3つの鍵

劇場公開日:

3つの鍵

解説

「息子の部屋」でカンヌ国際映画祭パルムドール、「親愛なる日記」で同監督賞を受賞しているイタリアの名匠ナンニ・モレッティが、同じアパートに住む3つの家族の素顔が、ひとつの事故をきっかけに次第に露わになっていく様子をスリリングに描いた人間ドラマ。

ローマの高級住宅地にあるアパートに暮らす、3つの家族。それぞれが顔見知り程度で、各家庭の扉の向こう側にある本当の顔は知らない。ある夜、3階に住むジョバンニとドーラの裁判官夫婦の息子アンドレアの運転する車が建物に衝突し、ひとりの女性が亡くなる。同じ夜、2階に住む妊婦のモニカは陣痛が始まり、夫が出張中のためひとりで病院に向かう。1階のルーチョとサラの夫婦は、仕事場で起こったトラブルのため娘を朝まで向かいの老夫婦に預けるが、認知症の老夫と娘が一緒に行方不明になってしまう。

イスラエルの作家エシュコル・ネボの「Three floors up」が原作で、デビュー以来オリジナル作品を手がけてきたモレッティ監督にとっては初の原作ものとなった。出演はマルゲリータ・ブイ、リッカルド・スカマルチョ、アルバ・ロルバケルら。

2021年製作/119分/R15+/イタリア・フランス合作
原題または英題:Tre piani
配給:チャイルド・フィルム
劇場公開日:2022年9月16日

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

受賞歴

第74回 カンヌ国際映画祭(2021年)

出品

コンペティション部門
出品作品 ナンニ・モレッティ
詳細情報を表示

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画評論

フォトギャラリー

  • 画像1
  • 画像2
  • 画像3
  • 画像4
  • 画像5
  • 画像6
  • 画像7
  • 画像8
  • 画像9
  • 画像10
  • 画像11
  • 画像12
  • 画像13
  • 画像14
  • 画像15

(C)2021 Sacher Film Fandango Le Pacte

映画レビュー

3.5あらゆる世代を網羅した物語構造

2022年9月24日
PCから投稿

あらゆる物語の構造はどこか建築物とよく似ているものだが、複数の家族が登場するこの映画は、さながら彼らの暮らす住居そのままに”集合住宅”然とした作品と言えそうだ。はじまりは夜間に起こったひとつの衝突事故。でもそこからお互いの家族が密に絡まり合うというよりは、むしろ3つの家族のオムニバスのように話は展開していく。その登場人物を紐解くと、生まれたばかりの赤ん坊から高齢の夫婦に至るまであらゆる年代が満遍なく散りばめられていることがわかる。その上、物語もクロニクル的に進んでいき、子供から青年へ、若者から中年へ、中年から高齢者へと各々が一つ階段を登っていく姿に、なんとも言えない時の儚さを感じたり、はたまた彼らの成長が愛おしく思えたり。中盤のスキャンダルをいかに受け止めるかで評価は大きく変わりそうだが、個々の集積によって「人生」を浮かび上がらせる構造には見応えを感じるし、ラストの余韻も上質な香りがする。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
牛津厚信

3.5最後の最後まで見せるのだが

2024年10月28日
Androidアプリから投稿

いろんな人たちを描いても、ごたつかずにみんな同じくらいに気になるものすごい上手い進め方なのに、最後の最後は腑に落ちないかな。監督はずっと全員に同じ愛情を注いでたのに、ダンスはドーラにしか関わってなくない?突飛な物を取り出すにしてもせめて全家族に関わるものにすればよかったのに。これでちょっと温度がさがってしまったけどまあ素晴らしい映画でした。登場人物がいけ好かないのはあるけど、それも含めて良い映画。キホン誰にも感情移入できないけどルーチョよ、お前のっぴきならない事情みたいに子供預けたけどジム行ってただけじゃん。みんな心に病を抱えた人たちだったけどコイツが一番重症かも。あとアンドレア、どれだけ酷い虐待を受けたかと思ったら、ただの厳密な父親と過保護過ぎる母親、こんなの世界にはいて捨てるほどいるよー、刑期終えても大人になっても全然成長しない。こういうヤツほんと困る。という鼻持ちならないヤツばかり描いてるのに見せるのはさすがですモレッティ監督。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
三毛猫泣太郎

