空白のレビュー・感想・評価
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喪失と微かな希望
不運な交通事故により娘を亡くした父親の暴走と、その父により人生を崩壊させられていく一人の男を中心に、人の弱さや愚かさ、そして赦しを、吉田監督ならではの人物描写で描く物語。
吉田監督作品の中では、ユーモアやえぐみは抑えめで終始シリアスな空気感。それでも重苦しくなり過ぎないのはさすがです。
娘を失った哀しみと憤りを、憎しみと怒りとして発散させることでしか自身を保てない添田の行動で生まれる憎しみの連鎖。マスコミの過剰報道も拍車をかけて、更なる悲劇が生まれていく。皆が辛く苦しい時間が長く続く中で、少しずつ生まれていく希望や赦しが胸を打ちます。
人によって傷付けられるけれど、人によって救われる。相手を分かろうとすることや、自分と向き合うことで、人は変わっていく。
たくさんの喪失のあとでも、些細な言葉で救われる。
希望を感じるラスト、良かったです。
一番悪いのはレジ袋有料化だろ?
「容器包装リサイクル法」(正式名称:容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律)。コンビニ等で毎回「レジ袋はご入り用でしょうか?」と、聞く方も聞かれるほうもうんざりする昨今。プラスチックごみなどの問題よりも、万引きが増えたというニュースほうに目を引かれてしまう。コンビニでもマイバッグ持参の客が増えているし、当然店側もバッグの中まではチェックしない。コロナ禍で貧困に喘ぐ人も多いので、今後ますます万引きは増えていくようにも思う。
罪、偽り、赦しといったテーマの通り、誰にでも起こりうる事件や事故に人間が持つ隠された何かが露見する。完全な善人もいないし、完全な悪人もいない。普通の人でも加害者や被害者になり得るのです。
登場人物のそれぞれの性格が痛いほどリアルであり、凶暴であったり、従順であったり、卑屈であったりと、特徴がよく現れていました。誰しもが自分が正しいと主張したり、ぶつかり合ったりする世の中。自己中心的であればあるほど対立が生まれ、寛容性が失われていくのだと思うけど、どこかに欠点は存在するものだ。わかりやすい古田新太と松坂桃李の他にも寺島しのぶの善を押しつけるキャラ(唇も押しつけてたが)もいたりして、観客は自然と登場人物と自分とを比較してしまうような多様性もあった。
普通ならば法律や損害保険などで収まるところ、一つの事件が関係者のみならず、多くの人を巻き込んでしまったのは、怒鳴り散らす主人公の性格や勝手な報道をするマスコミ、さらには隠蔽しようとする教育者やネットで炎上させようとする傍観者たち。情報過多の時代だからしょうがないかもしれないが、どこかで「赦し」、添田充の言葉を借りれば「折り合い」をつけなければならないのだろう。
様々な性格の登場人物の中で最も感動したのは、事故を起こした女性の母親(片岡礼子)だった。そして、頑固者である漁師を慕う野木(藤原季節)だった。単に謝ったり宥めたりするだけでなく、行動で示すことが大切なんだろうなぁ・・・。そして、バッシングを受けてる人に対しても、弁当が美味かったと言ってたドライバー。捨てる神あれば拾う神ありだよ。
誰が良いとか悪いとか考えながら見ていくうちに、自分の中にも善悪があるものだと気づく構成にもなっているし、「赦す」ことで多少は前向きになれる作品でした。喪失感を表す空白感と親子が描いた白いイルカ(空と白)のダブルミーニングも絶妙。重いながらも秀作だ!
