劇場公開日 2021年3月26日

ノマドランドのレビュー・感想・評価

全413件中、281~300件目を表示

4.02008年

2021年4月3日
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その年に私は再就職し、半年もたたずにリーマンショックというものの凄まじさを知った。
突然翌日に職を無くすということの恐怖、しかもこれから退職金をもらってゆっくり余生をすごそうという時期にそのようなことに直面した場合、どう生きていくか。
主人公はどちらかと言えば寡黙で、そして理知的な女性。
ストーリーの中で関わる人達は、自分の思いをそれぞれ皆に語っていくのだが、彼女はそれをただ淡々と聴いていく。
流れる美しい景色と、ゆったり流れる時間に、彼女の心はなかなか読めない。
途中いくつかのアクシデントがあるが、それも自分のなかで咀嚼し、糧にしていく。

観ている途中、何度も自分に当てはめてみた。自分には彼女のように生きられるだろうか、いや、出来ないだろうなと。

一度ノマドになっても、家族に迎え入れられて屋根のある生活に馴染んでいく人もいる。
彼女を迎え入れるよう計らってくれる優しい人たちもいる。

ストーリーの終盤、彼女は自らの口で自分の過去を語る。
そこで彼女は決心した様子で、今は亡き夫と暮らした地へ赴く。

観賞後、再び自分ならどうするか考えたが、やっぱり私には彼女のようには出来ない。
本当の自由とは、とてもとても勇気のいることだと思う。
言葉足らずで言いたいことが言い切れていないが、この作品を通して、自分を見つめる今後の課題ができたと思う。

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ゆの

4.0老人よ家を捨てて旅に出よう

2021年4月3日
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現代のアメリカで、昔の遊牧民のような生活をしている人たちがいることや、出演者の何人かは本職のノマドであることに驚きます。ノマドになった理由は人それぞれだけど、あえてドラマ的に盛り上げたり声高に主張することなく、彼らの生活が非常に抑制の効いたタッチで淡々と描かれていきます。短いエピソードの積み重ねと繊細な音楽、美しい構図の映像とが非常によく計算されていて、画面に妙な引力があり、意外と退屈しませんでした。全然違う映画だけど、この監督さんの作ったハードボイルドものを観てみたいですね。修行僧のようにストイックなフランシス・マクドーマンドの演技も素晴らしかったです。

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シネマディクト

5.0なぜ旅をするのか

2021年4月3日
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「ノマドランド」
主演のフランシス・マクドーマンドと相手役以外は全員本物のノマド。ほぼ全員が素人なのに、そこになぜか通常あって然るべき不自然さが全くない。
映画はドキュメンタリーとフィクションの境を漂いながら、映像の力を信じてどこまでも丁寧に物語を紡いでいく。

ノマドの表情と身体、車内の生活道具、刻々と変わる自然。それら全てを同じテーブルの上に並べ、今までロードムービーがあの手この手で描いていた「なぜ旅をするのか?」という問いに、かつてないほど雄弁に答えてくれる。こんな映画、自分は初めて観ました。

はじめは高齢者ノマド=経済主義の歪み、みたいな映画をイメージしてたけど、もちろんそうした側面はあるけど、これはそうした人間中心主義的な話ではなくもっと普遍的で壮大な、旅や孤独、あるいは美しいものに触れる事そのものを描いた映画です。

ぜひ、大画面かつ音響の良い映画館で観る事をお勧めします!傑作です。

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前世は焼き鳥屋

4.0思い出したこと

2021年4月3日
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昔オーストラリアを長距離バスでめぐっていたことを思い出した。どんどん荷物が軽くなって、たったこれだけで充分だと知った。その経験で物、場所、人間関係に対する執着がちょっぴり少なくなったかもしれない。

彼女は何かにしがみついている。昔の家、家具、アンティークのお皿、思い出、一人でいること、車…。しがみついているものが自分の大切な一部かもしれないし、そうでないのかもしれない。
ノマドが良いとは思わないが、人間にはそういう面もある。

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Momoko

4.5転々と生きてみたくなる

2021年4月2日
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笑える

楽しい

幸せ

日本全国旅したい、日本全国に住んでみたい、その延長線上に車上生活があるのは、前向きな生き方としてすごく共感できる。ただ、経済的に苦しくてそうしかできないのであれば、辛い思いがする。