3.5騒動ばかりのアパート

2024年9月28日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

マルゲリータブイ扮するアパートの3階に住む裁判官ドーラの息子アンドレアが酒酔い運転で事故を起こし女性が亡くなってしまった。 アパートに住んだ事があるのは学生時代だったからアパート暮らしの様子は余り分からないけど、東京では隣近所は全くかまわなかったな。今回のアパートでも挨拶する程度じゃないかな。娘を預けられた老人がボケ老人だったから災難だったね。普通ではボケてるかどうかは分からんもんね。娘を預けといて怒る父親も勝手だな。 酒酔い運転で人を殺して裁判官の親に乱暴する息子もなんともならんし、兄を憎む弟やらまあ世間はいろんな人がいるからさ。それにしても騒動ばかりのアパートだ。映画としては良く描かれていたよ。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
重

3.5報い

2024年8月21日
Androidアプリから投稿

原作はイスラエル人小説家エシュコル・ネヴォの『三階』(未読)で、欧米ではベストセラーにもなっているらしい。ナンニ・モレッテイ初のナットオリジナル脚本と聞いて観てみた、ローマにある同じアパートに住む3組の中流家庭を描いたヒューマンドラマである。モレッティ曰く「この映画は、私たちの家庭の壁の外に存在する外の世界へ、心を開くよう誘っているのです」だそうで、おそらくコロナ禍等の影響により外界コミュニティとの関係が希薄となったローマ人たちの心の扉を開くために撮られた作品であろう。 映画冒頭、3階に住む裁判官(モレッティ本人)家族の酒に酔ったバカ息子の運転する車が、アパート1階の壁に突っ込み開けた“大穴”。それがモレッティのいう、外界に通じる“抜け穴”だったのか、それとも外からはまったくわからなかった住民たちの生活を露出させるための“のぞき穴”だったのか。監督はこの大穴を前者のメタファーとして演出しているが、どうもイスラエル人作家による原作小説は、後者的意味合いの強い暗いトーンで終わっているらしい。 小学校に通う娘が、シッター代わりに預けていた隣のボケ老人にイタズラされたのではないか、という猜疑心に苛まれる自営業のルーチョ(リッカルド・スカマルチョ)。亭主が出張で留守がちなため、産後うつにかかり母親と同じ幻覚を見はじめるモニカ(アルバ・ロルバケル)。裁判官の夫と死別、事件を起こした息子とも絶縁状態の元検事妻ドーラ(マルゲリータ・ブイ)は、夫の声で吹き込まれた留守番電話に孤独な心情を打ち明ける。 舞台をテルアビブからローマに移し変えたこの映画、登場人物の誰も彼もがみな、強迫神経症にかかった病み人たちなのである。外交的で楽天的な国民性で知られる南イタリア人に相応しいキャラとはとても思えないこの3人、四方をイスラム国家に囲まれて、いつ核ミサイルをぶちこまれてもおかしくはないイスラエルだからこそ成立するお話のような気がするのだ。バカ息子が車であけた大穴も、ハマスのミサイル攻撃を予感させる紛争真っ只中のテルアビブだからこそ現実味がより増してくるにちがいない。 ルーチョは娘にされたと思った淫行罪でその孫娘に訴えられ、検事妻ドーラは夫と共に絶縁した息子からも「そばによるな」と突き放される。そして、うつを発症したモニカのストーリーがこれまた実に救いのないサッドエンディング。二人目の赤ん坊を出産後失踪したモニカはともかく、その○○を娘のベアトリーチェも見てしまうという、母娘3代にわたって呪われた宿命を背負い続けるのである。これはもうガザ虐殺の報復に怯え続けるユダヤ人のお話としか思えない終わり方なのだ。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
かなり悪いオヤジ