ファーザーのレビュー・感想・評価
全268件中、201~220件目を表示
沈黙
Everything all right?
認知症の父親目線で描く、認知症体感型映画。
.
急に知らない人が家の中に入ってきたり娘であるはずの人が全く知らない人になってたりするのは、あーこれは認知症だからかと納得がいくんだけど、それだけじゃなく時間空間までがぐちゃぐちゃ。
.
見てる側もいつの話か、果たしてこの目の前の人物は本当に存在しているのか、今このおじいちゃんはどこにいるのか全てが何となくでしか認識できない。今まで認知症の人の話はあったけどここまで体感させられるのは初めて。
.
いつかは自分の親も自分自身もなるかもしれない認知症、こんなに怖くて一人ぼっちなことはないんだと。自分がこうなった時には、周りの大切な人を悲しませないために早めに優しくしてくれる介護の人がいる施設に入れてください、とここに遺言を残しておく(笑).
.
認知症の義理の父にあまりにも酷い言葉をなげかける夫は嫌なやつに感じるけど、面倒を見てくれている娘へ、明らかに妹の方が大切という態度をとったり何となく頭が悪いとか馬鹿にしてたり、認知症だからしょうがないんだけど、夫の言ってることも分からなくはないんだよな。
.
顔に深く刻まれた皺が全てを語る
さてさて、アカデミー賞番狂わせのアンソニー・ホプキンスですよ。あのレクター博士ですよ。今回改めて思ったのは、アンソニー・ホプキンスという役者はどこか危険なオーラをまとっているということ。
年齢も役柄も違うのに、ある瞬間にふとレクター博士に見えてしまう。画面に彼が出てくるだけで、空気が張り詰め気がおけなる。
しかし顔に刻まれた深い皺の一つ一つに人間らしさを感じる。冷たさもありつつ温かさも共生しているという不思議な二面性を含んでいる。"怪演"ではないが間違いなく"名演"と呼べるアカデミー賞納得の演技です。
この映画は当事者としての一人称視点、相手としての二人称視点、部外者としての三人称視点全てで巧みに構成されている。
一人称視点のときは認知症という混沌とした世界に落とされ混乱する。「これは思い違いなのか?」「あれはいつ聞いた話だ?」などと状況を自分の事のように考えなければならない。全てが曖昧なのでミステリー要素が絡む。
二人称視点のときには、認知症の娘という視点で、「こいつは何を言っているのか?」という疑問と「何をしでかすつもりだ」というスリラー的な不安が襲いかかる。
娘の恋人や、ヘルパーで描かれる三人称視点では世間から見た認知症患者への正直な気持ちがぶつけられる。「自分勝手だ。」「演技じゃないのか。」
世間の不快感が容赦なく主張されるがどこかで共感している自分もいる。
全てが曖昧で不確定。『メメント』の名と共に「難解だ」と言われているのをよく目にするが、それは少し違うのではないか?と個人的には思う。
この映画が複雑な構造をしているのは認知症を疑似体験するためであって、ミステリーやスリラー要素があっても根幹にはやはりドラマが存在しているし、「難解だ」とは感じなかった。逆に混乱するからこそ、ラストシーンまでの全てがしっくり来るというか。
そんな不確定要素を映像に落とし込んだ稀有な映画体験でした。
切ない…
認知症の父親アンソニーと介護に悩む娘アンのお話
父親アンソニーの知覚した世界のお話なので時系列やら登場人物やらがめちゃくちゃに進むので観てる側も混乱しやすいけどアンソニー本人も混乱しているのが伝わるのがとても辛い
アンソニー本人も辛いけど娘だって辛い
だから娘の選択を否定できない
どうにもできないんだから…
突然だけどうちの曾祖母と私のお話
幼児の頃会う度に『どちらのぼっちゃん?』と聞かれた
母曰く曾祖母の中で私は生後7日付近でとまってるらしい
だから走り回る幼児が誰かわからない
説明するとその場は理解するみたいだけどまた忘れるの
姉のことは覚えているのに
だからとても悲しかった
でも毎日生後7日の私の健康を祈っていたらしい
いつも気にしていたとだいぶ後になってから聞いた
映画を観てたら思い出してボロボロ泣きました
周囲も辛いけど本人も辛いんだよね
自分ではどうしようもないんだから
どうしようもないけどちゃんと向き合わないといけない話
良い映画だったとか面白かったとかアンソニーホプキンス凄いよねで済ませていけない映画なんだと思いました
赤ちゃん返りする主人公を自分自身の視点から描いた作品は斬新
メメントのようでメメントではない、怪奇映像