この映画では、定住しない生き方をプラスに描いていた。しかし、現実にはリーマンショックで職を失った人もいるだろうし、年金が少なくて定住できないのかもしれない。

お金だけが価値の全てだとは思いたくもないし、少なくともこの映画では自分らしい生き方があっていいんだと肯定してくれたようで嬉しい。

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かずじー

庭から見える景色が一番落ち着く

2021年4月2日
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鑑賞方法:映画館

旅に出る人々の話

素晴らしい作品でした。
人間は最後にどこに行きつくのか、人生の目的地とは?
自分にも遠くない未来に待ち受けているであろう老後の姿が胸を突く。
自由と孤独と不安で一杯、よくよく考えたら今もそんな感じだ。
家族はいるけれど、自分が死ぬ時はどんな感じだろう、泣いてくれる人いるかな。
なんて思いましたよ。しんみりしました。

希望の物語なのかはまだ分からないけれど強い映画だと思った。

大自然は強い、容赦なしだけれど人間も負けじと強い。
大自然は美しい、人間も同じくらい美しい。

アメリカの国土ってこんなにも美しかったんですね、忘れてました。
そりゃネイティブアメリカンの方々も自然を崇めるよね、景色が神々しい。
それを奪った人々の子孫が大自然に癒されてるんだから皮肉なものです。
お金の奴隷になった現代人に本来の大事なものは何かを気づかせてくれるような内容でした。

主演のフランシス・マクドーマンドは圧巻の演技でしたね。
表情も仕草もドキュメンタリで実在の人物かと思えるほどの存在感と演技力です。
顔のシワが人生を物語、瞳が心を映し出してました。

ビートたけしがお腹の出ただらしない体を見ながら言いました。
「この体にするまで何百万かかったと思ってるんだ」

樹木希林がシワと白髪が増えた時に言いました
「せっかくシワが出来てくれて、白髪が生えてきてくれたんだからもったいないじゃない」

アンチエイジングやダイエットも必要だけれど年相応の姿ってあるものなんですよね。
無理に矯正しちゃうとほころびや不自然さがでてしまう。

マクドーマンドは本当に自然体だった。衰えた体を受け入れてそのままで表現してた、ヌードシーンとかも含めて佇まいがこの上ないほどきれいでした。

肉体と精神て別物だと言われてるけれど、その二つを一つにしていくのが人生で正しい年の取り方なのかも知れない。とにかく憧れてしまうほどのいい年の取り方です。

現代のジプシーのような生活をする人々。車一つで自由に暮らす人々がアメリカには多いことや、老人が最期を求めて旅をする事など興味深い題材だった。
なかでも印象的だったのは燕の巣の話をする所。

これほどまでに美しいものを見たことが無い、その瞬間の幸福が人生最高の瞬間で今、死んでもいいと思えるほどの景色。
確かに人生で一番幸福な時に死にたいと願うのは当然の事、今まであんまり意識してなかったけれど人生最大の感動ってなんだろう?もう出会ったのかまだなのか、それを知るまでは生きていたい。

諸星大二郎の短編漫画「カオカオ様が通る 」にも同じような考えを持つ民が出てくる。
顔をフードで隠している怪しげな人々だが、実は感動的な風景や現象を見ないようにしているのだ。なぜなら、感動的な物を見た時、人生で最も幸福なこの瞬間に自殺を選んでしまうから。ノマドランドのワンシーンをかなり前から諸星先生は漫画で表現していた、それは人間の普遍的な願いの一つなのかも知れない。

余談だがこの漫画の影響で、私は学生時代にとあるオンラインゲームである試みをしていた。
冒険やレベル上げなどほっておいて、そのゲームで最も自分が気に入った場所を見つけ、そこに居続ける事。
ひたすらに景色を眺め続け、そこに来た他のプレイヤーに挨拶をする、それだけのゲームプレイ。
友人に話したら笑われてしまった「せっかく月額払ってんだから冒険をたのしもう」と言われてしまった。実際、すぐに飽きて冒険を楽しんだし、上記の試みはほぼ失敗だったのだけれど。今ならできるかも知れない。
まあ、ゲームより現実で旅とかして感動した方が映画にちかいけれど。

