ラストナイト・イン・ソーホーのレビュー・感想・評価
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大好き
やっぱりおもしろい!この映画は私が見た2021年の中で間違いなくナンバーワンの作品。時代背景もいいが、やっぱり音楽と映像とのマッチ具合がたまらない。単純にオシャレ!カッコいい!テンションが上がる!映画を見終えた後の高揚感は本当にすごかった!撮り方も最高にカッコいい!ストーリーも最後で裏切られる感じがしていい!やっぱりこの映画を1番に見てほしいのは新しく生活が始まる人。中学、高校、大学の入学や、社会人になる時、引っ越しをするときなど。大きく生活が変わる瞬間の人に見てほしい。頑張ろうと思えるし、人は見かけによらないと改めて思えるし本当にいい。サウンドトラックもめっちゃらかっこいいんでSpotifyとかで探して見てください。
アニア・テイラー=ジョイの存在感
アニア・テイラー=ジョイはこういった超自然な美女役がものすごくハマりますね。人間じゃない感じ笑。
オカルトにしてはまあまあ面白かったですね。
私は基本的にオカルトは好きじゃないんです。どんなに理屈が通らなくても文句のつけようがないから。いかに理不尽であっても「オカルトですから」が免罪符になる。
この映画で言えば、主人公だけが”力”を持ってて「幻影」は彼女にしか見えないって設定もなんだか。あばあちゃんの言った”力”って伏線だったのかよ?! そのせいで「急に都会に出たので神経病んだ」みたいに勘違いされちゃってドツボにはまる、ってとこはトワイライトゾーンみたいで面白かったけど。
そして最も騙されたのは、エリーに幻影として見えているのが「誰にも知られていない*事実*」だと思っていたら、事実ではなかったこと。殺されて幽霊になってると思しきサンディは死んでもいないし、殺した側じゃないかよ(生霊か? だからどんでん返しになるんですが笑)。それはだまし討ちだろ? 「オカルトですから」何でもありなんですね。「私はある意味あの部屋で死んだのよ」そうですかはいはい。
....まあ、そういうところを突っ込む映画ではないのかもしれませんね。若干期待が大きすぎたうらみもあります。映像美とか音楽とか、そういったものを楽しめばよいと。オカルト嫌いは個人的な趣味なので。
エドガー・ライト監督も私の中では特に可もなく不可もない凡百の監督。特に感銘を受けた映画もない。あ、「ショーン・オブ・ザ・デッド」は面白かったな。あれはサイモン・ペグがいいんだ。
MYタイムループ系🎬ベスト10入り確定!
60年代の音楽が全編に散りばめられ、それぞれの曲がストーリーとリンクしながらタイムループする展開に脱帽。 下宿先の大家さんは、元ボンドガールなので、007の看板を映したのは、監督の遊び心なのでしょうね。 当時の出演シーンを観ると意外にサンディーと似ているのは気のせい? エドガー・ライト作品は、制作過程も気になるので、BDに収録されているメイキングを観たくなりました。 MYタイムリープ系🎬ベスト10 1.バックトゥザフューチャーシリーズ 2.ターミネーターシリーズ 3.ラ・ジュテ 4.12モンキーズ 5.インター・ステラー 6.LOOPAR/ルーパー 7.ラン・ローラ・ラン 8.ラストナイト・イン・ソーホー 9.サマータイムマシン・ブルース 10.TENET/テネット
素敵っ!