認知症の父を描いたドラマ映画…なのだが、メメントの叙述トリックも感じられ、ミッドサマーのような心をかき乱す描写もあり、もしかしてサスペンスホラーなのかとドキドキしてしまった。
メメントでは記憶を失い続ける男に対し、悪意を持った人間が働きかけることでサスペンスドラマになった。ミッドサマーでは精神が弱った主人公が生贄を求めるコミューンに滞在することで不協和音のあるホラーになった。この映画でも同様に主人公に問題があるのだが、この2作、特にメメントとは全く異なり、何も事件は起こっていない。事件は主人公の頭の中だけで起こる。ただそれだけなのに、恐怖・悲哀・同情心を呼び起こす怪奇性があった。
そしてその怪奇性は観客を主人公、アンソニーに同調させる。つまり、アンソニーが感じている「奇妙なこと」を観客にも味わわせてくるのだ。それが最後までずっと続き、何が起きたのかさっぱりわからない。ラストシーンでは私も怖くなって泣いてしまうかと思った。
で、ひとつオススメしたいことなのだが…メメントではちゃんと観れば何が起きたか理解できるし、解説記事や順方向再生を使えば観なくても理解可能だ。おそらく、この映画でもきちんとした筋があって、アンソニーだけがそれを理解できていないということなのだろう。オススメしたいことは、アンソニーの外側で何が起きていたのか、アンたちの言動の真実を調べない、ということだ。
理解できたならば映画をメタ的に楽しめた、理解できなかったら映画をそのまま楽しめた。それでいいのではないか。どうしてもメタ的に楽しみたい!と言う方は、出演者数から推測してみるとよいと思う。
訳がわからない…ことが、辛い。
当事者の視線
いつか通る道が眼前に現れる映画体験。
いつかおそらくこの道を通る。
今の暮らしが成り立たなくなる時はきっと来るのだろう。
上映中、老後のことを考えた。はじめて真剣に考えた。今、たまに届く年金額の通知を思い返し、今の職場が定年後も雇ってくれるだろうかと考えた(笑)
一人で暮らす父はいつ主人公のようになってもおかしくはない。
現実に起こるだろうこと、あまり見ないようにしていることを2時間だけだが直視した。
アンソニー・ホプキンスのほとばしる情熱が、狂気もはらむかに見える情熱が、我々の眼前に通るだろう道を示してくれた。
怖くなった、正直。
自分の先行きが怖くなった。
ラストシーン、主人公には死に向き合う意識が残されていた。
うらやましかった。
それさえも失くなってしまうこともあるのかも知れない、そのことに気付いたら余計に怖くなった。
めったにない映画体験になった。
ある意味ホラー
タイトルなし
認知症になったレクター博士
認知症を疑似体験
特に注目していた作品ではないですが、他に見たい作品もなかったのでなんとなく鑑賞してきました。本作は認知症を描いた作品で、はっきり言って映画としてはちっともおもしろくありません。というのも、序盤から話の展開が見えず、「何か見落とした? 聞き落とした?」と思えるほど、シーンのつながりが悪く、わけがわからなかったからです。それなのに、しっかり訴えてくるものがあり、鑑賞後の印象は悪くなかったです。
実は、この「わけがわからない」というのが本作の肝です。映像は徹底して認知症のアンソニー目線で描かれるため、観客は必然的に彼に共感しながら見ることになります。結果、周囲で起こっていることが理解できないという、認知症の疑似体験を半ば強制的にさせられるわけです。
それにしても、認知症がこれほどまでに自分を混乱させるものだとは思いませんでした。ちょっとした記憶違いや錯覚などという生やさしいものではなく、周りの人間がよってたかって自分を陥れようとしているのではないかという恐怖を感じるレベルです。
こういったアンソニーの戸惑いや猜疑心や苛立ちの連続が描かれるため、全体としてストーリーなんて存在しません。それは、アンソニー自身が日常をストーリー化できないことの表れであり、観客は見事にその目線に送り込まれているわけです。認知症を一人称視点で捉えているところが斬新です。その一方で、世話をする娘のアンの気持ちにも共感できるような作りになっているところに本作の巧みさがあります。
主演のアンソニー・ホプキンスがアカデミー主演男優賞だったことは、鑑賞後に他の方のレビューで知りましたが、これは納得です。知っているようで知らない身近な問題を、新しい切り口で見せてくれる本作。おすすめです。
「脳が壊れる食品」「ボケない食事」となる本を購入してしまった💦
祝・アカデミー賞主演男優賞!