話が逸れたが本当に素晴らしい映画でした。
誰が見ても心に染みて人生に影響を与える作品であることは間違いないです。

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劇中セリフより

「この旅に『さよなら』はない」

またどこかで会える、死ですらちょっとのお別れでしかない。
そうなると友人を多くもっておきたいですね、また会えるなら色んな話がしたいし聞きたいから。

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フリント

4.0大人向きなドキュメンタリー風映画。

2021年4月2日
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アカデミー賞最有力候補作品なので気になって鑑賞!大人向けのドキュメンタリー風映画。子供や若い子には不向きかな。
色々な仕事をしながらアメリカ各地を旅し、車中生活を送る女性のお話。同じ車中生活を送る人々との出会い、その人々がなぜ車中生活を送っているのか。特段びっくりするような事が起こるわけではなく、まるでドキュメンタリーを観ている感覚。景色の空がとても美しい‥。
排泄するシーンやらはリアルで綺麗なものしか見せないってことはしない。汚い仕事も文句も言わずに黙々とこなす主人公。妹や友人に一緒に暮らそうと言われるのに頑なに拒否する、そこまでして車中生活を送るのはなぜか??
ホームレスじゃなくてハウスレスなのよって言ってたシーンもそれってどう違うのかなって考えさせられる。さすがアカデミー賞候補、考えさせられる良作映画。ただ面白かったとはなんとなく言えないけど、すごいです。

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コップのサチ子

4.0生きるということ

2021年4月2日
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私自身、引越しが多く、もう実家がない。なつかしく訪れる家もない。それは、悲しいことでなく、次への必要があってのこと。
今、自分が住む家は、自分のためのコンパクトな住まい。自分の居心地のいいようにあれこれ手を入れているが、賃貸物件。
この必要空間は、もしかしてキャンピングカーでもいいんじゃないか、と、もうずっと前から思ってる。 初めて、キャンピングカーをみてあこがれたのは、ピンキーとキラーズのテレビ番組 ww 50年以上前の番組です~ ww

旅がしたい。定年位になれば、キャンピングカーで各地を旅したい、と今でも思っている。

が、日本は難しいんだよね、オートキャンプ場が一泊2,3千円。 停められるとこって、少ない。 (アメリカでも、どこでも停められるわけじゃない、っていうのも、この映画にでてくるけどね)

ホントに、ワタシにとっては、ある意味、居心地のいい車に住むのは夢なんですよ。

いや、現実に、アメリカは、そういう人がいて、という話。
原作が、ノンフィクション「ノマド 漂流する高齢労働者たち」ということで、現実は、「何かを失って、心を痛めた高齢者」が、収穫時期や、クリスマス需要のネット宅配なんかの季節労働に出向いたりしながら、暮らしている。

この映画を観て、え! って思ったのが、エンドロール。
役名と、役者名が一緒の人がいっぱい。
で、このサイトで、実際のノマドの人たちが出演してる、って。 びっくりです。
こんな映画、こんな撮り方そう多くはない。 明らかなノンフィクションとも違う。。

「スリービルボード」の女優さん、あの映画は共感できなかったけど、彼女の存在感は忘れられない。 普通映画で書かない部分を、この映画は、いちいち入れることで、すごくヒリヒリするけれど、考えてみれば、生きていることは、いつもそういうヒリヒリ感を抱えている。
わざわざ描かれると、痛いけど、それは、生きていると当たり前なんだよね。
どんな豪華な家でも、病気にもなるし、死ぬときは死ぬ。 そう、すべからく、人は死ぬのです。

この映画は、いろんなシーンが次々とたくさんでてきて、大自然と触れ合う場面が、ちょいちょいでてくる。
対極は、「マディスン郡の橋」かも。 家に縛られて、家で一生を過ごす。

どっちも大変、どっちもどっち・・・ なんだよね、結局、という、人生の選択肢を示してくれてるという映画でもあります。 残された人生、どう過ごしますか?