最初から最後まで目が離せない。 心を掴んで離さないとても素敵な映画でした。 まず音楽が素晴らしいし、映像も斬新。 物語も夢見るティーン映画のように始まり、 60年代と交錯するファンタジーから ホラーに変わり、 何度も味の変わる飴玉のような 何度も色の変わる花火のような素敵な映画でした。 最近有機ELに変えたのだけど、 これで観るとくっきりし過ぎて違和感を覚えて たのだけど、 ラストナイトインソーホーは自分的には しっくり来て映像も最先端を行ってるのか? エドガーライトは!と感服致しました。 ホラーミステリーなラストは誰が誰で どう言うエンディングを迎えるのか? とオープニングには想像もつかなかったラストまで ドキドキしっ放しでした。 主人公2人も可愛いらしくて素敵だけど、 マットスミスもミステリアスでスーツがビシッと 決まっててカッコよかった。
おしゃれで華麗で、音楽が良いホラー映画
1960年代のナイトシーンとアニャ・テイラージョイが凄くマッチしていました。 特に前半の自信満々なダンスシーンとオーディションの歌声は必見です。 ホラー単体としての怖さはあまりありませんが、それ以上に喜怒哀楽をここまで感じられるホラーはあまりないような気がします。 最早ホラーなのかサスペンスなのかファンタジーなのか難しいところです笑。視聴後の満足感は高かったです。 今作は1960年代の話ですが、現代でも邦画業界で女優さん側からこういった告発があったばかりなので、改めて考えさせられる内容でもありました。 ホラー好き以外の方にもオススメできるおしゃれで華麗なホラーでした。
ラストナイト・イン・ソーホー
ホラー映画なのか…?映像美と圧倒的な世界観でホラー映画という事すら忘れる。 まず、主演の2人がめちゃくちゃ可愛い。それだけで目が引けるのにネオン街なんてもう反則でしょ。 圧倒的、美。 「怖い」と言うよりは「不気味」の表現のが合うかなぁ? テンポも悪くなく、飽きずに楽しめました。 ※批評には個人の価値観が含まれるのでご了承ください。
見える人の青春とはこんなにも大変なものなのか
拡張現実のようにあちらの世界とこちらの世界が重なって見える不幸のことなんですが、自分が実際こんな目にあったらすぐさまゲームオーバーになってそうです。 ネタバレなしではこんなことしか言えませんが、殺伐とした話なのに不思議とホッコリするのは登場人物がなんだかんだでいい人ばかりだと感じているからなのでしょうか。 親切な少年や気に入ってくれている先生だけでなく、マウントモンスターのルームメイトでさえなんだかんだで主人公のことを気にかけているのをわかってるようですし。 主人公のパワーの源泉が憧れということもあり、ポジティブに傾くと凄いことになります。 こういうのもお母さんの影響なんでしょうか(紙一重な感じもしますが)。 それにしても初老の男性に対する思い込みが酷い・・・
音楽いいッスね〜(◠‿・)—☆
霊感少女エロイーズが過去に生きる悲運な少女サンディとシンクロ、ホラー要素ありの「タイムスリップ謎解き」といったところ。 終盤にすべてをひっくり返す展開は秀逸。 2人が瞬時にスイッチするテクニックもお見事。 (でもメイキングを見ると萎える) 「ダンス天国」「恋のダウンタウン」60年代の音楽がこれも良い。 主人公の能力にまだ語れるエピソードがありそうなので、「霊感探偵エロイーズ」シリーズにならないかなぁ…
メンヘラ・タイムリーパー
昔、近所のパブで奄美大島から上京したばかりのバイトの女学生と知り合った。 いかにも島出身って感じで、純朴で可愛らしい娘だった。 店が閉店となり、数年疎遠となったが、急に連絡があり久しぶりに再会する事となった。 駅前の待ち合わせに現れた彼女は、15キロ増量しており、化粧も服装も「場末のスナックの激安姫」のように激変していた… 聞けば、疎遠の間に悪い男に弄ばれ、我に帰れば近所の公園で這いつくばって砂を掻きむしっていたりと精神を病み、入院していたのだと… 君は都会に向いてない、田舎に帰りなさい! と諭し、その日以来会ってないので彼女がその後どうなったかは分からない。 本作を観賞しながら、そんな思い出が甦った… あ、とても面白かったです、流石エドガー・ライト!! ′6~70年代ジャッロ系作品の再構築なので シン・ジャッロ ですな!
これはおもしろい!怖くないよ!
