レッド・ロケットのレビュー・感想・評価
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マイキー的なもの
週刊文春の映画欄で辛口で知られる評者5人のうち4人が最高点の5つ星を付けていたので、気になって観に行った。この映画の監督であるショーン・ベイカーという人は、私と同じ50代、セックスワーカーを主人公に据える作品が有名で、インディペンデント界の俊英といわれているようだ。社会の片隅で生きる人々を生き生きと映し出し、彼らを取り巻く厳しい現実をもユーモアをもって語り、アメリカの広大な空や風景をまぶしいほど鮮やかに切り取るというのが作風らしい。
主人公のマイキーはナルシスティックで思いやりのかけらもないダメ男といわれているが、生存能力が高い人間であるという見方もできる。なにがあってもへこたれず口八丁手八丁で難局を切り抜けていくし、マリファナのセールスで稼いだお金もしっかり貯めこんでいるし、元ポルノ男優だけあって女性を口説き夜の営みも満足させる能力は抜群である。
もちろん好意的に捉えればということになるが、いわゆる堅気の世界でもマイキーのようなタイプの人間はいるのではないか。自分の自慢話ばかりして、相手がどう思うかなんて考えず、人をうまく利用してやろうという魂胆が見え隠れする。そういう人間は真の信頼は得ることは難しいが、たとえ一時であっても、その勢いにまかせた押しの強さで成功を収めているような気がする。
また、自分もマイキーようになりたいという願望がないとはいえない。まだまだ人生も恋愛も諦めず、どんな苦境もユーモアをもって切り抜ける度胸を持ち、明るくて憎めないキャラクターになるということだ。
短所は長所、長所は短所、人間は多面的に見なければならない。
Strawberry
元ポルノ男優が社会に馴染もうとする作品だと思って観ましたが、主人公がとんでもないクズで、共感性なんて求めてないぜくらいの勢いのクズでした。清々しかったです。
とにかくSEXは上手なので、女性を手玉に取るのは得意そうでしたし、実際行為へ持ち込むスピードも凄まじかったです。
しかも色々と交渉上手なので、金もある程度稼いでSEXも堪能して楽しそうでした。時々痛い目に合ってくれるので、そこのバランスも中々良かったと思います。
マリファナは吸いまくりますし、それを売り捌く、元嫁がブチギレようと家に居候し、怠惰を貪る。いやーヤバいやつでした。
玉突き事故の原因を作った時に、友達に全て擦りつけた時はコイツマジでクズやなぁ、マジでなんか酷い目にあわねぇかなぁと思ったら、身ぐるみ剥がされ根こそぎ取られの散々な目に合ってむっちゃ笑いました。チンチンブラブラさせて全力疾走している姿は爆笑ものでした。
なんだか終わり方は爽やかで、お前にそんな爽やかな日常訪れるのかい?と彼の成功を願う様に物語は終わります。
ストロベリーを演じたスザンナ・サンがとても良くて、めちゃくちゃ可愛らしくて、その上ビッチな雰囲気もうまいですし、とても魅力的な女優さんだなと思いました。純粋さと過激さを共存させる難しさ、これを全力で演じ切った彼女には拍手ものです。しかも現在27歳、撮影当時でも24〜25歳なのに超童顔、これまたギャップが強いです。
ブラックな笑いだけどゲラゲラ笑える、ちょっと抜けたブラックさには引きましたが、それでもクズを堪能できる珍しい作品でした。これは良い掘り出し物でした。
鑑賞日 4/29
鑑賞時間 15:40〜18:00
座席 E-1
ただ戸惑った
しかし デカチンだったなぁー。(☆o☆) 流石はAV俳優。
苦い現実を見つめる映画か。辛いね。
クズ男日常系
いろんなものがゆらゆらしていて映画的
久々に映画らしい映画を観た。ロケーション、キャスト、演出、間の抜けっぷりの良さ。アメリカの田舎町がいかに映画的か、とも思うが、これは監督の汲み上げたものだろう。むしろ、風景と建物からドラマを生み出してる気がする