何知ってる?おまえら本当クソだな!本当に
《証拠》この答えは今を生きる現代人に託されている。観察洞察に満ちた警鐘と、それでもなお藁をも掴む想いで微かに残された最後の希望。本来作品とはそういうものだとは思うけど、本作はより監督に突き付けられている気がした。魂が泣いた。本物の感動に突き動かされる。あらゆる要素やテーマを内包しており、一概には言えないけど、確かにここには何より感情が、生が、魂が息づいているのを感じる表現としての有無を言わせぬ熱量。こんな狂った世の中でも相手を知ること。あるいは親にできること、亡くなってから知ること。空白=時が解決するのか?失われた時間を取り戻すことはできないけど、皆どうにかやって日々生きてるんだ。折り合いなんてつけられなくてもイライラモヤモヤしながら。
今最も目が離せない監督・吉田恵輔 × 俳優・松坂桃李!! しかも松坂桃李主演『新聞記者』はじめ昨今の日本映画界を牽引する圧倒的熱量を放つ作品を次々と世に送り出しているスターサンズ製作。この組み合わせは見るしかない!…と以前から注目していた本作。何より古田新太の熱演、強烈なインパクト。演じるのはイカつく、確かに現実世界では関わりたくないような取っ付きにくいキャラクターではあるものの、その分非常に真っ直ぐで、己の価値観・信念のまま決して揺らがない存在感。影では文句も言いながら彼と独特な師弟・信頼関係のようなものを築いていくのは注目の藤原季節。彼も流石の存在感で魅力的。対するは、上述したように最新作が待ち遠しい脂乗りまくりな松坂桃李。こういう役似合いすぎる。そして彼の"理解者"?=寺島しのぶ。一見するとヤバいキャラ・オブ・ザ・イヤー。「正しいんだから!」と正しさを武器に振り回して、善意の押し売りという厄介さ。偽善とまでは言わないまでも、"皆に好かれたい"みたいな似たタイプの人で、以前苦手な人がいたので、いるいる分かると既視感覚えた。
二人だけじゃない主人公=普通の人々にスポットを当て掘り下げていくことで作品全体に群像劇的側面を持たせつつ、社会の不寛容と個人での解決を描く。他にも、符号的扱いでなく、それぞれの立場でしっかりと生きている登場人物たち。幾分極端な描き方をされているとしてもリアル。原因と結果、歯がゆく苛立ち憤る。例えばショック話題性や目先の数字に取り憑かれ、自らの見せたい部分だけを切り取るメディアの偏向報道や心無い人々。もちろんどこを撮=取り、編集し、伝えるか等の作業が不可避で、それら主観が入ってしまう時点で避けては通れない問題ではある。が、やはり当人たちが話すべきところを、周囲外野が余計にかき回し本質を遠ざけややこしくする。そうした波紋は悪いほう悪いほうへと予期せぬ形でまた広がっていく負の連鎖みたいに。吉田監督、今回もやはりスゴかった!
P.S.数えていないけど恐らく10回くらい、あるいはもうちょっと、10分に1回くらいスマホの着信音だかバイブだか鳴らしている人がいて、多分1席空いた隣の人だったけど、確信がなく黙っていた。けど腹が立った。まず本人はそれ気にならないのか?なんとも思っていないのか?神経図太すぎるだろ。…なんて思うけど、それはまだ今日というヤバいくらいツイてない日の始まりに過ぎなかったのだとその時は知る由もなかった(続く)
キャスト陣それぞれ素晴らしいが 古田新太さんのリアリティにつきる ...
当事者になり得る話
人間という極めて不完全な生き物。
古田新太はとりたたてモンスターというわけではない、ごく普通の思い込みの激しい自己中親父で、人並に家族を愛している。家族とどう折り合ったらいいのかわからないだけなのだ。
松坂桃李はとりたたて善人でも悪人でもない、ごく普通にどこにでもいる、中身の無さげな凡人で、とりわけ家族思いでも、従業員思いでもない。誰とも関わることなくひとりで居たい人。所謂周りとどう折り合ったらいいのかわからない小心者なのだ。
わからないもの同士が各々、現実とどう折り合ったらいいのか模索し続ける様はとても重苦しく呼吸が荒くなる。
だれが被害者で誰が加害者なのか渾沌としてわからなくなってきて・・・
100%の悪人はいないし、100%の善人もいない。
本作は人間という極めて不完全な存在を露呈させた佳作である。
救いとは
番宣見ててもさほどピンと来ず、皆様の高評価にそこまでなの?と疑心暗鬼でみたらあらまあなんてことでしょう。僕もこの評価になりました。
地味ぃで、終始皆不幸で、でもちょっとほのぼの。
どこまでも現実的な(ドキュメンタリー的)物語。
重たい恨み怒りがぶつかり合うかと思いきや、複雑な感情が混じり合い、どこに肩入れするでもないそれぞれのリアル。
この猟奇的なお父ちゃんの言ってる事は無茶苦茶でも、なぜか感情としては自然で違和感を感じなかった。
バランスがとにかく素晴らしい。
人の心の救いとは、気持ちの折り合いとは、何とも意外な、まったく予想しない方向からふと、感じるものなのだ、という所に僕の心は持っていかれ、気づいたら終盤、二度涙を零しておりました。
良作です。
ラストの救われ方が良かった
予告編が気になって結果初日に観ることに。終始にこやかなキャラってのもあるけど、終始怒ってるってキャラも大変だな古田新太、と思いつつ、どストレートにあの顔をこの役に配置するのは新鮮といえば新鮮。
蒲郡とあるが、どこにでもある地方都市の些細なことから始まる大きな損失とそこから波及される様々な人間模様。半ば妄想的でよくわからないストーカーふたり引き連れた松坂桃李はどっちつかずのいい受け手となり、追い詰められる、、のは予告編で想像していたが終わり方に救いがあってよかった。焼き鳥弁当とあの雲か。それはいいラストだった。
しかし切り取られる舞台装置の雑多な感じとかどっちに転ぶかわからないあぶないキャラクターはこの監督独特のものですね。
ずーっと無駄のない、緊迫した作品で、それぞれの心情がそれぞれのキャ...