ロンドンの古い街並みや音楽、時代背景、使う小物もデザインも、胸がときめいた。 何よりストーリーが奇想天外。 主人公が恐れていた幻影たちは、彼女を脅かすものではなかった! 真の犯人はこの人だったのか!! あーおもしろかったー ホラーだけどそこまで怖くないので見てみてください。
最悪版「魔法にかけられて」
事前情報として、日本公開当時に注意喚起のツイートが回っていたことだけ
内容としては男性による女性に対する性的搾取が色濃い作品のため、性的被害にあった被害者はフラッシュバックに気をつけろ、というもの。
性的被害で嫌な思い出があるからこそ見なくちゃ、と思い、これは一種の自傷行為のようだな、と思いながら見た。
ネオンの鮮やかさと女の子たちの美しさ、そのコントラストとして彼女たちを性的搾取する男どもの醜悪さがえぐすぎる
田舎からデザイナーを夢見てロンドンに向かったうら若き女の子エリーが主人公なんだけど
彼女が60年代デザインの系統がすきなこと、田舎だから有名ブランドの実習経験もないのもあって、
入寮早々都会育ちの同級生に服もばかにされるし田舎なこともばかにされるし、
タクシーのおやじは田舎出の女だからと馬鹿にしたクソセクハラをかますしで
私は田舎コンプレックスなのでめちゃくちゃキレてた
タクシーのおやじもといいや~なナンパ巻くために適当なお店にはいって時間をつぶしお店の外に対象がいないか確認するとかだいたいの女性は経験あるでしょ
時間は有限なのに人の人生の邪魔すんじゃねえ
田舎から出てきて同年代にも芋っぽいと馬鹿にされる子が素敵な女性に魅せられてどんどん綺麗になっていくという、
女性版マイフェアレディ展開が大好きなんだけど中盤まではまさにそれで最高
私はプラダを着た悪魔とかも大好き
エリーが美しくなるきっかけとなるサンディがほんとうにきれいで美しくて、
でもそのサンディにあこがれるというよりサンディまんまになるエリーに可愛いけれどぞっとする違和感を感じさせるところがすごい。
冒頭からわりとそうなんだけど、明るくテンションのあがるような曲たちとエリーの身の置く環境の気まずさ、
綺麗になってだんだんサンディになっていくエリーとその違和感、
中盤サンディが Land Of 1000 Dancesとともに踊るシーンの明るさと死んでいくサンディ、
ずっと音楽の明るさと描かれてる状況のちぐはぐさが気持ち悪くてすさまじい
エリーがあこがれていた60年代ロンドンの実際がサンディの生きていた時代というのもなんともつらい
部屋を通してサンディの体験を追体験していく際に最初はジャックとの駆け引きを楽しんでいるような恋をしている乙女を感じさせるところが見てて辛すぎた
大人からみるとそんな都合のいいことあるわけない、搾取されてるだけなことがわかるから
ジャックは今でいう夜職スカウトマンみたいなもんだよな
夢をみてこちらにきた女の子に恋愛枕営業みたいなことして性欲を満たすだけ満たして働かせて自分はそのお金で生活してるヒモなのあまりにもクズすぎてびっくりした
これ書きながらジャックとの出会いの場面を見直してるんだけど、
サンディの魅力を見出したのではなくワンチャン抱けて金にもなる女、だろうし
サンディが惹かれるきっかけになったかもしれないクソおやじを殴るシーンもサンディを侮辱されたからではなく自分がヒモであるという図星をつかれたから、なんだよね
吊り橋効果もあるし、地下の暗から光まぶしい地上まで手を引いて連れてってくれるのってずる過ぎる
俗説かもしれないけど人間は好意的感情を抱いている人間に対して眩しくみえるというのをどこかで読んだことがある気がする
