ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ

劇場公開日:2022年2月11日

ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ

解説・あらすじ

「プレシャス」「大統領の執事の涙」のリー・ダニエルズ監督が、1959年に44歳の若さで死去したアメリカジャズ界の伝説的歌手ビリー・ホリデイを描いた伝記ドラマ。人種差別を告発する楽曲「奇妙な果実」を歌い続けたことで、FBIのターゲットとして追われていたエピソードに焦点を当て、彼女の短くも波乱に満ちた生涯を描き出す。1940年代、人種差別の撤廃を求める人々が国に立ち向かった公民権運動の黎明期。合衆国政府から反乱の芽を潰すよう命じられていたFBIは、絶大な人気を誇る黒人ジャズシンガー、ビリー・ホリデイの大ヒット曲「奇妙な果実」が人々を扇動すると危険視し、彼女にターゲットを絞る。おとり捜査官としてビリーのもとに送り込まれた黒人の捜査官ジミー・フレッチャーは、肌の色や身分の違いも越えて人々を魅了し、逆境に立つほど輝くビリーのステージパフォーマンスにひかれ、次第に彼女に心酔していく。しかし、その先には、FBIの仕かけた罠や陰謀が待ち受けていた。脚本は、ピュリッツァー賞を受賞した劇作家のスーザン=ロリ・パークス。グラミー賞ノミネート歴もあるR&Bシンガーのアンドラ・デイがホリデイ役を演じ、劇中のパフォーマンスも担当。第78回ゴールデングローブ賞で最優秀主演女優賞(ドラマ部門)を受賞し、第93回アカデミー主演女優賞にもノミネートされた。

2021年製作/131分/R15+/アメリカ
原題または英題:The United States vs. Billie Holiday
配給:ギャガ
劇場公開日:2022年2月11日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第78回 ゴールデングローブ賞(2021年)

受賞

最優秀主演女優賞(ドラマ) アンドラ・デイ

ノミネート

最優秀主題歌賞
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(C)2021 BILLIE HOLIDAY FILMS, LLC.

映画レビュー

3.5 中盤の珠玉のシーンに触れるだけでも意味がある

2022年3月29日
PCから投稿

ビリー・ホリデイを映画化するのは非常に難易度の高い挑戦だ。生まれてから死ぬまで、人生のあらゆる部分が重要すぎるし、かといって全てを満遍なく描くとエピソードが散漫になる。重要なのは「どのように焦点を絞るか」。その点、楽曲「奇妙な果実」の知られざる誕生秘話とそれをめぐるFBIとの攻防をピンポイントで伝える本作の視点は、彼女の人物像に迫る糸口として極めて有効だ。そして最大の見所は中盤付近で、前触れもなくワンカットで訪れる。「奇妙な果実」の精神性を芸術性豊かに描き出したこの場面は見応えがあり、ここを境にビリーの覚悟も確かなものとなっていく。名匠リー・ダニエルズらしい力強い場面だ。惜しいのはせっかくのドラマティックな筆運びが、男女間のもつれや薬物の問題などで、少し間延びしたように感じられること。主演アンドラ・デイの存在感が素晴らしかっただけに、何かもうひと盛り上がりあれば、と願うのは欲張りだろうか。

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牛津厚信

4.0 反戦を訴えたジョン・レノンも米政府の弾圧と闘った

2022年2月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

米国における黒人差別と闘った音楽アーティストの伝記映画としては、近年の「ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男」や、アレサ・フランクリンの半生を描いた「リスペクト」などが記憶に新しい。2013年以降のブラック・ライヴズ・マター運動に呼応する映画人の動きという一面もあるのだろう。ただし活動した時代で考えると、JBやアレサの先駆的存在がビリー・ホリデイだったことが、本作を観るとよくわかる。

彼女の代表曲「奇妙な果実」の歌詞が黒人へのリンチを歌った内容(暴行されて木に吊るされた黒人の遺体を、“果実”にたとえた)であることは知っていたが、黒人社会への影響力を恐れたFBIから標的にされたのは本作を観るまで知らなかった。思い出したのは、ジョン・レノンがビートルズ解散後にニューヨークに移り住んだ1970年代、ベトナム戦争に反対し平和を訴えたことで、ニクソン政権下のFBIから盗聴や国外退去といった嫌がらせや弾圧を受けたこと。自由の国を標榜する一方で、平等や平和を訴えて体制に異を唱える人間に対して政府機関が圧力を加えたり攻撃したりという、あの二面性は一体何なのか。