かつてのポルノスターの帰還をここまであっけらかん、かつ悲惨な話にしないのだけでと大したもんだと思う。どこかでコメディ、ってジャンル分けされてたけど、まあコメディでもあるけど、何しろポルノ界では著名人だったはずが、田舎に戻って自転車であっちいったりこっちいったりがいい。またそれを捉える16ミリ撮影の風景がいい。履歴書に書けないプロフィールゆえ仕事にありつけず、結局ヤクの売人になりゆらゆらゆらゆら漂い、ドーナツ屋の未成年にポルノスターの原石を発見して手を出して、って書いてると日本でもできそうな物語かもしれないけど、風土の問題か、資質の違いか、とにかくカラッとした人間模様なのが楽しい。
最後には身包み剥がされ、玉をゆらゆらさせて、自転車すらなく、ひたすら歩いて歩いて、たったひとつ残されたものがパッカーんと微笑みを浮かべるラストも素晴らしい。あと母親とか隣人のキャスティングも良かったな。いろんな意味で昔の北野武を思い出した。
移動はママチャリ
めちゃくちゃおもしろい! 笑える! 主人公マイキーがクソ最低でクソ最高すぎる! 徹底した自己中野郎で、自分が周りに対して不利な状況では憐れみを誘い責任を回避し、有利な立場では恩着せがましくとことん利用する。そうするためにウソでも本音でもひたすら主張し、どんどん調子に乗っていく。あの惨事の責任をロニーに押し付け逃げ切った時のうれしがりようたるや、本当にクズの面目躍如である。古い漫画で言うとカメレオンの矢沢栄作的。
今年の年明けに公開された、そして僕は途方に暮れるの主人公はすぐに逃げる後ろ向き・消極的なダメ人間であったが、こちらは前向き・積極的なクズ人間で、ラストワンシーンまでポジティブなのだ。いわゆるサイコパスなのかもしらんけど、これはこれでひとつのピカレスクロマンという気がする。
なんで自分はこういう人間になれないのだろう…という悔しさすら感じるが、終盤、同じポルノ男優の物語であるブギーナイツのマーク・ウォールバーグ同様にポロリ(というかぶらんぶらん)があり、この立派なイチモツがマイキーの過剰な自信の裏付けなのかも?と思うと、やはり自分には無理(涙)。
出てくるキャラがみんなクソでダメ人間というのも愛すべき哀しさ。そんな中でおっさんと女子高生というNGな間柄などおかまいなしに口説き落とされるキュートなそばかす顔のストロベリーは、もくもくと排煙が流れる工場群が背景の干からびた街にポツンと建つカラフルでポップなドーナツ屋そのもの。時折マイキーと庭で目が合う飼い犬の表情がすべてを見透かしているかのようでまたおかしい。
年に何本かはこーゆー作品が観たい。ほんとショーン・ベイカー監督すばらしい!
ダメ人間は堕ちていく
クズで自由すぎるとほほな主人公に、ただただ呆れる130分。
全て口から出まかせ。
女房がいるのに、17歳の少女・ストロベリーをポルノスターにするために籠絡して、調教してとやりたい放題。
ヒラリーvsトランプで全米が騒がしい2016年、そんなことは知らんよとテキサスという街で燻った貧しい連中が、日々に目を背けながら自分のダメさ加減をせっかく忘れているのに、もっとダメな主人公のせいで思い出させられる。
ダメ人間ってのはどこか人間的魅力に溢れてて、なんとなく愛おしく感じちゃうけども、どこまでもテキトーで、立ち直れそうなことがあっても簡単に堕ちていく、って現実の怖さが伝わってきました。
もしもストロベリーとうまく街で一発当てたとしても、もう一人のレクシーを生みだすだけだったんでしょうね。
わがままなポルノ男優
人タラシだな。
なんと「何だ馬鹿野郎」すらない
自分が出演してきたポルノ映画の賞やいいねの数だけが生き甲斐で、家庭を顧みない元ポルノスター。一文なしで転がり込んだ妻と義理の母の家で、二人に嫌われながらも生活するうち、なんと娘といっても良い年齢のテイーンエージャーを彼女にして、その元彼と一悶着、そして結局は・・・・と普通の目線では最悪・最低の人生です。
でも、そこには悲壮感も後ろめたさも何もない。
自動車産業が衰退したテキサスの、しかし明るい陽の光に照らされて、とあることからの開放感に包まれながら、自転車を走らせる主人公の表情の屈託のなさと言ったらどうでしょう!
