プロミシング・ヤング・ウーマンのレビュー・感想・評価
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『若気の至り』を吹聴する態度は今すぐゴミ箱に捨てろ、と痛感させられる一作。
クライマックスにさしかかったところで、ある曲が本作独自のアレンジで流れていることに気がつき、なかなか上手い選曲だな、と思った直後、そこには「お前にとっても他人事じゃないんだぞ」というメッセージが込められているのでは、と気づいて、ぞっとしてしまいました。
表題の「若く、将来を嘱望される女性」は、たしかにかつてのキャシーを言い表しているのですが、一方で、一体誰が誰に対してこの言葉を発しているのか、ということに思い至ると、この語に込められた皮肉、陰鬱さがずっしりと肩にのしかかってきます。前述の楽曲や表題をはじめとして、本作では全編にわたって様々な要素に複数の意味が込められているため、容易にテーマの全体像をうかがい知ることができない作りになっています。しかしながら、物語の筋は決して難解ではなく、むしろキャシーの復讐譚としての筋立ては非常に分かりやすく整理されています。このように十分に練り上げられた脚本を執筆しただけでなく、自ら監督も務めたフェネル監督は、本作が長編映画デビューとのこと。その才能には驚かされます。
ラストの展開は見事のひとことなのですが、他方でここまでしないと「彼ら」を法的に裁くことが難しいという実情も反映していると言えます。そのためやはり単に「面白い映画だった」と手放しで称賛できない、してはいけない、作品だと感じました。
とびきり痛快でスリリングな中毒性の高いエンターテイメント
ビジネスマンがアフター5を謳歌している深夜のクラブ。
店内のどでかいソファーに泥酔してだらしなく座りこむ一人の女に男たちの好奇の目が注がれる。
ある男が介抱するフリして言葉巧みに女を店から連れ出す。
タクシーに乗った女は結局男の自宅へ"お持ち帰り"されるのだが、ベッドに横たわった女に乗っかかり、行為を始めようとした男に向かって、女は凍りつくような冷静な声で問い正す。
「あんた、何してんのよ」
実はシラフだった女がムクっと起き上がった瞬間、男の目は点になり、簡単に抱けると思っていた浅はかな自分を後悔することになるー。
彼女の名はキャシーことカサンドラ。
かつて優秀な医大生だった彼女は、ある出来事をきっかけに医大を中退し、アラサーを迎えた今では身勝手な態度でまともな接客もしないくせに小さなコーヒーショップで働いている。結婚する気もなく未だ実家暮らしで両親を心配させているが、そんな彼女は夜な夜な衣装を着替えてクラブやバーに出かけ、下心に任せて誘ってくる男たちに制裁を加えているのだったー。
自らも女優で脚本家、小説家でもあるエメラルド・フェネルが監督した衝撃のデビュー作。
彼女が生み出した独創的でセンセーショナルな物語は、アカデミー賞で監督賞こそ逃したもののオリジナル脚本賞を受賞。このタイトル同様に彼女こそ「Promising Young Woman(将来を約束された有望な若き女性)」であることを世界に証明した。
この脚本のもとに集まった女性は他にもいる。
製作に加わったのは、ハリウッドで今や推しも推されぬ人気女優となったマーゴット・ロビー。
そして「この役を自分以外が演じると思うと不安と怒りが込み上げた」とまで言い切り、主人公のキャシー役を二つ返事で快諾したキャリー・マリガンだ。
キャリー・マリガンはこれまで個人的にはそんなに好きな女優さんではなかったが、大胆で知的でどこかイカれてて何故か愛らしくもあるキャシーを見事に演じ、私の中でも好感度が爆上がりした。
これはキャシーによる男たちへの復讐劇だが、銃をぶっ放したり、「キル・ビル」さながら切った貼ったの暴力描写などは一切なく、シリアスなテーマではあるものの、ビジュアルがとにかくポップでガーリーだし、ロマンティックコメディの要素も含んでいる。
しかしどこか全盛期のタランティーノ作品を想起させる部分がある。言うなれば非バイオレンスで無駄話を省いた可愛い女版タランティーノか?