ソースは探したけど見つけられなかった
ところで夢の中で処女喪失するの嫌すぎない?ジャックを演じたマットスミス自体はドクターフーが好きなのもあって大好き
死にたくなるような、というか過去に殺したころの自分のような子があの頃の自分と同じ部屋に住みだしたら結構つらくない?見てるのもつらい
あのときのサンディにエリーみたいな子がいてくれたら、と思うけどどうあがいてもサンディの過去は過去のことでしかなくて
過去の人間を救うことはやっぱりできないんだよな、できたとしても自分にしかできないと思う
過去の感情を清算できるのは自分でしかなく、ずっとその経験に苦しめられ続ける
忘れたり少し軽くなることはあってもその経験を完全に消すことはできない
だからエリーがサンディを救うことはできない
でもエリーがそうならないように、手遅れにならないように自分を守ることはできる
幸いエリーにはおばあちゃんも彼氏もいて、誰もいなかったあのころのサンディとは違う
作中で鏡がいろんな用途で出てくるけど、刑事さんが鏡を見ろ、といったその中にいるエリー、鏡を見なかった世界にいるサンディ、
エリー側はまだ間に合う側だとすると、心を病んで自殺した、鏡の中にいる母親も同じように手遅れになってしまったのかなと思う
母親のエピソードが語られてはいないけどもしかしたらロンドンにいって同じように搾取される側になって心を病んで死んでしまった、はありそう
あの部屋で殺された男たち、救ってほしくて、サンディを殺してほしくてエリーに助けを求めているのであればあまりにもお門違いのボケカスすぎる
死んで当然ぜってえ助けてやるもんかと思ったしそのまま死んだほうが社会のためにもなると思う
あの嘘っぱちのオーディションのランウェイでサンディが歌ってい恋のダウンタウン、
サンディの歌をちゃんと聞いて、魅せられていたのはエリーだけで
ジャックもオーナも聞いてなかった恋のダウンタウンを最後エリーの最高のランウェイで流れていたことに気づいて
ようやくあの時のきらめきを昇華できたこと、サンディが望んだ舞台に連れてこれたようでうれしかった
ところで排水溝からにおいがってもしかして死体があるからってこと?
リンジーは言葉足らずだと思う
おしゃれなタイムトラベルから、ジェンダー問題を絡めたホラー、伏線を徐々に回収しサスペンス。最後は友情・愛情・成功譚と。
1本に映画にして、非常に満足感のある映画だった。
タイムトラベル初期のわくわく入れ替わり表現。
鏡や見切れを使ったサンディとエリーの入れ替わり。
テンポ良く進むかつ、おしゃれでこれだけでも、ずっと見てられる!
劇中でも目覚めたけど、まだあの夢を見ていたいって掛け布団をもう一度被るシーンがあったけど、まさにその気持ち。
ああ、気持ちいい!最高!
からのもうあの夢なんか見たくない!ってかあの家に帰りたくない!っていう
真逆の方向転換。
サンディの辛さ、サンディを苦しめた人たちの惨たらしさ。
特殊な力を通して直にその辛さを味わうエリーの気持ちが、見ているこちらにもダイレクトに恐怖を感じた。
エリーがラストシーンを過ごして周りの人と上手くやっていけているといいな。
ジョンはもちろんのこと、ジョカスタだって、少しやっかみがすぎるだけで、そんな悪い人じゃないと思うし。
純朴な少女が魅せられて、見せられて
自宅で動画配信サービスを利用して視聴しました。
ベイビー・ドライバーを見てから、エドガー・ライト監督の作品を追いかけています。
田舎で育ち、1960年代に憧れる幽霊が見える少女が、デザイナーの夢を叶えるためロンドンに上京。ロンドンの環境に慣れない主人公は、ワンルームを借りて生活することに。そのワンルームで、1960年代を生きたとある女性の生きざまを体験する。