荒井忠の「なんだ馬鹿野郎」さえない。ただあっけらかんと恥も外聞もなく、「生きてるだけで儲け物」と、生を謳歌する姿がそこにある。そしてそれがまた哀しくもあり、可笑しくもあります。
アメリカの白人社会は既に中間層がなくなり、分断が進んでいると言われて久しいですが、ここで描かれている世界もその一部なのでしょう。ヒラリー対トランプの戦いでヒラリーが行った勝利宣言演説のテレビ音声がこの映画でも流れますが、その後何が起こったのか、そしてそれが何故起こったのか、この映画の物語を見た人には、言わずもがな、それがよくわかるような構成になっているように思いました。
この作品公開後に判明した最近の元大統領逮捕騒ぎ(ポルノ女優との関係の口止め問題)と、どうも話は繋がっているような気がするのは私だけではないでしょう。最低・最悪なのに何故か憎めない。偽悪者かもしれないが偽善者ではない。主人公と元大統領はそんな点で何か繋がっているような気がしてなりませんでした。
"ポン引きヒモ野郎"
主人公のマイキーはいわゆる"スーツケース・ピンプ"とはポルノ業界用語、自分は働かず奥さんをキャバ嬢にアフター場所までついて行き、女遊びと他の娘もキャバ嬢に、風俗よりはマシか、実際にそんな男を知っていたり、色気だけは十分に世間知らずな小娘は性に対して多感な時期、ストロベリーみたいな娘も知っている、そりゃ全て田舎での可能性が高い、日本に住んでいても共感できる、別に戻りたくて戻った訳でも無くすがれる場所が逆戻り、真面目に職探しも、マリファナを売る才能があるし、嫁や姑にも気を使いながら、マイキーのクズっぷりが発揮されたのは竜巻事故にしても轢き逃げする人も多いし、ロニーは可哀想だがバレない可能性に賭けて見事勝利を、黙って家を出れば済む話が、最後の最後で詰めの甘いマイキーの人柄に好感は持てなくても許容範囲内のクズ人間に明るい愛嬌と憎めない人間性!?
最初からマイキーに拒絶反応を示すマリファナ家業の元締めの娘ジューンがブレない態度で潔いナイスキャラ。
考えさせられる何かを深刻に描くよりも明るくPopに映し出すショーン・ベイカーの人物描写も疎かにしない演出が素晴らしい、的外れかもしれないがウェス・アンダーソンやソフィア・コッポラ、ハーモニー・コリンよりも凄いかもしれない、本作を含め鑑賞したショーン・ベイカー監督四作にハズレ無し。
判り易く言えばほぼ「リアリティショー」
私はこの映画レビューを映画.comとFacebookへ投稿していますが、今回もFacebookではあまりウケが良くなさそうな作品です。すみません。
通ぶるつもりはありませんが、この手の作品を喜んで観るタイプはそれなりに映画を掘ってる「ファン」が中心です。なので、私らがもし「面白い映画ありませんか」的な(雑な)質問をされたときに、自分は好きでもまず例には挙げない作品であるとも言えます。
本作、ショーン・ベイカーの新作と言うことで上映前から映画ファンの期待度の高さを感じつつも、やはり商業的には厳しいとみられているのか公開規模は小さめです。週末のヒューマントラストシネマ渋谷の午前中回はオンラインチケット販売だけでかなりの客入りだったので、敢えて、平日のシネマート新宿を選択。こちらは16時20分開始の1回のみでサービスデイということもあり、中途半端な時間にもかかわらずやはりまぁまぁ入っていました。
で、観た感想は一言「かなり好き」。
でも解説めいたことはしようがないほどめちゃくちゃシンプルさで、判り易く言えばほぼ「リアリティショー」的な感じなんですが、そこはやはり映画的な編集です。独特な間とバシバシ展開する落ち着きのなさが、作品内で起きている「おかしな現実」に対して変に考えてしまうことなく、ただただ笑えてその効果が活きています。
主人公のマイキー(サイモン・レックス)は得意の口車で相手をマニピュレートしているつもりになっていますが、そもそも言っている自分が誰よりも思い込み激しくて妄想が止まりません。自分がペースを作っているようでいて、実際は無計画で成り行き任せな彼の言動は傍から見れば「わかりやすい」ため、案の定のことをする彼に対して「可愛げ」すら感じてしまいます。
そして、ストロベリー(スザンナ・サン)はヤバいですね(笑)。マイキーが完全に浮かれている様子を笑いながら観つつも、私も完全なるオジサンとして正直、このムスメに関わってはまずいな、と思ったり。でも、まぁ自分はむしろ隣人ロニーのキャラクター寄りだし、と言う逃げは、なら(作品内のように)ああなるのか?と思うと、それはそれで複雑で。
観ていて終始「酷いなぁ」なんて半笑いで観ている他人の言動に対し、実はめちゃくちゃ自分を重ねて考えてしまう妙なリアリティがあっていいのです。
結局、観てもらわないと伝わらない面白さなのですが、特に女性には「見たくもないもの」もガンガン見えちゃってますし、まぁ本当に興味があればどうぞ。
映画史クズ野郎の系譜の一人だ。
なんなんだ この人々は…
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