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まろ

3.5観る年齢によるかもしれない

2021年4月2日
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悲しい

難しい

中年以降ならば、シーンや言葉によってじわじわと染み入るものもあるかも。
大昔、アメリカトレーラー生活をしている女性に会ったことがあり、その後
Life is very hard. と書いてある手紙をもらったことがある。この映画を観たときに、彼女を思い出した。映画よりももっとハードそうだった。年もいけばいくほど、更にきついかもしれない。年金については日本も厳しいし、他人事ではないのかもしれない。
風景、音楽は良かった。

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すらにゃむ

4.5ノマドという生き方

2021年4月2日
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この映画から、現代アメリカの抱える貧困問題だとか、反映の陰で望むと望まざるとに限らず「ハウスレス」を選択した人々の悲哀だとかを読み取るのもよい。よいのだが、わたしはむしろ、静謐さを湛えつつ何かを語りかけてくるような雄大な自然と、時にはその自然に身を委ねながら、日々の暮らしに悩みつつもどこかそれを楽しんでいるノマドという生き方に圧倒されていた。
感動しただの、素晴らしい映画だのという感想とは程遠い、しかしながら何かがずっと心に残り続けるような、そんな作品。今この時に観てよかったと思えるような、そういう作品だった。よい映画を観た。

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よしえ

4.5自由だが、過酷で孤独な生活

2021年4月2日
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期間限定の仕事をしながら車で放浪するハウスレスの生活をするファーンが、同じようなノマド生活を送る人たちと出会っていく物語。
車で寝泊まりし、放浪する生活。日本だとあまり考えにくいが、アメリカではそれなりの数の人たちが車での路上生活を送っているみたい。エンドロールを見て驚いたのだが、ノマド生活をしている人たちの多くが本人出演だったようだ。
資本主義で競争する生活からドロップアウトし、車での自由な生活を選択する人たち。たまに仕事して、移動して、ゆっくり過ごす。穏やかで自由で大らかな印象だったが、実際はとんでもなかった。高齢者も多いからってこともあるが、思いのほか過酷で、孤独だった。自由な生活には多大な負担がかかるということか。中でも衝撃的だったのは排泄物。たしかに大問題だ。
自分が10代や20代のときにこの映画を観てもなんてことのない感想だったかもしれない。彼らに近い年齢になっているからこそ、彼らのこだわりや孤独に共感できた。いや、あんな生活がしたいわけではない。話も地味だから、これっていう山場があるわけでもない。それでも今の自分の心を、魂を揺さぶられてしまった。すごい映画だ。

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kenshuchu

3.0美しき死に方

2021年4月2日
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知的

幸せ

寝られる

アカデミー賞最有力候補ということで鑑賞。
ロードムービーは一度も見たことがなく、自分に合うか不安だった為そこまで期待はせず。
でも、予告を見た限り雰囲気は良さげ。

まぁまぁ良かったです。
自然の美しさ、自由に生きる美しさ。
でも、かなり眠たくなる映画でもありました

60代の女性・ファーン(フランシス・マクドーマンド)リーマンショックによる企業倒産により長年住んでいた家を失い、キャンピングカーで生活を送ることになった。

とにかく映像の美しさは圧巻。
ロードムービー初心者でも非常に楽しめ、無駄なナレーションが入らず音楽もまた素晴らしいので、ファーンと共に観光している気分になれる。

フランシス・マクドーマンドは実際に体験しているだけあって、本当にノマドでは無いかと思うほど違和感が無い。素直で優しく愛されているが、どこか寂しそうな表情をする。

美しい生き方と死に方。
重い病気を患い余命があと少しという時に、ずっと病院のベットで過ごし管で繋がれている状態は生きていると言えるのだろうか。そういう時こそ大自然へと足を運び、いい人生だったと思いながら死ぬべきでは無いのだろうか。印象深い良いシーンだった。

ただ、共感は出来ないよなと思った。
このような暮らしをしている日本人は極わずかだろう。アメリカほど身近では無いし、現実味がない。このような暮らしをする人がたくさんいるアメリカだからこそ、人気を博しアカデミー賞有力候補に選ばれたのだろう。

そのため、感情が揺さぶられることは無かった。
ストーリーもピンと来ず、伝えたいことはわかるのだが理解し難い部分が多く見られた。映像作品としてはいいものだが、映画としてはどうだろうかと感じてしまう。