エリーがサンディの経験を追体験することで、現実世界での情緒に影響を受けている部分は、見ていて楽しかったり、とても心苦しくなったりしました。サンディが夢の第一歩を踏み出すシーンなんかは明るい気持ちにもなれましたが・・・。
現代でジャックだと思っていたお爺さんが、実は元警官だったというのは、なんとなく展開として読めていた気がします。サンディやエリーが自暴自棄になったり精神的に追い込まれていく場面の表現は、エドガー監督らしい表現だった気がします。
事実を知り、大家さんに階段で追い込まれているシーンの演出には少しくどさは感じましたが、部屋に逃げ込んで電話を架けるのを邪魔される部分は息を呑む表現でした。男性の幽霊達が訴えかけてくるシーンは、自分としては、幽霊達はそう思うかもな、とハッとさせられましたし、サンディもお前らも自業自得だろ、というとても複雑な気持ちにもさせられ、いいシーンだったと思います。
最終的にエリーは立ち直りロンドンの生活にも馴染んだ様子でしたが、あのような女の子があれだけの経験をした中で、どのように生活に戻れたのかが結構気になりました。そこの部分も見たい気がしますが、それはそれで蛇足感もありそうです。
全編を通じて、見る人によってはエリーにイライラするかもしれないな、と思いました。ジョンがいい奴で完全に清涼剤ですね。
この作品を見て、やはりエドガー・ライト監督はイギリスや音楽が好きなんだな、と改めて感じました。ベイビー・ドライバー程ではないにしろ、音楽の使い方に特徴ある作品だと思います。
サンディ、エリーともに、女優さんがとてもきれいな方でした。
スウィンギング・ロンドンの亡霊
正しく60年代のロンドンを舞台にした物語かと思いきや現代的風景とヘッドフォンをしていたり旅立つまで気付かずに勘違いしながらの鑑賞、典型的な性悪女とその集団の可愛く無さ加減にどこまでも優しく寄り添うナイスガイ、60年代の文化やファッションを愛する割にVansのスニーカーは致命的!? スウィンギング・ロンドンを象徴する俳優でもあるマイケル・ケインよりテレンス・スタンプを起用する粋な計らい、ヒロインでもある二人の若手女優トーマシン・マッケンジーとアニャ・テイラー=ジョイは勢いのある新鮮味とキュートさが効果覿面、エドガー・ライトの多様なジャンル性はサイコホラーへと単に例えるならヒッチコックやデ・パルマ、エロイーズの幻影はロマン・ポランスキーの『反撥』を想起させられる。 理想と現実の乖離、女性への搾取、亡霊となった男どもが助けを求める図々しい態度、今の日本映画界の問題に通じる物語とタイミング的に今時分での公開が望ましかった!? 個人的にはニコラス・ウィンディング・レフンの『ネオン・デーモン』と似た雰囲気を感じながらも、その領域には達しないエドガー・ライトの凡庸性、は言い過ぎか??
ある夜、ソーホーで
見る前は昨秋同時期公開の『マリグナント 狂暴な悪夢』と混同してしまった。
夢か現か、精神を病むヒロインを主人公にしたホラー。
実際見てみると、全くの別物。
あちらはジェームズ・ワンがエンタメ性に寄ったバイオレンス・ホラーなのに対し、こちらは鬼才エドガー・ライトのハイセンスさが光るサイコ・ホラー。
ファッション・デザイナーを夢見てロンドンにやって来たエロイーズ。
ソーホー地区にあるデザイン学校に入学し、憧れのロンドン生活を満喫…の筈だった。
内気な性格で寮暮らしに馴染めず。田舎出身で60年代ファッション好きの彼女をルームメイトらは小馬鹿に。(ジョカスタ、マジムカつくヤな女!)