予測不能で巧みな伏線回収も気持ち良いストーリーと場面展開に加え、オープニングのフレッチャーからブリトニー、ラストのジュース・ニュートン「夜明けの天使」まで、女性らしくてカッコいい音楽が見事にマッチして胸躍らされるからだろうか。
女性の地位向上、性差別反対といった上っ面の正義の裏に歴々と停滞し続ける、男側にとって都合のいい方便と許容。その罪の重さを性犯罪のみならず、その周辺にいる心優しき傍観者たちにも突きつける。
あ、もしかして俺も復讐の対象なのか?と、自らの人生に自問自答してしまう。
「男ってそういう生き物だから」
「食べられちゃう女側にも非はある」
「酔っ払ってたからどうかしてた」
「女の方も誘ってた」
「自分は何もしてない、見てただけ」
「自分は悪い人間じゃない」
無責任に並べられる常套句に中指を立てる復讐の天使は、無力な普通の女であるがゆえ、皮肉にも女の武器を最大限利用して、静かに男たちの股間を縮み上がらせていく。
終盤に迎えるクレイジーナース怒涛の逆襲から先はネタバレ絶対禁止の破壊力。
鬱々とした緊急事態宣言下に登場した、とびきり痛快でスリリングな中毒性の高いエンターテイメント。これはマジで面白い。
もうダメだ、書いてるうちにまた観たくなった。
女たちの怒りは届くのか
衝撃作とはこういうものを言うのでしょう
ストーリーは復讐劇のホラー。テーマは社会的で今の時代にみんなが考えるべきもの。だけどファッションや音楽はとことんポップなので一層強烈なインパクトを与える作品になっています。観終わった後、いろんなことを考えさせられましたが、ちゃんとエンタメとしても成立していて…オスカー脚本賞も納得です。
夜の顔と昼の顔を見事に演じ分けているキャリー・マリガンが凄いです。恋する乙女の可愛さったら!そしてあのクライマックス!!
女性はもちろん男性も目を背けずに観てほしいです。でもデートムービーでは決してないのでお気をつけて。
観てからずっとパリス・ヒルトンの「Stars Are Blind」聴いています。あの場面の演出が上手いのよねぇ、あの後の展開を考えると。。
唾の入ったコーヒーが飲めるほど惚れてた・・・
友情と復讐の話
面白かったですね~
面白かったっって表現はしていいのか?
面白かったで済ませていい映画ではないですけれども…
アカデミー賞脚本賞を取るのも納得です。
酔いつぶれた女性をむさぼる男をビビらせるってだけでも痛快なのに、恋愛や過去の事件の復讐などが盛り込まれてて本当によくできた脚本だったと思います。
主演のキャリー・マリガン、ちょっと目元のシワが気になるけれど、それも加味して色っぽかったですね。
家にいる時のすっぴん感、バイトの時はなちゃらる感、男を釣るためのメイク、もはや一人三役~四役もこなしててほんとに凄い。
個人的には家族にも彼氏にも見せない復讐に生きる顔、学友、弁護士などの敵に対する顔(姿勢)が見とれてしまうくらいかっこよかった。
色っぽいとか女性を性的に見る表現をこの作品のレビューでするとなんだか複雑な気持ちになりますが、とても魅力的な女優さんでした。
彼氏役のボー・バーナムも絵にかいたような好青年で、この人なら信頼できるって思わせる説得力がありました。だからこその後半展開はあぁなんてことだ…ってなりましたよ。
いい男なんだけどな~、若気の至りではすまされないんだよな~。
見どころはやっぱり、主人公の七変化と痛快復讐ですね。
ナンパ男どもの狼狽する姿、学友、学園長、などを不安と恐怖に叩き落すシーンは胸がスッとします。
誰しも後ろめたい過去が一つや二つあると思いますが、こんな復讐が待ってると思うと恐ろしいですね。
この物語の軽妙さは癖になりそう、じれったいシーンが全然なくて物語にスッと入っていけましたし、ストーリーに興味がどんどん湧いてくるので上映時間があっという間でした。
はっきりいって胸糞物語ですけれども、因果応報、罪は清算されますので後味はすっきり。
過去から現代社会に脈々と続く男女格差や性犯罪、いろいろと問題提起しているしかなり社会派映画で見る人が見たら心にグサッと来る事でしょう。
心にグサッと来る人が生まれない社会にしなければなりませんね。
個人的にラスト付近の男の友情が見てて最高にムカつきました。
このゴミクズども、どこまっでいっても徹底的にクズだな!