ラスト20分は失速感が凄く、物足りなかった。
中々退屈で眠たくなるほどで、なんだかな〜と。
正直、自然の美しさを楽しむ映画とでしか見れなかったような気がする。深いことは言ってるんだけどね

まぁ、映像は良かったからいっかな。
3月公開の見たい映画もこれにて全制覇。
4月はどうなることやら...。

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サプライズ

1.5ダメですね。

2021年4月2日
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寝られる

全く受付けません。
ミナリと同じく、何でこんなに称賛されているのか?
アメリカンジョークで笑えないのと同様、僕には全く刺さらない映画でした。
レビューの高さに驚きます。

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キチ

4.0ブラボー! フランシス!!

2021年4月2日
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今現在、画面映えする初老の女優としては、No.1だろう。きらびやかで美しい女優は数多いるが、これだけ大画面に映える女優は、なかなかいない。
スクリーン一杯に広がる彼女の横顔。年輪を重ねた皺がしっかりと刻まれ、荒れた肌。あきらめを湛えた瞳は、時折相手を見透かすような光をきらめかせる。多分、年齢相応の顔なのだけど、いわゆるハリウッドのセレブ女優とは違う、独特の哀愁を漂わせる。いわゆるハードボイルド調の、チャールズ・ブロンソンや、クリント・イーストウッドのような匂いを感じる。とにかくかっこいい。「スリー・ビルボード」での、いつ爆発するかわからない勝ち気な女性というのもハマっていたが、本作の哀愁漂う格好良い人間の方が、しっくりきている。

さて、物語はといえば、リーマンショックで家を失った犠牲者を描いた作品というだけでは、本作の良さは伝わらない。社会問題としての面はあるにせよ、それ(一般的には過酷な方)を選択して人生を送る人もいるのだ。一般化した見方だけで、人の人生の良し悪しを決めつけないで欲しい。と言った主張があり、劇中でも「ホームレスではなく、ハウスレス」との主張も。とはいえ、車中暮らしは課題も沢山あるのも確か。苦労は絶えない。

本作では主人公ファーンの車中生活が、延々と描かれる。乱暴に言えば、ただそれだけだ。年末はAmazon倉庫の短期の仕事で働き、季節が変われば次の仕事口を探して車で移動。良いことも悪いこともあり、周囲の同じ高齢者のノマド生活者との交流が淡々と描かれる。日々は流れるが、いつか終わりは来ることを頭の片隅で思いながらも、今日を過ごす。

会話シーンはほぼ、頭の切れた大映しでマクドーマンドの顔が、どっしりと画面を埋める。彼女の葛藤やあきらめ、寂寥感などと相まって、画面に引き込まれる。映画館サイズの横長の画面では、彼女の背景に、荒凉とした砂漠や雪の風景がセットで存在する。後ろに広がる荒野などの自然が、横長の画面では、より広がりを感じる。映画館で観なければ、この奥行きは感じられないだろう。

荒野を主とする自然は、本作の大事な助演者だ。彼女の王国である狭いバンの車内との対比が常にある。彼女は小さなバンを駆って大きな自然の中で自由に生きているようであるが、そのバンに縛られてもいるわけだ。また、バンを通じて、彼女を受け入れてくれるかどうかわからない社会とつながっている。

数年前、アメリカの西海岸北部からグレートキャニオンあたりまで車で旅行したことがある。ただ何もない荒凉とした土地で延々と車を転がしていると、ちよっとした寂寥感みたいなものが湧いてくるのと同時に、少しの高揚感を感じた。人を打ちのめす力と、元気にさせる力が、茫漠とした自然にはあるのだろう。その時に、キャンピングカーか何かで、アメリカ横断するのも良さそうだと思い、未だに本作のようなノマド生活に少し憧れもある。せめてアメリカ東西縦断くらいは、生きているうちにやってみたい。

まだまだ書きたいことはたくさんあるが、この辺で。今年一番の快作です。

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AMaclean

3.5彼女の向かう先は?

