シンプルな情熱

劇場公開日:

シンプルな情熱

解説

フランス現代文学を代表する女性作家アニー・エルノーが、自身と既婚年下男性との愛の体験を赤裸々につづったベストセラー小説を映画化。パリの大学で文学を教えるエレーヌは、あるパーティでロシア大使館に勤める年下の男性アレクサンドルと出会う。エレーヌは彼のミステリアスな魅力に強く惹かれ、瞬く間に恋に落ちる。自宅やホテルで逢瀬を重ね、アレクサンドルとの抱擁がもたらす陶酔にのめり込んでいくエレーヌ。今までと変わらない日常を送りながらも、心の中はすべてアレクサンドルに占められていた。気まぐれで妻帯者でもあるアレクサンドルからの電話をひたすら待ち続けるエレーヌだったが……。俳優としても注目を集める世界的バレエダンサーのセルゲイ・ポルーニンがアレクサンドル、「若い女」のレティシア・ドッシュがエレーヌを演じた。2020年・第73回カンヌ国際映画祭のオフィシャルセレクション作品。

2020年製作/99分/R18+/フランス・ベルギー合作
原題または英題:Passion simple
配給:セテラ・インターナショナル
劇場公開日:2021年7月2日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第73回 カンヌ国際映画祭(2020年)

出品

カンヌレーベル「新人」
出品作品 ダニエル・アービッド
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(C)2019 L.FP. Les Films Pelleas - Auvergne - Rhoone-Alpes Cinema - Versus production

映画レビュー

3.5シンプルな情熱、その裏にある複雑な行動

2021年8月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

映画の冒頭には、監督がこれから語ろうとするエッセンスが凝縮されている。時代や登場人物たちが置かれた状況を端的に示し、観客を映画の世界へと誘うのだ。言葉で明示することもあれば、数分間のエピソードによって語られることもある。溝口健二のように、家に帰って来た主人の行動によって、彼を取り巻く人間関係と物語の舞台を共有してしまう達人もいる。この場合、映画の時制はストレートに流れ、フラッシュバックなどで過去がインサートされていく。

映画はホテルの外からひとりの男性を見つめる女性の「去年の9月から何もせず、ある男性を待ち続けた」と言うモノローグで始まる。過去を振り返る台詞で開巻し、言葉が発せられた瞬間に至るまでの過程を描いていく。男を待ち続けた彼女の狂おしい日々は、いかにして冒頭の独白へと至るのか。映画が進むにつれて観客が彼女の時間に追いつくという寸法だ。

激しくドアを叩く登場が強烈だった『若い女』(2017年)で、心が定まらず大人になりきれずに放浪する女性を演じたレティシア・ドッシュが、今度はバツイチのシングルマザーに挑む。大学で教鞭を執る大人の女性であるエレーヌは、あるパーティで知り合ったロシア大使館職員アレクサンドルと情事を続けている。原作は作家アニー・エルノーの実体験に基づいた小説で、監督はレバノン出身の女性監督ダニエル・アービッド。
素性がわからない恋人を演じているのは、天才ダンサーとして頂点に立ちながら、自由な表現を求めて英ロイヤル・バレエ団を飛び出したセルゲイ・ポルーニンだ。電撃的な退団に至った過程は、『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』(2016年)に詳しい。

アレクサンドルに溺れるエレーヌの姿は、友だちが指摘するように「恋に恋している」だけなのか、愛に酔っているのか、それとも取り憑かれたかのようにセックスに耽溺しているだけなのか。
電話を待つだけだった彼女は、いつ会えるか分からない男との情事のためにドレスを試着、下着も新調したり。連絡が途切れるとスマホに手が伸びる。やがて仕事も手につかなくなっていく。
この映画が描くのは、やり場のない「疼き」だ。身体の芯から込み上げる情熱が彼女の行動をエスレートさせていく。
窓越しにフォーカルする描写が効果的に使われ、衝動に対してピュアでありながらも、自分自身に不純を感じる彼女の複雑な心理が繊細に映しとられていく演出が効いている。

さて、冒頭で述べた時制が合致するタイミングはいつ訪れるのか。とくとご覧あれ。

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高橋直樹

3.5好きな人に溺れる話。 この物語はどこにも行かない。 ただ確かにあっ...

2024年7月18日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
ネタバレ! クリックして本文を読む
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ティム2

3.5☆☆☆★★★ 簡単な感想です。 映画を観ながら半分を過ぎた辺りで「...

