都営霞ヶ丘アパート。
私は自転車が大好きで、前職のときによく渋谷近辺から浜松町の職場まで自転車で通勤してました。色んなルートを開拓した中でも好きだったのが神宮を通るルート。特に秋口の夜は本当に気持ちよくて、この近辺の雰囲気の良さ、緑の多さに癒されたものです。
で、このアパートは昔から国立競技場の隣にあり、古いアパートだな、と思いながら横を通ってました。
この映画の中では、元住民の方達の淡々とした引越しまでの生活が描かれてます。
私も若い頃、引越しするときは友達に頼んで業者に頼らずやってたので、引越しの苦労はよくわかります。年取ってからの引越しなど、本当に凶器の沙汰です。まして90近い歳でやるなんて。。
しかし、本当にこの国には「まとも」な政治家はほぼ居なくなってしまいました。。
国政の酷さは言うまでもないですが、都政も似たようなものです。住民のことなど考えておらず、表向き華やかなモノばかりがクローズアップされ、生活に大切な地味なモノなど見向きもしない。嘘のアンケートまで取って住民の退去を正当化する浅ましさ。政治家が気にしてるのは、自分の権力を維持してくれる近場の「お友達」ばかり。
もっとも、それは住民も同じかもしれません。
その政治家たちを選んでるのは、国民であり、都民なんですから。
映画見終わったその足で、改めて自転車で神宮に行ってみました。霞ヶ丘アパート後地は工事用の壁(フェンス)に覆われて、壁には「華やかそうな」絵が描かれてました。公園が出来る予定らしいですが、オリンピックが終わった2022年6月時点で、まだ更地のままです。
それでは、いったい何のために住民は引越ししたのか?
文字通り、この古いアパートが「目障り」だったからでしょう。
それ以外理由が見当たらない。住民の生活など無視して、「目障り」という理由で住居を追いやる。本当に美しい国です。
新しくなった国立競技場には観光客っぽい人たちがまばらに居ました。
その隣で壁に覆われた元霞ヶ丘アパートの更地。自分には「華やかな衣で覆った、中身のないハリボテ」に見えてなりませんでした。ここもいずれ公園になり、この国立の建設により高さ制限が撤廃された神宮付近は、ハリボテの高層ビルが数年後立ち並ぶことになるのでしょう。
映画の最後、右腕のない障害者の老人がリアカーを引いてる姿が忘れられません。
私は悲観論者ではなく、むしろ楽観論者だと思っていますが、それでも今の日本の未来に希望は見出せません。あの老人の姿は明日の自分たち自身だな、と思います。
それでも最後の最後、この老人がラジオ体操に行くために走っている姿には、日々をしなやかに強(したた)かに生きる力が見えました。その、どんな状況でも、人とつながりコミュニティを作り、命尽きる時まで「生き抜く力」こそが希望なのかもしれないな、と最後に感じました。