2021年4月2日
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悲しい

1 企業の破綻から住む家を失くし、車上生活者となった一人の女性の生活ぶりと道中での出合いや別れを描いた人間ドラマ。

2 この映画では、車上生活の実相が丁寧に描かれていて興味深い。調理や居住機能を備えたキャンピングカーでの生活。レジャーであれば気楽で良いが、蓄えがなければ、日雇いの仕事を得てガソリン代や生活費を得ながら移動する。孤独な夜、缶詰の食事、病気のリスク、排泄事情、車のトラブル。それらに直面する過酷な暮らし。それでも、主人公は決して尊厳は失わない。「私はホ−ムレスではない、ハウスレスだ」と。そして、人嫌いでもない。各所で同じ車上生活者と出合い、触れ合い助けあう。

3 映画の中で、主人公は寒々とした侘しい車上生活と相反する温かでフレンドリーな家庭生活に浸る機会を持つ。一歩踏み出せば普通の暮らしに戻るチャンスを得る。今は廃墟となった町で、かつて住んでいた家を訪ねた後、家財道具を置いていたレンタルスペースを解約し彼女は、車を走らす。彼女が選んだのは果たして?そして彼女の向かう先は?
その答えは示されてはいないが、ラストで「ハッピーニューイヤ―」と周りに声を掛けながら歩く姿に彼女の決意と希望が感じ取れた。

4 主人公は、スリービルボードで強烈な印象を与えたが、本作でもノ―メ―クて干からびた外見の役作りと心のゆらめきを外に出さない抑えた演技を自然体で演じていた。

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ショコワイ

4.0これが私の生きる道・・

2021年4月2日
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知的

難しい

オスカーへのチケットを手にしたクロエ・ジャオ監督がこの作品の着想を得たのが断捨離ブームの先駆けになり全米でも人気の片付けコーディネーター「こんまり」こと近藤麻理恵さんからだとのエピソードに大変驚くと同時に納得もしました…
物や人間関係…多くの不要な物に囲まれて暮らしている人々が断捨離に目覚め出した…
そんな考えがヒントに繋がっているのだろう

…人生を清算しオンボロのバンでノマドの生活を始めた主人公ファーンを演じるフランシス・マクドーマンド…人の話をただただ座り続けてじっくりと聞く姿に名女優のオーラさえ薄れてしまう位にノマドの中に紛れ込み一体になっている彼女…作品の境地に連れて行かれる程の本気度に胸が熱くなりました

元教え子に「先生はホームレスになったの?」と聞かれ「ハウスレスよ」と答えるシーンはハウスレスとして人生を生きるて行く誇りさえ伝わり深く深く心に刺さりました…

旅を続けるファーンに寄り添う様なルドヴィコ・エイナウディの透明感溢れるピアノの音がとても印象に残りました

大いなる自然の景観の中、共生し許し合い協力し生きるノマドの精神をデジタル社会の現代に生きる私達に自然の流れで生きる導きを問う作品ではないでしょうか…

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ねもちゃん

5.0ロードムービーの開拓者のような生活と終活

2021年4月2日
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車上生活と季節労働をしながらアメリカを周る六十代女性の1年をドキュメンタリータッチで描くロードムービー

凍てつく荒野にある貸し倉庫に思い出の物を取り来た女性ファーンの険しく寂しげな表情から始まり彼女は、各地移動してAmazonの倉庫や公園の管理人やファーストフードレストランなどで季節労働を繰り返し亡くながら車上生活を送ってゆく姿を淡々と捉えてゆく。

行く先々で多くの同じ世代で同じ境遇の車上生活者との交流や助け合いをしながら、逞しく生きるファーン達の姿にカメラは静かに寄り添ってゆく。
先々で働きながらも、オフには同じ境遇の仕事仲間と観光や酒を酌み交わして楽しんでいるので、困窮した印象は薄いが所々に過酷な生活や彼らの過去が垣間見える構成も巧み。

モノローグもナレーションなく進む物語は、時折ドキュメンタリー?かと思うほどリアルに彼らの生活を克明描写してゆくが、陰惨な印象より厳しい環境を進む開拓者の様に見える。

この作品のキモの部分は、やはり美しい情景撮影で、砂漠や荒野の朝の光や深い夕景や日没後の空と台地のグラデーションなどの時間帯での営みを徹頭徹尾に映像にしてる。(かなり全編に)

