評論やレビューを読んでも具体的にこのドラマの何処が良かったのかを言及している書き込みは極端に少なく、言語化するのが難しい作品だったのかも知れません。ベースが推理サスペンス形式のドラマだったので、物語に引き込まれ面白く感じただけの人も多くいたでしょうしね。 “自分の過去を消し去りたい”というというモチーフで、私は今の日本の社会問題である“宗教2世問題”を想起しましたが、他にも“加害者家族”“前科者”や“犯罪被害者への二次的被害”等々、一度過去を全て消し去りリセットしたいというモチーフは、面白い作品が非常に多くある気がします。 その理由は何故か?なのですが、本作では柄本明の役(レクター博士の役割)がその象徴であり、いわゆる現実の人間社会は“性悪説”で成り立っているという事なのでしょう。 だからこそ更に“善”の部分が美しく感じるという事なのだと思います。
安藤サクラの演技が光る。
久しぶりに面白い邦画を観た。恐らくは原作がよく出来ているのだろう。安藤サクラの演技が光る。こんなに自然な泣き顔が出来る女優は他にいないのではないか?戸籍の売買というのは本当にこんなに簡単に(?)出来るのだろうか?
偽らないと生きられない人がいる
自分を偽らないと生きられない人間がいる。 城戸の強い叫びがずっと頭で反芻している。 その人の存在、幸せだった時間どれが事実で人を救うのか考え続けてしまう映画だった。 本作は人のアイデンティティを問う作品でその人となりどう生きたかまでが分かるほど人物の解像度が高く、迷い込んでしまった。 何と言ってもキャスト陣の掛け合いは凄まじく、窪田正孝の絶望、狂気、壊れてしまいそうなほどの脆さと穏やかさ全てが入り混じった演技は本作のMVPだったと思う。 本作の主演である妻夫木聡の哀愁、何かに囚われ続けている表情がこの映画の雰囲気を作り上げていた。 決壊した時の凄まじさが彼にしか出せない迫力だった。 柄本明の悩み続ける城戸を常におちょくり、深い闇に誘う怪演はこの映画のハイライドだと思った。 出てくるだけで凄みがあって、一気に引き締まってた。 血のつながり、その人自身のアイデンティティ、実際に過ごした時間どれが人を表せるのか最初から最後まで全編通して見る人に訴えかけられた気がした。
理解はできないけど
自分がその立場にならないと 苦痛というものは所詮は他人事 自分が自分で居たくなくても 生きる方法があるもんなんですね 自分にはどうしようもないこと ほとんどの人は黙って受け入れるしかない 苦痛を持つ人がどう感じられるのか 想像でしかわかりませんが 苦痛が和らぐのかまた重荷になるのか 私には想像でしか理解できない世界 はっとさせられたり ほうっと思わせられたり 俳優陣の腕の見せどころの 場面が多い映画でした。
妻夫木聡さんって
こんなにカッコよかったんですね。 世代じゃなくてあんまり知らなかったんですけど、若い頃とずっと変わらない感じがしました。 冒頭の絵(男が男を見てる絵)出だしは特に何も感じませんでしたが、最後にまた出てきた時印象が変わりましたね。 みんな自分より他人がよく見えるんだな、でも第三者から見ればさほど変わらないという意味かな?と思いました。違ったらスミマセン。 それでも自分じゃない人生を歩みたい気持ちわかります…。
"測り難きは人心"他人が羨む経歴にこそ闇がある... 令和版のサラリーマン"蒸発"物語の映画
とある女性が再婚するもその相手と数年後に死別。告別式にて初めて対面した親族の証言で彼が全くの別人で名を騙っていたことが解り、彼女が知人の弁護士と共に彼の正体を探っていく中でその入り組んだ複雑な事情と人間模様が明らかになっていくミステリー。 数々の文学賞を受賞している平野啓一郎さんの小説を原作に、『愚行録』 『蜜蜂と遠雷』で知られる石川慶監督の手で映画化された作品で、特にラストの主人公の人間性に観客が惑うような不穏な展開は、同じ妻夫木聡さん主演作品ということもあり、『愚行録』のそれに通ずるものを感じました。 人一人が過去を捨てて別人として生きる…というと、例えばとんでもない額の負債を抱えるとか重大犯罪を犯してしまうとか、大半の人間が経験し得ない"積み"状態の末の已むに已まれぬ究極の選択のように思えてしまいます。 しかしながら本作を俯瞰すると、人間誰しも自らの置かれた境遇に往々にして満足よりも閉塞感を見出してしまい、しかも傍から見るとそれと理解出来ないために当人が余計に孤独を深くする、という構造は遍く人間関係に存在するのかも、と思えます。 正体不明の人物の素顔を追うミステリー展開だけでもなかなかに重厚でしたが、そこに石川監督らしいモラルを揺さぶる捻りが加えられたなんともシニカルなどんでん返しも待ち構えていて唸らせられました。 いわゆる"胸糞映画"の類にも属するかもしれず、人によっては純然たるミステリー要素だけを期待して結果消化不良となるかもしれません。 しかしながら実力派キャスト陣の力演によってその出演尺に関わらず各キャラクターに奥行きが出ており、それぞれの登場人物が何故今のようになってこれからどうなるのか、といった余韻も生まれる秀作だったと思います。
役者さんが良かったです。
窪田正孝、安藤さくら、妻夫木聡とそれぞれ良い感じでした。 安藤さくらさんの普通な感じが特に良かったです。 谷口大祐(窪田正孝さん)が亡くなるまではゆる〜い空気が流れて淡々と話が進んで行くのですが、亡くなったあと、実は谷口大祐ではなかったと分かり、その謎解きが始まります。 謎解きと共に城戸(妻夫木聡さん)の話が交わりそれぞれの人生が紐解かれて行きます。 全てが終わったあとに続く物語がこの映画を強く印象付けます。良い意味でも悪い意味でも…
出自
石川慶監督作は「愚行録」から観ているので今作もいそいそと劇場へ 安藤サクラ、窪田正孝等々実力派の役者が揃うなか、妻夫木聡の大人の演技が素晴らしかった 全編淡々とした演出で進んでいくが、終盤の安藤サクラの長男の演技で涙腺崩壊! ミステリーとしても観られるが、所々入れてくる作者のメッセージに心動かされる 窪田正孝はああいう役をやると天下一品だね 蛇足だが、エンドクレジットで池上季実子の名前が、「あれ、出てたかな⁉」と一瞬思ったが、「あ、あのシーンか!」と‥(青空〜💦by北野広大)
なるほど
タイトルに引かれたです。 メイン3人の演技が素晴らしい。 終盤、弁護士事務所で城戸がテーブルを叩くシーンがもっとも印象に残った。 原作読まない派なので原作はもっと奥が深い話がいっぱいあるのかもしれないが優秀な映画だと思う。
私は何者?
