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◯作品全体
デフォルメチックな部分とリアル寄りな部分のバランスが楽しい映画だった。
しかもそれぞれが独立してるわけじゃなくて、シーンごと、カットごとに両立しているのが良い。例えば主人公二人が部屋でダラダラと喋るシーン。女子高生殺し屋として仕事について話したりする中で、シームレスに夕飯の話とかバイト先の愚痴を話したりする。話すトーンもアニメチックな「作った声」のときもあれば等身大の10代女子っぽいトーンのときもある。どっちかを極めて作った作品ももちろん面白いけど、上手く演出しないと「作りすぎ」「地味すぎ」な作品になってしまう。本作はどちらの要素も上手く取り入れていたように感じた。
一方でアクションシーンはリアルなアクション構成に振り切っていた。女子高生だから体格差は圧倒的で、近接戦を真っ向から挑めない。拘束されてしまえば振り切ることは容易でない。そのために相手に背中を見せてもスピードと手数で勝負する。その戦術の見せ方がとても新鮮で面白かった。
バランスと振り切り。作品全体を俯瞰するとそこの巧さが印象に残った。
◯カメラワークとか
・二人の部屋の映し方が上手だった。基本的にリビングのソファを正面から捉えるカメラの時間が多い。登場人物は奥にあるキッチンだったりサンドバッグとを行き来して二人の「風通しの良さ」をカメラ越しに演出する。そうすることで二人の気兼ねない日常を映しているのだと思う。ただ、二人がメイド喫茶のバイトのことで喧嘩するシーンではリビングとキッチンの空間をきっちり分けるカメラが多かった。先に言及したソファを正面から捉えるカメラもほとんど用いず、それぞれを分断するようなカメラワーク。ラストシーンでそのソファからの正面カットに戻るが、キッチンにいたちさとが部屋を退出していなくなる。一人ぼっちになったまひろを印象づけるような終わり方で、上手なカメラワークだった。
◯その他
・ちさと役の高石あかりの芝居が上手だった。10代女子高生っぽい気だるそうなトーンのときと、テンションが高いときの、作ったような芝居。ちさとの二面性がよく出てた。それとは別に「もえもえキュン」のときのくねくねした動きがめちゃくちゃおもしろかった。
・ヤクザの親分である浜岡一平のキャラ付けが面白い。ヤクザ映画にありがちな「理不尽な暴虐」のギャグっぽくなるところを上手く狙ってる感じ。面白いキャラだったからラスボスにしてほしいと思った。