そしての荒野の光の中や凍てつく季節での労働を、合否を超えてに捉えていて、一般的に搾取労働現場の代表のようになっているAmazonでの場面も、仲間たちとの交流や出会いの場として描かれており、一方的搾取労働を断罪している訳ではないが、同時に製作者達が、原作のルポから切り離した部分であろう。
ファーンが、ノマドワーカーになるきっかけのリーマンショック不況については、明らかに怒りを表明しているが。

フランシス・マクドーマンドの演技派にある上手すぎるアクを出さない、リアルな立ち振る舞いも素晴らしく、長年住んでいた土地を追われた悲しみと空疎な心を体現していて、特に友人の家に来て綺麗で広い寝室をあてがわれて、背後にも所在なさげな表情を感じる演技など短いカットながら巧みで唸る。

多くのノマドワーカー達は、高齢者が多くて皆多く語らないが、個人的にはファーンが二度出会い交流する青年の旅人が魅せる控えめで微笑む姿が印象的。
演じる役者の表情もイイ。彼が早朝に旅立つ場面にファーンから贈られた詩がモノローグ的に重なる場面は忘れがたい。

監督クロエ・ジャオの卓越した演出と撮影のジョシュア・ジェームス・リーのルックの構築は見事で傑作だと思う。

ちなみにNetflixなどで配信されているクロエ・ジャオと撮影ジョシュアとの前作『ザ・ライダー』を観ると、本作の雛形的秀作だと分かる。

2021年4月20日追記
Amazonの扱いに一部賛否が出ている様子だが、いつかこの映画も搾取労働を隠蔽した映画として断罪される時代がくるのか?
『風と共に去りぬ』が断罪された様に。

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ミラーズ

4.0車上暮らし

2021年4月2日
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男なら憧れる車上暮らしだけど、やはりそれは2〜3日のキャンプ程度が限界。本当に生活するとなるとなかなか難しいでしょう。この作品はドキュメントの様な静かな作品で返ってそれが引き込まれる要因かもしれません。

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ごっとん

3.0フィクションにする意味あるかな

2021年4月2日
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主人公の事情がほぼ語られずに話が進んでくんだよね。
最初にジャンパーみたいな服を思わせぶりに抱きしめるところがあって、それだけで『なんだろう?』って引っ張ってくの。
そんな感じで説明がほぼないのに、それでも観てしまう作りがすごいね。

なんか盛り上がるできごとが起こるのかなと思うと、そんなこともなく、淡々と進んでくんだよね。
『ドキュメンタリーっぽいな』と思って観てて、エンドロールみたら、ノマドの人は役名と実名が同じだったから、ちょっとドキュメンタリーなところもあったんだね。

それでこれ、別にドキュメンタリーでいいんじゃないかなと思ったの。
フィクションにしたことで、ドキュメンタリーより伝わった何かがあったかというと、なかった気がすんのね。

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Scott

4.5圧倒的な映像美

2021年4月2日
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泣ける

企業の倒産により、自分の家を失ったことで、キャンピングカーに自分の思い出のものを詰め込んで生活している女性の話。
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キャンピングカー生活ってなんとなく金持ちの人が人生をより楽しむためにキャンピングカーに乗りながら旅をしてるっていうイメージが強いんだけどこれは真逆。もちろん、キャンピングカーで生活したいからそうしてる人達でもあるんだけど。
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定住はせずとも、自分が暮らしている"ここ"が自分の家という考えは、どの国に住んでいるかどこに住んでいるかに関係なく今いる場所が私の居場所だという『日本沈没2020』とも共通する考えで、めっちゃ叩かれてたけどやっぱ湯浅監督ってちゃんと今の時代を捉えてるんじゃんと思った。
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とにかく静かにアメリカの広大な田舎の風景や、きれいな景色を映していくので絶対映画館の大画面で見た方が良い。大きなドラマはないけど、何か言葉では表せないことが私の心を揺さぶった。こういうのに心を動かされるような大人になったのかね。
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私も狭いところと汚いのを我慢できるなら良いとは思うけど、さすがにベットの隣にトイレあるのは無理だわ(笑).
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せつこん