これほどまでにクズだといっそ清々しいです、一ミリも同情できないし、地獄絵落ちろ感が半端じゃない。
ある意味で最高の仇でしたね。特に共犯の方!こいつのゲス顔、ほんとに腹立つわ~。
過去の行動は取り返しがつかないけれど、せめて後悔と反省はすべきですね、もちろん犯罪行為はNG。
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劇中セリフより
「ハサミを持ち歩いてる女もいるらしいよ」
酒は飲んでも飲まれるな!
お持ち帰りは同意の上で!
酒の力に頼っちゃだめですね。
ちょん切られないよう相手の意思は尊重しましょう(戒め)
東京オリンピック2020が開催している今だからこそ、日本人が見るべき傑作
回想やモノローグ(心の声)を用いないで現在進行形で描いているのに、主人公の過去に何があったのか、主人公の目的・モチベーションは何かが明確に分かる傑作。
回想やモノローグ(心の声)を多用する邦画はレベルの低さを恥じて欲しい。
そして、テーマがとても明確で、それでいて怖いぐらいタイムリー。
どうしても連想してしまうのは東京オリンピック2020開会式のゴタゴタだ。
小山田圭吾のいじめ問題、小林賢太郎の差別発言などなど。
20年以上前のことを今さら言っても……
叩いて埃の出ない人間などいない
これが当たり前になったらタレント・クリエイターは全員仕事を失う
と擁護する者も数多いた。
しかし、この映画を見たらそんなことは言えないと思う。
何十年前の言動だろうと加害者側が時効を訴えるのは間違いだ。
時効か時効じゃ無いかを決めるのは少なくとも被害者とその周辺だ。
明確に被害者に謝罪し、それで許されたなら表に出ればいいと思う。
謝罪しないで勝手に許されたと思うのは大間違い。
被害者に許されないのなら、地位や仕事を失っても当然の時代になったのだ。
少なくとも、この映画にアカデミー賞脚本賞を与えたアメリカはそのルールを適応している。
今後、日本は、邦画は変われるのか?
問われているのはクリエイターや業界の覚悟だ。
えぇーーーーー!
現実版スーサイドスクワット
サイコ女
70‘sに百花繚乱だった復讐映画の系譜に極めて現代的で辛辣な風刺を重ねるずっしりと重いトラジコメディ
昼はカフェで働くキャシーは夜な夜なバーに出かけては泥酔しているふりをして近寄ってきた男達の誘いに乗っかってここぞという瞬間に制裁を加えることを繰り返していた。彼女は元医大生だったが親友のニーナが同級生にレイプされ起訴したものの相手にされず絶望の末に自殺してしまったことで心が折れてしまい退学したという過去を持っており、彼女の制裁は彼女なりのリベンジであった。そんな折カフェを訪れたのがかつての同級生で小児科医のライアン。最初はつれなく接するキャシーだったが爽やかで実直なライアンに少しずつ惹かれてデートを重ねるようになったものの、バーでお持ち帰りされそうになっているところを
たまたまバーにやってきたライアンに目撃されてしまい・・・。
というようなプロットだけ見ると『狼よさらば』の影響を色濃く感じますが、笑えないトラジコメディという意味で大昔に日曜洋画劇場で観た『二つの顔を持つ女/整形美女の復讐』にものすごく似ています。そんな70年代前半に百花繚乱だった復讐映画の系譜をなぞりながら辿り着くテーマは極めて現代的で辛辣なもの。“将来を約束された若い女性”に襲いかかる災厄に加担する者達一人一人と対峙し敢然と戦いを挑むキャシーの怒りの矛先は同性に対しても向けられる。すなわち彼女が戦いを挑んでいるのは現代社会そのものであり、その復讐行脚には終わりがない。ライアンとの出会いで頑なだった心を少しずつほぐしていくキャシーが復讐を続けるか新しい人生を始めるかで悩んでいるところに知らされる真相が章立てで展開する復讐譚のカウントダウンに僅かな異変をもたらし、その後の展開に思わず目を剥きますが、カウントダウンがまたカタンと音を立てた後盛大に始まる狂宴には壮絶なカタルシスが詰まっています。オスカー5部門ノミネートも納得のパワフルな作品、今まで甘い汁をどこかで吸ったことを忘れてノホホンと生きている怠惰なオッサンの顔面に平手打ちを食らわす作品です。
キャリー・マリガンが魅力的
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