主人公と名前、年齢を同じに設定…
認知症の父を演じたアンソニー・ホプキンス
大納得の圧倒的な名演に唸らされました!
タップダンスを踊りおどけてみせたりの
お茶目でコミカルなシーン、かと思えば感情の沸点に達する程の癖の強い止まらない弁
…金銭や腕時計への異常なまでの執着…不安や孤独感の炙り出しにギョッさせられました
特にクライマックス!壮絶な演技と息を呑む展開には圧倒されました
花びらが1枚1枚散って行く自分の人生…
崩れて行く人生の脆さを全身全霊で演じ切る彼以外にオスカーはあり得ないっ!
スタンディング・オペーションを送りたい名演技でした👏
そんな父に振り回される娘役オリビア・コールマン…もどかしさを抱えながらも愛を得たいジレンマ…実に巧みな演技に観手の私自身も辛くなる程リアルでした
スリリングな物語の中、絵画と音楽に溢れるアンソニーのアパートにも魅了されましたね
…これだけのセリフを覚え演じるアンソニーご本人!
脳活は完璧ですね〜😁
そして、この先まだまだ私達を楽しませて下さる事、楽しみにしております!
混乱しながら観る、斬新な視線
陽だまりの悲哀
認知症の父親とその娘の生活を描いたドラマ。
介護による親子の気持ちの移り変わりを描いた作品であり、鑑賞者側の誰もが無関係ではないストーリー。
作品としては、主にアンソニーの視点で描かれており、あらゆる事が不自然に連発するため、観ているこちらも混乱してくる。
・・・なるほど、これが彼の生きる世界なのですね。。
アンソニーのプライドも理解できるし、とは言えアンには自身の幸せを第一に考えて欲しいし。。恋人の本音も、決して責められるものではないですよね。
それでも、最後のシーンを観ると、やはりまた別な気持ちもわき出てくる・・・。
いつかは父親のああいった姿を見る日がくるのだろうか。そして私自身も。。
穏やかな日差しと美しく生い茂る緑、それに対するやり場のない物悲しさのコントラストがとても印象的。
コミカルな描写を挟みつつも、綺麗事抜きの現実にハッとさせられた良作だった。
傑作です。映画館で見るべき。
アンソニー ホプキンスがアカデミー主演男優賞を受賞したのも納得の傑作でした。
この作品の凄いところは、認知症の患者視点でストーリーが展開していくので、時間軸や登場人物の関係性が曖昧になっていく様が、
観客も疑似体験できるところでしょう。主人公の疑心暗鬼になる様がとてもリアルでした。
アンソニー ホプキンスの演技は全てのシーンで神がかっていて見ほれるばかりですが、娘のアン役のオリビア・コールマンも父を見守る苦悩の演技は身につまされ見ごたえがありました。
実は私の母が認知症で長く患っていて父が看病疲れで施設に入れた経験もあり様々なシーンで当時の事を思い出してしまいました。
観客の年齢層は高かったですが、若い方にも見て欲しい傑作です。多くの方にお勧めします。
全268件中、201~220件目を表示