不寛容という副題が良いね
明確に「空白」という言葉がセリフにあるわけでもないのに、この映画にこのタイトルをつけるだけで安心できる座組だと言っていいと思う。
この物語に空白らしい空白はない。常に考えさせられる。
交通事故のシーンがリアル。
実際問題、頑固な性格かどうかを抜きにしても、自分がこうだと思ったらこうとか、自分なりの善意を相手に受け取ってほしいとか、想いが乗っかれば乗っかるほど想いの空白の部分は少なくなっていく。どの登場人物もそこでがんじがらめになって苦しくなるんだよな…
松坂桃李は何重人格なんだと思うくらいの振り幅を見せていて良かった。古田新太のゴジラ的な立ち位置。後半向き合おうとするけども向き合えられなくて捨ててしまうもの、向き合った結果やっと理解したような気になれるもの、時に大胆に時に繊細に演じ分けていた。決定的に彼には謝らないのが良いよね。モヤモヤしちゃってとか言っちゃって。
直接的な加害者でない人物に恨みを持つという視点も話として新しい。都合のいいときにだけいるマスコミはこういう話のとき健在なんだけど、その先も少し見せていたのも新しい。
あの時不自然な空のカットあったよな…でも今思えば自然だわ。後半グッと話の強度がますのもこの監督らしい。
2014年の笹井芳樹先生の自殺を思い出しました
吉田作品最高傑作
向き合えば理解し合える
希望の光が全く見えない2時間弱
万引きをした女の子が逃げたので追っかけてたら、その子が交通事故で死亡。自分の行動を反省し続ける店長。
娘と2人暮らしだったのに、突然1人になってしまった親父。彼らを囲む人々とネットやマスコミの傍観者達。
まさに、明日は我が身。もし自分だったらどう行動するだろう?シーン毎に違う人目線になって考えさせられた。
もし、自分のせいで誰かが死んでしまったら、この店長の様に思考停止しちゃいそう。もし、そんな人が身近にいたら、力になってあげたいよね。もし、自分が運転してて誰かを殺しちゃったら、自殺しちゃうかも。もし、娘が誰かのせいで亡くなったら、そいつを許せるだろうか。
一歩が踏み出せない店長の松坂桃李とクソ親父の古田新太、この2人ハマってる〜。元気なおばさんの寺島しのぶもよかった。
何より大好きな田畑智子の演技が久しぶりに観られて幸せ〜。
ただ、なぜ彼女が走って逃げたのか知りたかったのと、もう少し希望の光が見たかったなぁ。
寺島しのぶとボランティアしている女優さん
寺島しのぶとボランティアをしていて、カレーをぶちまけてしまう女優さん、どこかで見たかと思うけれどキャストに名前が見あたらない。すごい魅力的なので、どなたかコメントで教えていただけると幸いです。
前提として、全てレベルが高いのだけれど、もっとマジックがかかっていても良いんじゃないかと思った。古田演じる攻撃的で対話を拒む態度の遺族、生真面目だがいつも後ろ向きな態度の松坂、正しいが独善的で松坂を狙う寺島。その他、田畑演じる元嫁の演技も全て素晴らしい。けれど、この役者陣ならこの役を余裕でやれるだろうなと思ってしまうのは、厳しすぎる感想でしょうか。全て素晴らしいのに、抜け感があれば、星5だったかもしれない。由宇子の天秤でも思ったが、マスメディア批判を描くこと自体に食傷気味かもしれない。マスメディアがねじ曲げてしまうことは分かったとして、そこにどのように対抗すれば良いのか?リテラシー向上のために教育するとかでは余りに対抗として非力ではないか。ねじ曲がっているのを分かっていながら楽しんでいる確信犯だっているはずだ。マスメディア批判をするなら、さらに突き詰めた論理展開が観たい。
正しいとか正しくないとか、悪いとか悪くないとか、そういう全ての価値...
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