ある夜、不思議な夢を見る。そこは、60年代のソーホー。
とあるクラブへ足を踏み入れると、彼女の姿は別人に。歌手を夢見るサンディと身も心もシンクロし…。
現実世界では冴えないが、夢の中では真逆に。
誰だって妄想ぐらいした事あるだろうし、映画のネタとしてもそう目新しいものではない。
が、ライトはそれを実に刺激的に料理。
現実世界の内気さとは打って変わって、夢の中のサンディは自信家で小悪魔な魅力。
夢の中の“彼女”に憧れ、彼女をイメージしたファッションをデザインし、彼女のようなブロンドヘアにイメチェン。
ようやくロンドン暮らしに馴染み、夢へ歩み始めたかと思いきや…。
サンディは単なる夢の中の憧れの産物か。
にしては、妙にリアル。時々見てても、エロイーズのパートが現実なのは勿論だが、サンディのパートも単なる夢の中の話には思えなくなってきた。
ある夜エロイーズは、サンディが殺される夢を見る。以来、不気味な亡霊や幻覚を見、精神が蝕まれていく。
そんな精神状態の中でエロイーズは、サンディが60年代のソーホーに実在した女性である事を知る。
夢を通じて、同じ場所の異なる時代で繋がれたうら若い二人。
サンディは殺された。そしてその凄惨な事件の真実を知る事に…。
元々人には見えない“何か”が見える不思議な力があるエロイーズ。その力で度々、鏡の中に自殺した母の姿を見る。
彼女が60年代のサンディを見るようになったのは、寮を出てからの古い下宿での一人暮らしを始めてから。
厳格な老女が大家。昔から多くの若い女性がここに住んでいたようで、その中にはサンディも…?
唐突で非現実的な設定ではなく、前振りや伏線を貼り、奇妙な体験にリアリティーをもたらしている。
シンクロは深くなり、夢と現の狭間が分からなくなり…。
毎夜夢に見るサンディは、過去からの助けの声なのか…? 現実世界で見る亡霊の幻覚は何なのか…?
夢か現か見る者を翻弄させ、夢は過去の現実だった。
その現実(リアル)で起きた殺人事件。
サンディや事件の真実はなかなか衝撃的。
新作発表ごとに才気が弾けるライトの巧みな語り口に引き込まれる。
本当にライトの進化には驚かされる。
『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!』『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』ではコアな映画ネタのコメディで映画ファンをニンマリさせたかと思えば、前作『ベイビー・ドライバー』では抜群の音楽センスとそれに完璧にシンクロしたカー・アクションが素晴らしかった極上快作。
『アントマン』の監督降板は残念だったが、お陰で自分の作りたい作品の中で自分の手腕や才気を十二分に発揮していく。
次ライトはどんな作品で魅せてくれるのかと思っていたら、びっくり変化球!
60年代のロンドンを舞台にしたキャリア初挑戦のホラー。しかも、これまでのユーモアを一切排し、シリアスでダーク。
しかしそれでも、自身のセンスと嗜好を濃縮。
本作は、ライトが愛してやまないという60年代英国カルチャーをたっぷりと投入。
あの時代にタイムスリップ…なんて、その時代を知らない私が知ったような事は言えない。
が、赤、青、闇…光と影を駆使した鮮烈な映像美。
クラブなど60年代を再現したセット、本当に60年代のような雰囲気が感じられる街並みのロケ。
妖しくも美しい世界観に魅了される。
主人公はファッション・デザイナーの卵。お洒落な60年代英国ファッション。その相乗効果もあって見所の一つであり、衣装もヘアメイクもキャラを表す重要要素。
『ベイビー・ドライバー』に続き、劇中彩られる楽曲の数々。私は音楽に疎く、60年代英国音楽なんてまるで知らないが、ライトが厳選チョイスした音楽センスには虜にさせられる。本当に今回も、展開や作品世界やキャラの心情とベストマッチ!
衣装や音楽のみならず、今回も健在の映画ネタ。
作品自体、60年代英国サイコ・スリラーからインスパイア。他にもオマージュや小ネタが満載だという。
個人的に楽しませて貰ったのは、『007』ネタ。夢の中で60年代にタイムスリップした時、劇場に『サンダーボール作戦』の看板。クラブで“ヴェスパー”という名のカクテルを注文し、バーテンダーは“ジェームズ”。一人暮らしを始めた下宿の大家老女は、『女王陛下の007』のボンドガール、ダイアナ・リグ。
ひょっとしたらこれが縁で、ライトが次の『007』の監督になったり…?