【鑑賞のきっかけ】 原作は未読でしたが、既にご覧になられた方の評価も高く、ミステリ的な物語展開に興味を惹かれて、鑑賞してきました。 【率直な感想】 <アイデンティティーを巡る物語> 本作品の物語の出だしは、離婚歴があり、息子と暮らす里枝(安藤サクラ)が、谷口大祐と名乗る男性(窪田正孝)と知り合って再婚。 その後、女の子が生まれ、仲睦まじく暮らしていたところ、夫・大祐は不慮の事故で亡くなってしまう。 弔問に訪れた親族は、仏壇の写真を見て、「大祐ではない」と断言。 果たして、夫は何者であったのか? 里枝から依頼を受けた弁護士(妻夫木聡)は調査を開始するが…。 ということで、ミステリの手法を用いた物語展開はとても興味深く鑑賞することができました。 鑑賞しながら思ったことは、本作品のテーマは、「アイデンティティー(自己同一性)」ではないか、ということでした。 つまり、自らの人生をひとつの連続体として支えているもの、本当の自分とは何者であるのか、という問いかけです。 谷口大祐と思われていた「ある男」は、自らの戸籍(本名)を捨て、谷口大祐の戸籍を手に入れて里枝と結婚生活に入っていたのですが、自分の名前を捨てるというのは、よほどの理由がないと出来ることではないように思います。 私は、ネット空間では、このサイトだけではなく、読書感想のレビューを載せる別サイトでも同じハンドルネームです。 ハンドルネームは、いわば単なる符合でしかありませんが、恐らく、映画鑑賞や読書の結果として、レビューを執筆し、掲載するというネット空間での人生で、アイデンティティーを保つための手段として、同じハンドルネームを使っているのでしょう。 現実世界の私は、もちろん他人の戸籍を手にして、名前を変えるなどということは考えたことはないけれど、やはり、生まれてからずっと名前が同じということで、自分のアイデンティティーを保っているのかな、と考えています。 <アイデンティティーと対峙する登場人物たち> 名前というアイデンティティーについて、真剣に対峙してきた登場人物が、谷口大祐を名乗っていた「ある男」なのですが、本作品には、この他にも、アイデンティティーに対峙する人物が複数登場します。 一人目は、里枝。彼女は、離婚をして、旧姓に復していましたが、再婚して、「谷口」里枝として、三年を過ごしてきました。 ところが、夫が本当は谷口大祐ではなかったことで、「谷口」里枝という三年間の人生が無くなってしまった。 そこで、自分のアイデンティティーを取り戻すために、夫が本当は何者であったのか探ろうとしていると捉えることができます。 二人目は、「ある男」の正体を探る弁護士。彼もまた、私生活では、自らの生い立ちから、アイディティーに疑問を感じ、どう向き合うべきか、悩んでいるという存在です。 三人目は、柄本明演ずる、ある罪を犯して、刑務所で服役中の男。何がきっかけかは分からないけれど、アイデンティティーについて、彼なりに対峙し続け、結果として、犯罪という道を選んでしまった人物です。 四人目は、里枝の息子。少年なので、複雑な心情ではないかもしれませんが、里枝が離婚し、再婚するたびに、苗字が変わって戸惑っていた。そこへ、母が再婚した父・谷口が本名でなかったことで、母・里枝は再び旧姓に戻ると聞かされる。素朴なアイデンティティーへの不安です。僕の本当の苗字は一体何なんだ? 本作品が、娯楽性の強いミステリと大きく違うのは、上記のように、「あの男は何者?」というミステリとしての謎の周辺に、「私は何者?」という疑問を抱く複数の人物設定を施し、深い人間描写を表現する作品となっているところだと思います。 【全体評価】 娯楽性の強いミステリ作品も好きですが、本作品のように深い人間描写を感じさせるミステリも良いものです。 本当の自分というものは、いくら追い求めても見つからないもので、多くの人は、「ある男・ある女」で一生を過ごしていくのかもしれません。
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