ともあれ、ビリー・ホリデイの通称“レディ・デイ”から“デイ”を芸名につけたという歌手、アンドラ・デイの運命とも言うべきビリー役での主演起用だ。「奇妙な果実」などの魂のこもった歌唱が素晴らしいだけでなく、麻薬、アルコール、DVなどに苦しんだ過酷な状況も迫真の演技で体現している。「プレシャス」のリー・ダニエルズ監督らしく、アーティストを神格化するのではなく、精神的に弱い部分もしっかり描いて一人の人間のありようを示すからこそ、国家という強大な相手に屈しなかった偉業がいっそう光り輝いて見えるのだろう。

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高森郁哉

2.0 BLM運動の尻馬に乗ろうとする胡散臭さがぷんぷん漂う

2025年10月8日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

恐ろしいタイトルをつけたものである。何だか、ビリー・ホリデイという、一人の黒人女性ジャズシンガーが、あたかも国家権力と戦うパルチザンか何かのようではないかw
本作の映画評が高くない大きな原因は、このいわくありげで胡散臭いタイトルと裏腹に、ビリーの男女遍歴とドラッグ、アルコール中毒に終始した中途半端な内容によるものだろう。

タイトルに込められた製作者側の意図は、米国政府がビリーの『奇妙な果実』のヒットによる黒人差別反対運動の拡大を恐れて、彼女を破滅させるためにあれこれ工作を仕掛けたが、ビリーは最後まで屈することはなかった…というようなことらしい。

wikiで彼女のバイオグラフィを読むと、『奇妙な果実』がレコード化され、発売されたのは1939年。大成功を収めたというから、相当数のセールスを記録したはずだ。
そして、彼女が大麻所持で逮捕されたのは1947年。麻薬取締役局DEAの捜査官のインタビューによると、「クスリ漬けの有名なジャズマンを狙ったのは、成績を上げるというよりDEAの宣伝のためだった」という。政府部内での立場を引き上げるのが目的だったわけだ。

確かに、『奇妙な果実』を聴きたければ、いつでもレコードで聴けるのだし、彼女がライブで歌うことで、差別反対運動の大勢にどれほどの影響を及ぼすというのか、かなり疑問ではある。そもそも米国の公民権運動自体が始まったのは1950年代だから、時代が早すぎる。にもかかわらずDEAならぬFBIが彼女をターゲットにしたというのが、にわかに信じかねる。

米国ブラック・ライブズ・マター運動が全米に拡大したきっかけは、2020年のジョージ・フロイド殺害事件だった。本作が制作されたのが2年後の2022年。BLM運動の尻馬に乗ろうとする胡散臭い感じがぷんぷん漂う、と言ったら、怒られるだろうかw

映画の内容に戻ると、悲惨な彼女の生い立ち、あっという間に人気歌手に上りつめたこと、ひっきりなしの男関係、女関係、そしてアルコールと薬物中毒と、伝記的エピソードに公民権運動らしき要素をてんこ盛りにして、何が何だかわからない、という印象が強い。救いはアンドラ・デイの見事な歌唱くらいかな。

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徒然草枕

3.0 自ら得るものだけ

2025年10月5日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

怖い

知的

黒人、差別、人類史
表面的には、そんなとこだろう。下部社会の競争は肌の色に関係なく欲のまま自分が求めるものを奪い取るだけの不条理
一方、観客に目を向けて見て下さい。金持ちの上流社会には白人も黒人も黒人の歌も、真実なら認めている人も多い。やたらと無意味に裸をさらけ出すのにも意味がある。と思います
対比も暗示してるね。ドラッグと酒。人間を蝕むのは、どちらも同じ薬物(人間が作った化学物質)ですが
ドラッグはダメ。でも死因は肝硬変。

魂を歌にのせる、のせられるのは不条理に⋯

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Ducky

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