カラミティ
劇場公開日 2021年9月23日
解説
「ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん」のレミ・シャイエ監督が、西部開拓時代のアメリカに実在した女性ガンマン、カラミティ(厄介者)・ジェーンの子ども時代を描き、アヌシー国際アニメーション映画祭2020で長編部門のクリスタル賞(グランプリ)を受賞した長編アニメーション。12歳の少女マーサ・ジェーンは家族とともに大規模な旅団に加わり、西へ向けて旅を続けていた。しかし旅の途中で父親が負傷し、マーサが家長として家族を守る立場になる。少女であることの制約にいら立つマーサは、家族の世話をする義務を果たすため少年の姿で生きることを決意。そんな彼女の生き方は、古い慣習を重んじる旅団の人々との間に軋轢を生む。さらにマーサを危機から救ってくれた中尉を旅団に引き入れたことで、盗みの共犯の疑いまで掛けられてしまう。
2020年製作/82分/G/フランス・デンマーク合作
原題:Calamity, une enfance de Martha Jane Cannary
配給:リスキット
オフィシャルサイト スタッフ・キャスト
全てのスタッフ・キャストを見る
2021年9月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
アメリカの西部開拓時代の物語を、こんなに新鮮な気持ちで観られるとは。主人公のマーサ(カラミティ・ジェーン)は快活で好奇心旺盛で負けん気が強く、家族想いの女の子。カラミティ・ジェーンは、当時、男の世界だった西部の荒野で女性として活躍した数少ないガンマンの1人だ。ある意味、当時の西部社会の規範を打ち破るような人物だったのだと思うが、そんな彼女の本質が非常によく描かれている。馬車は男が引くものという規範を破り、男の履物であるズボンを履き、汚名を返上しようと自ら冒険にでかけていく。その勇敢さに宮崎アニメのヒロインを思い出す人も多いかもしれない。
アニメーション的には、とにかく色のセンスがすごい。あらゆるカットがひとつの絵画として美しい。ゴーギャンなどの影響ではじまったフォービズムに影響を受けたそうだ。全カットが見どころと言っても差し支えない。
引きの画面(遠景)では心の中がサーッと晴れ渡るような鮮やかな色遣いの雄大な描写が広がり、寄り(接写)では表情豊かな各キャラクターの感情や意志が気持ちよくリズミカルに飛び込んでくる。「ロング・ウェイ・ノース」のシャイエ監督が紡ぐこの独特なアニメーションは、今回もまた気の遠くなるほど果てしない大自然を進みゆくロードムービーでありながら、時折、瞬間的に沸点に達するかのような快活なアクションをもダイナミックに展開させ、観客の心を引き付けてやまない。主人公のカラミティ・ジェーンといえば西部開拓時代を代表するガンマンだが、この元祖女性ヒーローとも言うべき人物の幼少期、つまり「エピソード1」の中で彼女が自分の意志で決断し、行動し、何かを成し遂げていく様が力強く、楽しく、感動的だ。ちなみに字幕版では、このフロンティア精神を象徴する物語にフランス語のセリフが息づいており、その無二の混合ぶりも魅力の一つかと。
2022年5月7日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
ネタバレ! クリックして本文を読む
西部開拓時代のアメリカに実在した女ガンマン、カラミティ・ジェーン。
ドリス・デイ主演作、セシル・B・デミル監督作やウォルター・ヒル監督作などの映画、小説やゲームの題材にも。
しかしながら私、名は映画のタイトルで聞いた事あるくらいで、実は題材の映画も見てないし、よく知らない。
『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』のレミ・シャイエ監督の新作という点に惹かれて鑑賞。
『ロング・ウェイ・ノース』は秀作アニメーション映画だった。
日本の緻密でリアルな映像美とも違う、ましてやハリウッドのCGアニメとも違う。
言うなれば、日本の往年の東映動画のような素朴なタッチ、キャラ。
ジブリ作品のような冒険劇、エンタメ性。
それらがまた今回の題材にピタッとハマった。
『ロング・ウェイ・ノース』は北極圏への冒険だったが、今回はアメリカ大西部。