そうなったら楽しみだが、コメディ、SF、アクション、ホラー、ドキュメンタリーと多岐に渡るジャンルを手掛け、次は…?
ちょっと期待したいのは、ミュージカル。楽曲センスは申し分なく、劇中でも開幕歌って踊るエロイーズやクラブの舞台で歌唱パフォーマンスを披露するサンディなどのシーンからかなり期待出来そう。MVも手掛けているという。どうでしょう、ライトさん…?
何はともあれ、ネタが尽きない監督である。
トーマシン・マッケンジーとアニヤ・テイラー=ジョイの若手二人にパーフェクトKO!
田舎から出てきたばかりで垢抜けないナチュラルなマッケンジーのキュートさ! ジェニファー・ローレンス似の都会に感化されたイメチェン。精神状態破綻寸前の渾身の熱演。『ジョジョ・ラビット』で見る者を魅了した彼女がまた一歩、飛躍。
当初はエロイーズ役だったらしいが、結果的にサンディ役で良かったと思う。妖艶で自身に満ち溢れていて、男たちを魅了。謎めいた佇まい。それらがアニヤのビジュアルにピタッとハマり!
甲乙付け難く、ライトの才気と共に、この二人の存在が作品をより魅力的にしている。
若手以外でもいぶし銀のテレンス・スタンプら英国名優キャスティングにライトのこだわり。中でも、大家老女=ミズ・コリンズ役のダイアナ・リグが場をさらう。オチ含め重要キャラ!
さて、そのオチ。感じた事も兼ねて、ネタバレチェックをして、触れたいと思う。
その昔、殺されたと思われたサンディ。当時を“よく知る”ミズ・コリンズが衝撃の真実を明かす…。
実はミズ・コリンズこそ、サンディ。サンディは殺されたのではなく、生きていた。
いや寧ろ、事件の被害者ではなく、事件の犯人。
自分を食い物にしようとする男どもを次々と、この下宿の今エロイーズが住んでる部屋でめった刺し。
亡霊はミズ・コリンズに殺された男たち。未だ成仏出来ずこの世をさ迷い、エロイーズに助けを乞う。
ミズ・コリンズの刃はエロイーズにも向けられる。
夢の中でシンクロして、時を経て奇妙な繋がりを持った二人。まさか、殺すか殺されるかのショッキングな展開に…。
…と話の流れはそうだが、私はちょっと別の印象も受けた。
ミズ・コリンズ…つまり、サンディも“被害者”なのだ。
歌手になるという夢を見て、このロンドンにやって来たサンディ。
そんな彼女をたぶらかし、娼婦の仕事をさせたクラブのポン引き。
そんな彼女をお楽しみ目的で買った男ども。
多くの人を殺めたサンディの行為は許されるものではないが、男どももゲスい。
エロイーズもそうなってたかもしれない。
これは突飛な解釈かもしれないが、精神錯乱状態に追い込まれながらも、エロイーズがミズ・コリンズと同じ過ちをしなかったのは、過去からのサンディの声。警告や助けでもある。
ラスト、炎に包まれゆくミズ・コリンズは哀しく憐れ。
でも、これでやっと彼女の哀しみと憎しみに終止符が。
数奇な運命で異なる時代、同じ場所で繋がれた二人。
私の中のもう一人の私。
光と影。
魅惑と背徳。
最後はしっかりヒロインのサクセス・ストーリーとして締めて、意外や後味も良し。
ライトが誘うきらびやかでめくるめく60年代ソーホーの夜に酔いしれる。
2022年 73本目
人によって賛否が別れる作品。 サスペンスではあるがハラハラドキドキはない。 中盤までは都会に憧れる少女の話で少し退屈だった。ベイビードライバーは傑作で劇中に流れる音楽もストーリーも素晴らしく今作に対する期待が上がってしまいました。
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