行き止まりの世界に生まれて

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解説

閉塞感に満ちた小さな町で必死にもがく若者3人の12年間を描き、第91回アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にノミネートされた作品。かつて栄えていた産業が衰退し、アメリカの繁栄から取り残された「ラストベルト(錆びついた工業地帯)」に位置するイリノイ州ロックフォード。キアー、ザック、ビンの3人は、それぞれ貧しく暴力的な家庭から逃れるようにスケートボードに熱中していく。スケート仲間は彼らにとって唯一の居場所であり、もうひとつの家族だった。そんな彼らも成長するにつれ様々な現実に直面し、少しずつ道を違えていく。低賃金の仕事を始めたキアー、父親になったザック、そして映画監督になったビン。幼い頃からスケートビデオを撮りためてきたビンのカメラは、明るく見える3人の悲惨な過去や葛藤、思わぬ一面を浮かび上がらせていく。そんな彼らの姿を通して、親子、男女、貧困、人種といった様々な分断を見つめ、アメリカの知られざる現実を映し出す。

2018年製作/93分/G/アメリカ
原題:Minding the Gap
配給:ビターズ・エンド

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第91回 アカデミー賞(2019年)

ノミネート

長編ドキュメンタリー賞  
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(C)2018 Minding the Gap LLC. All Rights Reserved.

映画レビュー

5.0スケボーはコントロール

2020年9月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ロストベルトの街で、貧困と暴力が日常の家庭でそだった3人のスケーターたちのドキュメンタリー。理不尽な理由で暴力を振るわれた3人の少年たちは、居場所をストリートに求め、スケートボードに明け暮れる。監督自身も登場人物の一人でスケーターだ。彼は、スケートボードを通して、自分の痛みに対してのコントロール感覚を取り戻していったと語っている。登場人物の一人は、「スケボーはコントロールだ、細部までコントロールできないとイカれた世界でマトモじゃいられない」と言う。自分がコントロールを間違えば転んで痛みを得る、コントロールに成功すれば痛みはない。親からの暴力は自分でコントロールできない理不尽なものだ。だから、彼らはストリートで自分たちの試行錯誤によって得た痛みを通して人生をコントロールすることを学んだ。
彼らの置かれた状況は厳しい。それでも、自分で人生をコントロールする意思を捨てずに、希望を掴んでいく。アメリカの今を切り取る最上級の青春映画だ。

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杉本穂高

3.5この12年、スケボーを滑走させ大人になりゆく少年たちの姿を見つめた秀作ドキュメンタリー

2020年8月26日
PCから投稿

賞レースでも話題になったドキュメンタリー。その冒頭、まるでスケートボード映画が始まったように思えた私だが、描写を重ねるごとに、これがスケボーカルチャーを視座に、少年たちの成長や社会の変移に焦点をあてたクロニクルであることに納得がいった。そもそもスケボーは低所得者層の多い地域でも若者の間で広く根付き、彼らが絆を深めるきっかけとなりうる文化。個々のグループにはハンディカムで自分たちの技を記録する撮影担当もいたりして、こうやって残された映像記録が本作を構成する重要な素材となっている。あの頃、各々のメンバーは一体どんな家庭の悩みや問題を抱えていたのか。そして今、どんな思いを抱えて歳を重ねているのか。産業の錆び付いた故郷へ思いを馳せながら、かつてスケボーを走らせハンディカムを手にしていた映画監督がエモーショナルに紡ぎだす自分たちの記録。彼らに寄り添いながらこの10年の月日を共に噛みしめる自分がいた。

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牛津厚信

3.5監督が体を張ったドキュメンタリー

2020年8月26日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

舞台となるイリノイ州ロックフォードは、かなりやさぐれた街です。その街で、スケボーが大好きで、スケボーで繋がる近隣の貧しい青年たちの、青春と友情と家族とDVを赤裸々に記録したドキュメンタリー。2019年のオスカー候補になっています。白人、黒人、アジア人(本作の監督)と、人種の異なる3つの貧困家庭の青年が主人公で、当初、監督の友人たち(白人1名と黒人1名)がおもな被写体となって展開します。ところがある瞬間、監督が自らと自らの家族にカメラを向け、「自分ごと」として語り始める。この瞬間から、作品に深みが増大します。3人の関係はフラットになり、見る者の共感も強くなっていくのです。やはりドキュメンタリー監督は、体張んないといい映画撮れないよねってことでしょうか。

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駒井尚文(映画.com編集長)

5.0分断されたアメリカ社会の実情が、痛いほど鮮明に描かれている

tさん
2021年2月15日
PCから投稿

なぜこの人たちはこんなにも苦しんでいるのだろうか?
この映画を観ると考えてしまう。

この人たちは飢餓に苦しんでいるわけではない。
紛争に巻き込まれているわけではない。
差別に苦しんでいるわけではない。

客観的に見れば、この人たちが苦しんでいるというのは、誠に不思議なことだ。

ギャップが鮮明に描かれる。
作品の序盤は、少年たちの屈託のない笑顔が印象的。
中盤以降は、現実が重くのしかかってくる。
タイトルにある通り、楽しそうな時とのギャップが凄いんだよね。

少年たちは友達としては繋がっているのにも関わらず、何かが分断されている。
この分断の感覚はなんなんだろう。
誤解しないでいただきたいのは、黒人と白人が分断されているという、そんな軽々しい話ではない。
この映画で描かれている分断は、そういった分断ではなくて、もっと身近で実生活の中にある分断である。
彼らはなぜ連帯できないのだろうか?
映画パラサイトが示したように、下流が下流同士で殺し合っていては何も解決しない。

繋がりのない状態では、人間というものは恐ろしく脆弱な存在であることを示唆している映画だと思う。

テクノロジーと資本主義がもたらした最大の罪は、人々が連帯できない状況を作ってしまったことなのかもしれない。

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