フランスの監督がアメリカ西部を舞台に?…という違和感も全く無くなっていく。
緑の平原、雄大な山々、何も隔てるもの無く見渡せる夜空の星…。
素朴でありながらも、これぞアニメ本来の画の美しさに唸る。
大西部ならではの大地を馬で駆ける醍醐味、躍動感。
その中で描かれる伝説の女ガンマンの活躍。
…には非ず。
その少女時代。
何処までが史実通りで、何処まで創作か分からないが(Wikipedia調べでかなり脚色されてるようだが)、
物語は自由に創造。
父と幼い姉妹と共に、旅団とオレゴンへ向かうマーサ。
とにかく彼女、旅団の中の問題児。
活発。負けん気が強い。男勝り。
女の子らしい事に全く興味ナシ。
馬に乗り、馬車を操り、縄投げ、男の子に売られた喧嘩は臆する事なく受け、果てはスカートではなくズボンを履く。
そんな彼女の行動はただの身勝手ではなく、ちゃんと理由があって。
旅の途中、父が負傷。父に代わって家族を守り、引っ張っていかなければならない。
非常に責任感ある性格。
が、周囲からは…。
困った…と言うより、白い目。旅団の恥。何かとトラブルを起こす…その元凶。
“カラミティ”とは“厄介者”の意。
野獣に襲われている所を、一人の青年少尉に助けられる。
地図のコースから外れている旅団の道案内も買って出る。
親切でハンサムな少尉に旅団の女の子たちは憧れるが、マーサの“憧れ”は違う。彼と付き合いではなく、彼のようになりたい。
そんな時、事件が…。
少尉が突然姿を消す。旅団の持ち物が盗まれる。
端からそれが狙いだった。
とんだとばっちり。少尉と最後に会っていたマーサは共犯にさせられる。
旅団の中のマーサへの苛立ち、不満が大爆発。
マーサは縛られ、追放待ち。
男尊女卑でもあり、子供への無情な仕打ち。
誰も信じてくれない。話も聞いてくれない。耳を貸してくれない。
女性同士でさえも。子供同士でさえも。家族も…。
身の潔白を証明する方法は一つ。
私自身で少尉を見つけ出し、盗まれたものを取り返す。
こっそり逃げ出し、マーサは旅に出る。
すぐさま旅団の追っ手。
逃げる道中、マーサは熊に襲われている一人の少年ジョナスを助ける。
追っ手は何とか振り切ったものの(マーサらが川に落ち、追っ手らは死んだと思った)、とあるいざこざから手錠で繋がれジョナスと行動を共に。マーサは自分は“男の子”だと性別を偽る。
とある村に到着。少尉の上官である大尉に少尉の居所を聞こうとするが、ここでトラブル。大尉の怒りを買って、執拗に追い掛けられる。
逃げる最中助けてくれたのが、金を掘り当てようとしている貴婦人。
女一人で事業を展開する婦人の事業を助けた事で気に入られ、少尉探しに手を貸してくれる事に。
そして遂に、少尉の居所を突き止め…。
別に好き好んで招いてる訳ではないのに、マーサの行く先々でトラブルが。その都度、敵視される。
これも後の伝説の女ガンマンの前兆…?
敵や反感も買う一方、出会いも。
力を貸してくれた婦人。
何よりジョナス。
最初はヤな奴だったが、次第に冒険の相棒に。
別れ際は相棒/友としてか…? それとも…? ちょっぴりのほろ切なさ。
冒険の目的を果たしたマーサ。
何も少尉をどうこうしようとはせず、盗品を取り戻せればそれでいい。
罪を憎んで人を憎まず。
一人立ちし、自由になり、このまま好きに生き、何処へでも行けた筈。
だがマーサは、旅団に戻る。決して仲間や家族を見捨てない。
戻った時、旅団は険しい道にピンチ。
そこへ颯爽と現れ、旅団を救ったマーサの姿は勇ましい。
盗品を取り返した。旅団のピンチを救った。
でも何より、生きていてくれた。
もう誰も彼女の事を邪険に言う輩はいないだろう。
女は女らしく。古い習慣。
それさえも自身の勇気と信念で変えた。
冒険と出会いと成長を経て、
道を切り拓いてゆけ、カラミティ・ジェーン!
2021年11月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
レミ・シャイエ監督の新作は何度か過去に映画にもなったことのある女性ガンマン、カラミティ・ジェーンの子供時代の冒険活劇を美しい映像で描いたアニメーション。
美しい映像にただ見惚れてしまうが、ストーリーもなかなかアドベンチャーで眠くなることはない。家族で見るのもおすすめ。
すべての映画レビューを見る(全27件)