2024年3月18日
iPhoneアプリから投稿

☆☆☆★★★

簡単な感想です。

映画を観ながら半分を過ぎた辺りで「あ?そうか…」と

※ 1 これって、ひょっとしたら?近年フランスの映画界で評価が高まっている、日本のロマンポルノの影響下にあるのかな?…と思い当たる。

ひたすらに、ただひたすらに男を追いかける女。

会えばやる!やる為に会う!
ただひたすらにやるだけの2人。
途中から、スザンヌ・ビアのデビュー作品『しあわせな孤独』を思い出しながら観ていた。

『しあわせな孤独』は、どうしようもなくなり。理性を保てなくなり、どうすることもできなくなる主人公の姿に「嗚呼!分かるなあ〜!」…と。ついつい共感してしまう作品でした。
それと比較してしまうと、共感するところまではもう1つ…と言ったところではありましたが。作品全体には、しっかりとした人間観察眼があった。

今後、この監督がスザンヌ・ビアの様に、質の高い人間ドラマを製作してくれるのか?は現段階では不明であありますけど。次回作が公開される事があったならば、注目して鑑賞したいと思わせてくれる作品で。途中で挿入されるオーバーラップの効果的な使い方等、巧みな編集も個人的な好みの1つでした。

2021年9月26日 キネマ旬報シアター/スクリーン2

※ 1 ロマンポルノの影響をモロに受けたフランス映画に『ラブバトル』があったけれど。アレはただただダラダラとした作品で全く面白くなかったが、ジャック・ドワイヨンのフアン、、、いや!ヌーベルバーグ好きなシネアスト達からは支持を受けたみたいだけれど。

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松井の天井直撃ホームラン

3.5【”オンリー・ユー”仏蘭西女性が露西亜男性との恋に溺れる日々を赤裸々に描く。それにしても仏蘭西現代文学を代表するアニー・エルノー氏は恋多き、情熱的で、自分の心に素直な女性なんだね。】

2023年4月23日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

難しい

ー 今作は、仏蘭西現代文学を代表するアニー・エルノー自身の実体験を描いたベストセラー小説が原作だそうである。少し前に観た「あのこと」も同様である。
  仏蘭西の性に対する可なり寛容な考え方に民族性の違いを感じる。(と思ったら、昨年ノーベル文学賞を受賞したんだよねえ、凄いなあ。)-

■大学教授のエレーヌ(レティシア・ドッシュ:”若い女”以来かな。)は、ロシア大使館に勤める年下で妻帯者のアレクサンドル(セルゲイ・ポルーニン)と恋に落ちる。
 逢瀬を重ねるたびに、彼との抱擁がもたらす陶酔にのめり込んでいくエレーヌ。
 彼女は気まぐれなアレクサンドルからの電話をひたすら待ち続ける日々を送っていたが、徐々に生活や体調に不調を来す。
 息子を車で轢きかけたり、大学の講義も身が入らない。

◆感想

・5-6割程度が二人のセックスシーンである。
ー R18+も納得である。但し、猥雑感は一切ない。-

・印象的なのは、アレクサンドルを演じたセルゲイ・ポルーニンの引き締まった身体である。
 ご存じの通り、ロシア出身の天才、且つ異端のバレー・ダンサーであり、近年は映画にも多数、出演している。
 彼の身体全体を覆うタトゥは本物である。
 「ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」という彼のドキュメンタリーを鑑賞すると、彼のバレーを踊る中での飛翔の高さに驚愕する筈である。

■エレーヌが、アレクサンドルの魅力に嵌り、情緒不安定になり待ち行く男を”アレクサンドル!”と言いながら追う姿が印象的である。
 恋に嵌るというのは、あのような心理になるのだろうか・・。
(経験なし・・。嘘である。昔、何度かあった。)

<アレクサンドルが八ヵ月、ロシアに帰っていた際にエレーヌは通常の生活に戻る。そして、彼が久しぶりに戻ってきた時に、且つての彼への情熱が消えている事に気付くのである。恋の熱病なのだろうか。
 それにしても、仏蘭西現代文学を代表するアニー・エルノー自身の性的実体験を描いた小説が高く評価されている仏蘭西の性文化の許容度には驚く・・、と思ったら昨年、ノーベル文学賞を受賞したんだよねえ。凄いなあ。
 日本で言えば、故、瀬戸内寂聴さんのようなパッションを持った方なのかなあ・・。>

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NOBU